【鈴木 貴博】ユニクロなら4990円なのに…イオンが「1000円ジーンズ」を売り出した本当の理由

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ドンキは999円

イオンがカジュアル衣料で低価格ラインを拡大すると発表しました。

トップバリュのベストプライスから発売された第一弾は1000円のデニムパンツ。デザインや品質のいいジーンズが1000円で手に入ることから話題を呼んでいます。

実は今年の春、これとよく似たニュースが話題になりました。ドン・キホーテの情熱価格から発売された999円ジーンズです。レディース向けのバレルレッグで、ゆったりと履きやすいと人気商品になりました。ちなみに商品名の999は「サンキュー」と読むようで「サンキューの気持ちをプライスで形にしました」と書かれています。

これらの流れを受けて一部のメディアでは「アパレル業界にデフレ回帰の動きが出ているのではないか」と分析していましたが、私はこの現象、それとは少し違うと考えています。なぜイオンが1000円ジーンズを売るのか、その理由を戦略コンサルタントの視点から解説します。

ユニクロのジーンズは20年で2.5倍に

今、日本経済はインフレ経済に突入しています。食料品がその象徴ですが、毎月のように少しずつ価格が上昇していて、家計を圧迫するようになっています。

円安で輸入物価が上昇していることに加えて、イラン戦争での原油価格上昇で光熱費や物流費、プラスチック容器などの包装費も値上がりしました。政府の肝いりで最低賃金も上昇しているのですが、これは価格の面では人件費が値上げの形で転嫁されることになります。

アパレル商品の場合も、日本は海外からの輸入に頼っています。エアリズムやヒートテックなど国内の化学メーカーが製造する繊維商品もあるのですが、その原材料は石油でやはり輸入品です。つまり要素としてはデフレ回帰の流れは生まれにくいのです。

「それでもインフレで消費が減退するから安く売らざるをえないんじゃないの?」

と思うかもしれませんが、日本経済はインフレ下でもそこそこ堅調で、まだそのような末期的な投げ売り現象などは起きていません。

その証拠に、かつてのデフレの象徴だったユニクロの決算を見ると、国内ユニクロは絶好調です。そしてインフレ経済を象徴するように価格もずいぶん高くなっています。ユニクロのジーンズは基本価格が4990円。20年前は1990円でしたから、実に2.5倍まで価格が上がっています。

人気のUT、つまりデザインTシャツは1990円とそれほど値上がりしたわけではありませんが、かつては1500円程度だったことと比べればやはり値上がりしています。秋冬の定番のフランネルシャツは現在では3990円。これもかつての1990円と比べれば、時代が変わったことが確認できます。

インフレなのに、なぜ「1000円」で売れるのか?

そしてイオンやドンキでもアパレル商品の傾向は同じです。普段イオンのアパレル売り場に行かれない方は一度、売り場を覗いてみてください。結構いい品質やデザインの衣料品が並んでいて、ついつい手に取って買いたくなるはずです。そして価格も機能もデザインもユニクロと大差ありません。

ドンキの場合は、売り場の主流は有名ブランド商品です。ブランドアパレルとしては驚安な価格かもしれませんが、平均価格はイオンやユニクロよりもお高めといっていいと思います。

さて、ここからが本題です。アパレル業界も基本的にインフレの渦中にあります。にもかかわらずイオンで1000円ジーンズが新発売される理由は何なのでしょうか?

実は、この「異様に安い商品」をあえて投入する戦略は、イオンやドンキだけのものではありません。ワークマン、西友、さらにはマクドナルドにも、よく似た現象が起きています。そこに共通する仕組みを見ていくと、1000円ジーンズの本当の狙いが浮かび上がってきます。

後編『1000円ジーンズ、277円かつ丼、1900円リカバリーウェア…「異常に安い商品」が続々登場する本当の理由』でお伝えしていきましょう。

【つづきを読む】1000円ジーンズ、277円かつ丼、1900円リカバリーウェア…「異常に安い商品」が続々登場する本当の理由