「『ゼロクリック問題』は超えられる」note加藤CEOが語る、AIに開放しても読者が訪れる理由
AI時代、自社の持つデータを外部に開くのか、それとも閉じるのか--。企業のトップらが10月2日、東京都港区で開かれたイベントで議論を交わした。
現在、大手新聞社や出版社などが自社データをAIの学習から遠ざける動きが強まっている。背景には、商品が売れなくなったり、Webサイトへのアクセスが減ったりすることに対する警戒感がある。
一方、イベントには、積極的なオープン戦略で成長しているメディアプラットフォーム「note」の加藤貞顕氏(代表取締役CEO)が登壇。「noteは本質的に『流通』のサービス。人と人、人とコンテンツ、コンテンツとコンテンツが出会うことが価値」と、オープンにする理由を説明した。
●「流通を最大化して、より多くの人に届けられる」
加藤氏によると、noteには月に約300万記事の投稿があり、累計は8000万本を超える。このうち、約8割を占める無料記事は生成AIに開放している。
「アクセスログを解析しているが、AIのアクセスが大きくなってきた。データをオープンにすることの価値は、流通を最大化して、より多くの人に届けられること。クリエイターにとっても、より見られるチャンスを増やしたい」
そのためにも、AIからも見てもらえる環境をつくっているという。
最近では、AI向けにコンテンツ構造を整えようと、あるキーワードについてのまとめ記事を自動生成する機能をつくった。
●「AIのサマリーを超えられる」
そうすると、読み手はAIの回答に満足して、noteにまでは来てくれないのではないか--。
しかし、加藤氏によると、noteは現在、生成AIが回答の参照元として挙げるサイトとしては日本で2番目に多いという。そこからnoteの記事に遷移する割合も相対的に高いのだそうだ。
理由の1つは、「一次情報」が集まることだという。たとえば、「ベトナムに子連れで旅行に行く」という条件で、AIに適切なレストランを調べてもらうとする。
「(note記事の)『子連れOK』と書いてある部分が、サマリーに引用されるわけですけど、そこから先に本当に行った人の声が書かれているのが、すごく大きなポイント。過程がどうなっているかを知りたくなる。それだったらAIのサマリーを超えられるんじゃないか」
過程に価値がある情報なら、「ゼロクリック問題」は超えられるのではないか。加藤氏はそう指摘する。
最近では、企業のnote活用も盛んだ。採用活動で利用した企業からは「noteが入社の決め手になった」という声も多い。「AIに聞いたら、こっちがいいと言うから」という理由で決める学生もいるといい、情報をオープンにすることの価値を再確認しているという。
「ベンチャー企業は、会社規模も小さいし、カタログ上で比べられると弱い。そもそもは採用に不利なんですけど、独自の特徴をちゃんと表現して書いてくれたら強い」
もちろん、企業のビジネスモデルによっては、オープン戦略が適さず、情報をクローズにすることも重要な戦略となってくる。
ただし、その場合も内部に閉じこもるだけでは不十分かもしれない。
イベントのファシリテーターを務めた、noteの深津貴之氏(CSO)は、「データを蓄えることと、蓄えていることをAIに知ってもらうことの両立が大事だ」と述べ、いずれにせよAIの存在は無視できないと総括した。
イベントは、弁護士ドットコムが初めて開いたユーザーカンファレンス「PARADIGM(パラダイム)2026」。パラダイムは「枠組み」を意味し、AIの進化などで社会が急速に変化する「正解のない時代」の新たな枠組みを考える場として企画した。

