“ショートスリーパー”を名乗る実業家・堀大輔氏(本人のインスタグラムより)

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「1日30分睡眠」を17年間続けてきたと自称する男が、自らに向けられた疑念を晴らすべく7日間ぶっ通しの生配信を敢行--"ショートスリーパー"を名乗る実業家・堀大輔氏(42)による前代未聞の動画配信がSNSの話題を席巻した。突如として世間の関心を集めた男は何者なのか。

【写真】様々な議論を巻き起こしたYouTubeのライブ配信

 生配信の1年前、その睡眠術を指南する講座を受講していた潜入ジャーナリストの横田増生氏が、配信では決して見せなかった素顔を明かす。(文中敬称略)【前後編の前編】

受講生への激詰め

 私が《睡眠改善プログラム》を受講したのは2025年8月のこと。

 初日の講座で堀はZoomの画面越しに、こう言い放った。

「講師である私に直接質問は、できません。禁止です」

 ならば、だれに聞くのか。堀が受講者同士を組み合わせて作る"バディグループ"で質問し、その過程と結果を堀に報告するのだという。

「バディの相談を受けた方から、『堀先生、今の回答で合っていますか』っていう質問を受けるのはありです」(堀)

 事前に見ていたYouTube番組などに出演している堀は、陽気で、お調子者というキャラクター設定に見えた。たとえ自分が笑われても、みんなが幸せになるのならいい、という姿勢をたびたび見せる。しかし、お金を払った受講生に見せるのは全く別人のような形相だった。

 受講生には、医者やプログラマー、教員がおり、1か月終了段階で、100%近い確率で睡眠が改善している、と断言。その後、受講生への激詰めが始まる。

「この講座を3日ぐらいで辞めようと思っている人って、今の段階でどれぐらいいますか。もう十分だから、3週間の時点で、プログラムやめようと思うんですっていう人もいますか。1か月続けるということでOKですね。脅迫じみていると思わないでください。正直に回答してほしいところなんですけども、いないですよね? いないですよね!? もう一回言いますね、いないですよね!? じゃあ、離脱しないでください」

 なぜ、お金を払っている受講生に、威圧的に出ることができるのか。堀は講義中にこう話す。

「講師はお金を預かっているんだから、サービスをして当然だろう、という人もいるでしょう。しかし、僕はここには違和感があります。僕、別に睡眠変える必要ないんです。僕は日本の中で睡眠極めてる側の人間なので。けれど、そんな僕が一番熱量が高くて、一方で自分の睡眠を変えようとされている受講生の方々が、勝手に講座を辞めることができると思うのって、おかしくないですか」

使える時間は1日23時間以上

 睡眠を極めているというのは、堀が1日30分の睡眠で17年間、生活してきたことを指している。堀を理解する上で、大切なことは1日30分しか寝ないことではない。わずか30分の睡眠で、残りの23時間30分を活動的に過ごせるという点だ。

 堀は2016年の著書にこう書く。

「私は6年間1日平均45分以下しか睡眠をとっていません。もちろん、45分しか寝ないからといって、つねに眠気に襲われているとか、思考力が鈍るとか、健康を損なっているわけではありません。むしろ、活力がみなぎり、集中力も増し、ストレスも解消され、健康状態も良好です。なにより1日23時間以上も時間が使えるので仕事も遊びも目一杯できます」(『できる人は超短眠!』)

 前述した初日の激詰めの理由は、その月の受講生が19人しか集まらず、「不安でしょうがない」からだと言う。さらには40人集まった月もあったが、2週間後には14人に減ったことへの危機感を募らせているのだ、とも付け加える。

 40人の受講生の半分以上が脱落するのならば、100%に近い睡眠改善とは辻褄が合わない、と思った。しかし受講生からの質問はご法度だ。

 そんな堀が日本中の注目を一身に集めたのは、9月9日から「【一週間ライブ配信】ショートスリーパー堀大輔の日常。」と題した生配信だ。1日30分睡眠は嘘ではないか、という疑念を晴らすための企画だったが、視聴者の印象に残ったのは、睡眠不足でフラフラになっている堀氏の姿だったのではないか。

