W杯欧州予選グループ7。オウンゴールで引き分けに終わった5日のルーマニア戦を「不運」と形容したフランスのドメネク監督だが、4日後のセルビア戦こそほんとうの不運に見舞われた。

 キックオフからわずか9分後、相手FWと1対1になったフランスのGKロリスがペナルティーをとられ一発退場。先制点を許したうえ、残り80分以上を10人で戦う窮地に追い込まれた。

 代表戦5試合目にしてフランス代表GKで史上初の退場者となったロリスは試合後、レキップ紙に「僕のキャリアでも初めてのレッドカード。相手のFWにはほんとうにまったく触れていない。あれは彼のシミュレーションで、主審のミスジャッジだった。判定は尊重しなければならないが、僕のプレーに非はない」と振り返る。

 GKマンダンダの投入により、FWジニャックをベンチに下げたフランス。1点のビハインドをはね返すため、全員が果敢に勝負を挑んだ。レキップ紙によると、この試合のディフェンスラインはゴールラインから平均で36メートルと高く、DFの両翼はたびたび相手陣内に切り込んだ。

 グルキュフ、ラサナ・ディアラ、トゥラランの中盤トリオも豊富な運動量でボールを奪っては攻め上がり、攻撃陣をバックアップ。アネルカの果敢にゴールを狙うプレーが、アンリの同点弾を生んだ(31分)。

 レキップ紙は試合の総評で、逆境の中でフランスが「例外的なレベル」に達したと奮闘をたたえ、その中心となったFWコンビを「黄金の足をもった獅子」という表現を用いて称賛した。

 同紙一面の見出しは「アンリの回答」。ミーティングで選手を代表してドメネク監督に疑問をぶつけたことが試合前に話題になったが、その騒ぎを文字通り一蹴するゴールで代表通算50得点目をマーク。守備でも数的不利を補う献身的なプレーを随所に見せ、主将の重責を果たした。試合終了とともにドメネク監督と抱き合うシーンも見られた。

 日頃、勝てないフランスに批判的な同国のメディアも、この一戦についてはめずらしくポジティブな反応を示している。グループ首位セルビアとの4ポイント差は縮めることができず、プレーオフに回ることはほぼ確実となったが、10人で戦ったこの試合で、コンパクトで果敢な攻撃、アンリを中心とするチームの結束という大きな収穫を得た。フランスがこの1年間の長い停滞期から、ようやく息を吹き返しそうな期待を抱かせる。