目を瞑れば、そこはもう……「ぬいみやげ」という大発明(ぬい旅・後編)

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4,000匹以上のぬいぐるみと暮らす小説家・新井素子さんの日常がここに。「ぬい活」が一般化するはるか以前、「ぬい」という呼称を生み出し、社会からずっと変人扱いされてきた新井さん。「ぬいぐるみは生きている」と本気で確信し育んだ「ぬい」たちとの生活には、ただごとではない発見と幸せのヒントが詰まっていました。

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〝ぬいみやげ〞に死角あり

ところで、〝ぬいみやげ〞なんですが。

こんだけがんばって買ったとしても……ぬいの中には、それをどうしてもつけることができない子がいます。(いや、最終的にはね、こっちはこっちでがんばって、何とかして〝ぬいみやげ〞をその子につけるんですが……これがねえ……なかなか……その……つけたはいいけど取れちゃう子がね……。)

というのは。

大体のタグって、輪状になっていて、そこに〝ぬいみやげ〞についている紐(できるだけ〝ぬいみやげ〞は、紐かそれに類するものがついている奴を選びます)をくぐらせて括りつけたり結びつけたりすることができるんですが……稀に、輪状になっていないタグもあるんですよね。こうなると……えーと……どうやってこの子に〝ぬいみやげ〞をつけたらいいのか判らない。というか……実の処、これは、つけようがない。(それから、これはもっと稀ですが、タグ自体がないぬいもいる。一番判りやすいのが、読者の方が、「私に」って、わざわざ作ってくださった手製のぬい。当たり前ですが、手づくりのぬいには、タグがありません。)

こうなると。

その辺で売っているリストバンドをそのぬいさんのお腹に巻いたり(勿論、サイズがあえば、ですが)、その子自体にブレスレットや何か、その子のサイズにあった装飾品をつけてあげる、とか、いろんな方法を模索します。(あ、ブレスレットって、勿論ぬいさんの手首にはめるのではなくて、人間用のブレスレットは、時々、ぬいさんのお腹まわりにちょうどいいってものがあったりするんですよね、そういう話です。)んでもって、リストバンドや装飾品に、〝ぬいみやげ〞をつけるのね。

危険な添い寝

あとはまあ……〝ぬいみやげ〞を適当なリボンなんかに結びつけ、そのリボンを該当ぬいさんに巻いてあげるっていう手法もあるんですが……これは、ほどける。かなりの確率で、ほどけてしまう。

しかも。そのぬいさんと一緒に寝た場合……一緒に寝ているひとの寝相次第で、これは百パーセントに近い確率で、ほどけてしまう。

そうなんです。

うちの旦那は割と普通にぬいさんと一緒に眠っているので(私は、自分の寝相がとことん悪いことを知っているので、枕をやってくれている〝まくらくじらさん〞、及び、絶対に私の布団の中にいる〝ねんねくさん〞以外とは、家では一緒に寝ません。……だって……高校時代の私って……ほぼ毎日、ベッドからおっこちて、床で寝ていたんだよ。こんな蛮行に大切なぬいさんを巻き込む訳にはいかない。だから、私がぬいさんと一緒に寝るのは、旅先でだけ。それで余計にぬいさんとの旅行が楽しいんですが)、タグに結びつけるのではない〝ぬいみやげ〞のつけ方をしてしまうと、旦那のベッドの中で、結構、どっか行ってしまうんですよね、〝ぬいみやげ〞。

その上。〝ぬいみやげ〞の材質にもよるんですが……旦那の寝相によっては……〝ぬいみやげ〞に旦那の体重がかかってしまうと……場合によっては、〝ぬいみやげ〞、そのせいで壊れてしまう可能性もある。

ただ、旦那は、旅行から帰ってくると、「今回の旅は楽しかったねー」って言いながら、同行したぬいズとしゃべりながら寝るのが好きなので……これを止めることは、人間としていかがなものかと思うので……。

まあ、ただ。

このせいで、旦那の布団を干す時は……布団の中から、よく判らないものの破片が発掘されることが時々あって……これは、どうなんだろうか。

房総で出会ったニクい奴

そんな中で。

今までで一番ありがたかった〝ぬいみやげ〞は、房総半島に行った時にあった奴。

春で、ちょうどいろんなお花が咲きだした頃で、正確な名前は忘れちゃったんですが、フラワーパークみたいな処へ行って。そしたら、そこにはいくつものお花畑があって、そのうちいくつかのお花畑では、好きなお花を摘んでそれを花束にして持って帰っていいってサービスがあったんですね。

しかも、そこには工房みたいなものがあって。いろんな造花や、ドールハウスに使えそうなガジェットや、そのサイズにあわせた小物や、モールなんかが売られていて、あ、こういうの買って、これを組み合わせて工作すると……うわあ、ここでの思い出を、自分の作品として、作ることができるな。(ちなみに、私は、この手の〝自分で作るもの〞系がとても好き。旅先に、ガラス工房の〝自分のガラス作品製作〞コーナーとか、〝自分で作れる焼き物〞コーナーとか、〝自分でこの地方の伝統的な織り機を使って自作の織物が作れる〞コーナーなんてものがあったら、旦那ほっといて絶対にやってしまうタイプの人間です。)

ただ。この時私が思ったのは、「何か私の作品を作りたい!」っていう思いではなくて。

「おおおっ」って思ったのは、その造花。針金がついていて、他の部品と組み合わせて、花束やその他のものを作ることができる奴。実際に、手にとってみたら、これは私が思っていた用途にまさにぴったりで……そして、旦那も、同じことを思ったらしくて。

「あ、これ!」

見た瞬間、二人で叫んでしまいました。

最高の〝ぬいみやげ〞

「これ、針金がついているから、ぬいさんの足とか腕の付け根とかに巻き付けることができる!」

「おおお! これなら、タグがない奴でも大丈夫だな」

「だけじゃなくて! 勿論、気を遣って巻かなきゃいけないんだけれど、これを首に巻いたら、ちょうど顔の処にお花がくるようにレイアウトできる! それ、きっと、すっごい可愛い!」

(勿論、これは、お金はらってその造花を買った後ですが)実際にやってみたら……ほんっとに、可愛い! しかも、どんなぬいにだって対応できる!

これ、最高の〝ぬいみやげ〞だったなあ……。(大体の場合、〝ぬいみやげ〞って、私と旦那の自己満足って要素が強いんですが、この〝ぬいみやげ〞だけは。ほんっとに、〝ぬいみやげ〞をつけたぬいさんが可愛くなる。最高でした。……でも……他の場所には……間違いなくこんなに都合のいい〝ぬいみやげ〞になるものは……ない、よね。)

うん。

このお花以上によい〝ぬいみやげ〞、今の処私達夫婦、みつけられていません。

(……いや。あったとしたら、逆に困るか。房総半島以外にも、お花が売りの処ってありそうだし、そういう処にはフラワーパークみたいな施設、あるかも知れないし、そこへ行ったら、こういう〝ぬいみやげ〞、ありそうな気もするんですが……その場合は、今度は。

〝それがどこだか、後になってみたらよく判らなくなる〞事態が……発生しそう。

しかも、たとえどこのお花関係の施設でも、工房があった場合、そこにある造花は、似たりよったりに……なりそうですよね。これ、とても素敵な〝ぬいみやげ〞なんですが、複数、この〝ぬいみやげ〞を買った場合、〝間違いなくそのぬいさんがどこへ行ったのか判らなくなる候補〞、ナンバーワンになるような気もします……。)