翌日の新聞にも「北朝鮮、ミサイル不発」(日刊スポーツ)といった見出しがあったくらいで、WBCのときの「ダーティ侍」のような記事は皆無。北朝鮮のキム・ジョンフン監督がチョン・テセらの「食中毒騒動」を後の祭り的に主張したが、それをメディアはほぼ黙殺。報道の姿勢も対日本と比較すると、若干、異なる。
 
■日本に対する本音とは
 韓国のファンは北朝鮮と日本との試合に対して、それぞれどういう感情を抱いているのだろうか。成均館大学の4年生、イ・ジェジュン氏(25)に真直ぐな質問をぶつけてみた。
「日本戦と北朝鮮戦の応援の心持ちに違いはありません。どちらも、必ず勝たなければいけない。その気持ちに大差はありません。ただ、日本との試合ではちょっと緊張が強い。それは、韓国の実力より北朝鮮の実力は少し落ちるけれど、日本の実力は同じくらいだからです。日韓戦を10試合やったらホームでは7勝1敗2分け。アウェイでは3勝3敗4分けくらいですかね」
 
 別に歴史的背景を気にしているわけではない。サッカーの実力も認めている。前述のジェジュン君はつぶやく。
「歴史的事実から抱く感情については、特にない人も多いでしょう。決して日本が嫌いではないです。でもやっぱり日本がうまくやると、なぜかよく思わない。うまく説明できないけど、正直に言いますね、例えばイラク対日本戦があったら、イラクが勝ったらいいな、と思うんです」
 これが偽らざる本音だろうか。説明できないぶん、ある意味ではもっと根深い感情が眠っている。という裏付けのような気すらする。だからこそWBCやフィギュアも含めて、日韓戦があんなにも多大な熱量を帯びるわけだが……。
 
 混戦のグループBの本戦出場が決定するのはおそらく6月17日の最終節。韓国はイランとソウルで、北朝鮮はサウジアラビアとリヤドで直接対決となる。(了)