100万円の使いみち不問、返済も不要…北大の「奨学金」に3300人応募 書類選考・面接なし 抽選会場は大盛況「他の学校でもやってほしい」
北海道大学で、使いみちを問わない1人100万円の奨学金が新設され、書類選考や面接を行わず、抽選で受給者が決められました。約3300人が応募し、その中から事前抽選で500人が選考会の参加者に選ばれました。2026年5月19日に開かれた選考会当日は、当初4人だった当選枠が急きょ5人に増やされると、会場は拍手に包まれました。参加した学生の投稿には4万件のいいねが集まり、「これは応募しない理由ないだろ」「学力だけじゃなく“運”まで試される時代」といった声が寄せられています。
【写真】1人100万円の奨学金…3300人の応募で当選者は5人
投稿したのは、この春より北海道大学農学部に進学した浪浪浪浪浪浪浪浪浪浪浪浪浪浪浪浪浪浪(@Hiroponcznc)さん。「ついに北大100万円奨学金抽選開始!!!」という一文とともに、番号の書かれた抽選券の画像をXに投稿しました。
この奨学金は、IT企業のJIG-SAW株式会社の支援で今年度に新設されたものです。対象は北海道大学の学部と大学院の正規課程に在籍する学生で、成績や家庭の経済状況は応募の要件になっていません。応募は、1分ほどで終わるフォーム入力のみ。挑戦の内容も学術・研究に限らず、文化・芸術、スポーツ、ボランティア、学外活動まで幅広く認められ、活動地域は国内外を問わないそうです。受給額は1人100万円で、使いみちは不問、返済も不要です。
最大の特徴は選考方法です。書類選考も面接もなく、受給者は抽選で決まります。応募が約3300人に上ったため、大学はまず抽選で選考会に参加する500人を選抜。その後、選考会に参加した学生の中から、抽選で5人の奨学金受給者を決めました。
2026年5月19日の選考会当日は、大学キャンパス内の会場に約400人の学生が集まりました。アナウンサーの司会進行のもと、北大のチャレンジ精神を紹介するショートムービーが流れ、寄付元企業の取締役が制度に込めた思いを語ったあと、くじ引きがはじまります。抽選では、当初4人と予定されていた当選枠を急きょ5人に増やすと発表があり、会場は大きく沸きました。
当選者が1人決まるたびに、拍手が送られたといいます。投稿主さんも、隣に座った見知らぬ学生と「当たるといいね」と言葉を交わし、抽選の間はドキドキハラハラが止まらなかったと振り返ります。
139番の抽選カードを手に参加した投稿主さんの結果は、落選でした。
「なんだかんだ当たると思っていて、当たることを想定していろんな計画を立てていたので、全部水の泡になってしまい、ほんとに残念でした。やはり、お金を得るのはそう簡単なことではなく、会場にいた学生の中から当選する確率は約1%ですから、どれだけ少ない数字なのかを知るいい機会でしたね」
当選していたら、100万円は全額親に渡すつもりだったといいます。投稿主さんは前年も北大に在籍していましたが、途中で休学し、今年の入試で別の学部を受け直して再入学したという経緯がありました。滑り止めで受けた私立大学の入学金など、200万円以上を親に負担してもらったといい、「親に相当迷惑をかけてきたので、ここで恩返しできればいいなと考えていました」と話します。
制度そのものについては、「非常に楽しい時間」と振り返ったうえで、ひとりの学生としての意見も語りました。
「もらえる金額を10万円程度にして当選人数を増やすようにしてくれたら、なおさらうれしいですし、学生もみんな期待をより持てるのではないかなと思います。僕の周りもみんな、10万円でいいから人数増やしてほしい派が大多数でした」
投稿には「他の学校でもやってほしい」という声が、多く寄せられたといいます。100万円は手に入らなかったものの、「500万インプレッション、4万いいねの万バズは人生でもそうはないと思うので、自分的には100万円に代わる北大からのプレゼントに感じます(笑)」と語りました。
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抽選という選考方法は、どのような考えで選ばれたのでしょうか。北海道大学の広報を通して、学務部学務企画課の土井さんに話を聞きました。応募は当初200~300人程度と見込んでいたといい、約3300人という結果には担当者も驚いたそうです。
「学生の熱意や夢を、書類選考や面接で優劣をつけて評価すること自体が困難…という認識がありました。あらゆる選考方法を検討した結果、『抽選』による選考方法に至りました。この方式を採用したことは多くの関心を呼ぶ一方で、批判的な意見がかなり出ることも覚悟していたのですが、実際には多くの意見が好意的で、今回の取り組みの意義、真意を汲み取っていただいたものであったことは非常にありがたく思っています」
使途不問・返済不要という設計には、「これからの挑戦を後押しする」という意図があったといいます。応募してきた学生の「本気で取り組みたいこと」を一度に把握できたことは、今後の学生支援策を検討するうえで貴重なデータになるとしています。
当選した5名の第一声は、「実際に当選したら何に使おうか悩む」と共通していたそうです。その後の面談では「バイクの免許を取得して北海道を1周したい」「研究のための高機能PCを購入したい」「他大学との交流機会を創出したい」など、それぞれが具体的な考えを示したといいます。
当選者に課されている唯一の義務は、北海道大学が主催するサイエンスイベント「北海道大学サイエンスフェスタ」で、100万円をどのように活用したのかを発表することです。大学は「素晴らしい報告を意識して、挑戦的な取り組みを避けてほしくない。うまくいかなかった過程の『学び』を発表してほしい」と伝えているとのことです。
2026年の「北海道大学サイエンスフェスタ」は12月5日、6日に開催予定で、現在のところ当選した5名全員がステージに登壇する予定だといいます。100万円を手にした学生たちが、それぞれどのような挑戦に使ったのか。その成果だけでなく、挑戦の過程で得た「学び」も披露されることになります。
本奨学金は、今年を含めて6年間実施予定。担当者は寄付元のJIG-SAW株式会社と、すでに「来年も同じ抽選では、おもしろくない。もっとインパクトのある方法で、学生のモチベーションを上げていこう」と話し合っているといいます。
「本学では、教職員も『フロンティア精神』を持っていなければ、学生たちの『フロンティア精神』は育たないと考えています。今後も、これまでに例のない独創的な学生支援を通じて、新たな価値を創造するとともに、学生たちが『北大に入学してよかった』と思えるような大学にしていきたいと考えています」
