(左から)平野氏、出雲氏、岡部氏、丸尾氏(提供写真)

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「まず『旗』を立ててから、登り方を考える」──。アステリア創業社長の平野洋一郎氏が、自身の起業経験をもとにスタートアップの考え方を説いた新刊『「旗」を立ててから、登り方を考えよ』(日本実業出版社)が話題だ。情報収集からプロダクト開発、仲間づくり、資金調達、ピボットまでを実体験から解説する一冊。出版を記念し、平野氏がスタートアップ経営者らと「旗を立てる意味」について語り合った。

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 そもそも平野氏自身が、周囲から見れば「無謀な旗」を掲げてきた起業家の1人だ。

 熊本で育った頃、親から言われていたのは「四大を出て公務員になれ」。ところが大学時代からソフトウェアの世界にのめり込み、大学を中退して起業の道へ進んだ。

 創業後も「ソフトウェアはもう無理でしょう」「他のことをやったら」と何度も言われたという。それでも平野氏は「僕はソフトウェアしかできない。ソフトウェアで大学を辞めているぐらいですから、もう他にないんですよ」と振り返る。

 資金調達でも「ソフトウェアを輸出産業にする」と大きな目標を掲げた。”非常識”と言われても、まず目指す場所を決めなければ始まらない。それが同書でいう「旗」だ。

 そんな平野氏が「こんなにでかい旗を立てている人は、そうそういない」と評したのが、ユーグレナを創業した出雲充氏だ。当時としてはあまりにも大きな「旗」だった。

「20年前、毎日のように『ホラ吹き』と言われていたんですよ。『ミドリムシで地球を救う』『ミドリムシで飛行機を飛ばす』とか。でも今は、おかげさまで『ビジョナリー』と言っていただける」

 本の帯には「ホラ吹きか、ビジョナリーか。違いは覚悟だけだ」とある。では、単なる「ホラ」と「旗」は何が違うのか。

 出雲氏の場合、その原点は大学時代に訪れたバングラデシュだった。子供たちの栄養失調を目の当たりにし、「僕はこれを知ってしまった。だから絶対に栄養失調をなくす」と覚悟を決めた。その手段としてたどり着いたのが、栄養価の高いミドリムシだった。

「問題意識を持っている人は多い。しかし、覚悟を決めるに至る人は少ない。すごく悲しいとか、怒り狂うとか、泣くとか、そういう体験の裏側で覚悟が生まれるんじゃないかと思っています」

「重要なのは最後まで突破して結果を出すこと」

 ステーブルコイン事業を手掛けるJPYCの岡部典孝氏も、「結果を出さなかったらホラ吹きだと言われてしまう」と話す。

「途中では階段を一歩ずつ登って、『もう9合目まで来た』と思っても、完全に突破しなければ、世間から見れば何もやっていないのと同じ。最後まで突破して結果を出すことが重要なんです」

 一方、多くのスタートアップを支援してきたメジャーセブンス代表の丸尾浩一氏は、「旗」そのものを持たない起業家が少なくないと指摘する。

「『何を目指しているんだ?』と聞いても答えられない人が意外に多い。上場したいのか、M&Aしたいのか。目指すものがなかったら、アドバイスのしようがない」

 旗は途中で立て替えてもいい。何度も事業をピボットし、ようやく成功にたどり着く起業家もいる。重要なのは、自分がどこを目指すのかを言葉にすることだ。もっとも、「旗」を立てようとした時に立ちはだかるのが、周囲の常識でもある。出雲氏は、若者が起業を選びにくい理由のひとつに、身近に起業家がいないことや、起業について学ぶ機会の少なさを挙げる。

 では、親世代のアドバイスをどう受け止めるべきなのか。出雲氏は「親が間違っているということではない」とした上で、世代によって社会の前提が大きく異なると話す。

 例に挙げたのが、新しい技術やサービスが普及するスピードだ。航空会社が5000万人の利用者を獲得するまでには68年、テレビは22年、Twitterは2年。それが『Pokémon GO』ではわずか19日だった。

「『68年の時代』と『19日の時代』では、正しい行動様式が同じであるはずがない」

 親世代にとっての「正解」が、そのまま現在の正解になるとは限らないというわけだ。

 岡部氏もAIの急速な進歩を挙げ、「これまでの常識が大きく変わろうとしている」と指摘。その上で、自ら起業するだけが選択肢ではないと話した。

「自分で旗を立てて登ってもいいし、誰かが立てた旗のもとに集まってもいい」

 旗を立てることは、必ずしも会社をつくることではない。自分は何を目指すのか。まずは目指す山を決め、「旗」を立てる。登り方を考えるのは、それからでも遅くないという。

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