 堀自身も配信終了後、SNSから「ショートスリーパー」の文字を消し、事実上、看板を下ろした。こうした点について聞くと、堀はこう回答した。

「今回の配信は、これまでの私の通常の生活とは大きく異なる環境でした。7日間にわたる長時間の生配信に加え、常にカメラの前で活動すること、大量のコメントへの対応や、誹謗中傷を含むさまざまな反応への精神的な負荷、それに伴う目の疲れなど、通常の生活にはない要因が重なっていました。

 また、私自身の性格として、初日から最大限の力で取り組もうとする傾向があり、2日目には徹夜も行いました。こうしたことが、今回の配信中の私の活動状態に大きく影響したと考えています」

 堀の回答では自身の主張の説明に2つの学術論文のURLを貼っていたが、それぞれの末尾に「source=chatgpt.com」とあった。AIに尋ねていることが丸分かりだ。

講座は「全額返金保証」

 堀大輔とは、そもそもどんな人物なのか。

 尼崎市に生まれ、自宅での勉強一切無しで、学年トップレベルの成績をとり続けた。小中高と生徒会に所属し、成績は「ほぼオール5だった」。高校は、武庫荘高校(現・武庫荘総合高校)に進学した。教師からは大学進学を強く勧められた。

 しかし、堀が東大の赤門まで足を運ぶと、「(当時の東大生は)みんな遊んでたんですよ。僕はこういう人生は生きたくないなって思ったんで、大学に行こうという意欲はなくなったんです」とかつて出演した動画で語っている。

 もともと1日8時間睡眠だったが、18歳から独自に睡眠を研究し、25歳でショートスリーパーを目指すと、2か月後から1日平均30分というショートスリーパーになり、2016年に《一般社団法人 日本ショートスリーパー育成協会》を設立して自ら代表理事に就任。さらに、ショートスリーパーという言葉を商標登録している。これまでの講座の総受講者数は2500人を超える。

 私が昨年夏、堀の《睡眠改善プログラム》を受けようと思ったのは、睡眠に関する書籍を書くためだった。学術的には、毎日6時間未満の睡眠で、昼間に眠気も感じず、休日に寝溜めもしない人をショートスリーパーと呼ぶ。

 ノーベル賞候補に名前が挙がる、筑波大学教授の柳沢正史は、ショートスリーパーは遺伝子で決まっており、訓練でなることはない、と断言している。遺伝子で決まっている点について尋ねると、ほかの睡眠学者からも同様の答えが返ってくる。

 ならばなぜ、18歳まで8時間睡眠だったという堀が約10年にもわたってショートスリープに関する事業を続けられているのか。講座の実態とはどんなものなのか、を知りたかった。

 しかも私が受講した月は、受講料が本来なら5万5000円のところが、半額の2万7500円となり、「睡眠の改善が見られない場合は、全額返金保証!」となっている。申し込みのハードルは、いたって低い。

 講座は、講師と複数の受講生がZoomをつないで、午前5時台からと午後11時台からの2回、エクササイズやトレーニングをすることで、睡眠が改善されるという内容だった。

 しかし、初日の朝の動画を見た後、これはおかしいぞ、と思い、その数日前に堀が送ってきた「大事なノート」と題されたメッセージを読み返し、これはまずい、という確信に変わった。

〈以下のような表現を禁止します。【1】「~しようと思います」、【2】「~を努力します」、【3】「意識します」。また、これらと同等の意味を持つ言葉も使用しないでください。『才能』という言葉も禁止とします。才能や遺伝のせいにしてしまうと、成長や改善が見込めなくなってしまうためです〉

 ショートスリーパーには、遺伝子が影響しているという学説が有力であるにもかかわらず、その遺伝について語れば、受講生の成長や改善が見込めない、という理屈づけがされているのだ。

(後編へ続く)

【プロフィール】
横田増生(よこた・ますお)/1965年、福岡県生まれ。関西学院大学卒。予備校講師を経て、米アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号取得。『輸送経済』記者、編集長を経て、1999年独立。2020年に『潜入ルポamazon帝国』で第19回新潮ドキュメント賞。『「トランプ信者」潜入一年』で第9回山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞。

※週刊ポスト2026年10月9日号