「おじいちゃん、来週は来なくていいよ」孫の一言に言葉を失った〈年金月17万円・74歳男性〉毎週通った息子宅からの帰り道で考えたこと
子どもが独立して家庭を持つと、親子だけでなく、祖父母と孫の関係も少しずつ変わっていきます。幼いころは毎週のように会っていた孫も、成長すれば友達や習い事など自分の予定が増えていくものです。その変化に、祖父母の側が少し遅れて気づくこともあります。
「来週も来るからな」毎週末、息子宅へ通っていた74歳祖父
正雄さん(仮名・74歳)は、5年前に妻を亡くし、現在は一人暮らしです。会社員を退職後、月17万円ほどの年金で生活しています。
車で40分ほどの場所には、45歳になる長男の健太さん一家が暮らしています。健太さんの妻と、小学5年生の娘、小学2年生の息子の4人家族です。
妻を亡くしたころ、健太さんから「週末、暇だったら遊びに来れば?」と誘われたのをきっかけに、正雄さんは頻繁に息子宅を訪れるようになりました。
孫たちが幼かったころは、玄関を開けるなり「じいじ!」と駆け寄ってきたそうです。一緒に公園へ行ったり、おもちゃを買いに出かけたり、ときには息子夫婦に代わって孫を見たりすることもありました。
「土曜日に行って、帰るときに『来週も来るからな』と言うと、『絶対来てね』って言ってくれてね。それがうれしかったんですよ」
いつしか週末に息子宅へ行くことは、正雄さんにとって当たり前の予定になっていました。ところが、ここ1年ほどで少しずつ様子が変わります。
小学5年生になった孫娘は友達と出かけることが増え、下の孫もスポーツを始めました。正雄さんが訪ねても、以前のように家族全員がそろっているとは限りません。
ある土曜日も、孫娘は午後から友達と出かける予定でした。正雄さんはいつものように夕方まで過ごし、帰り際に「じゃあ、また来週な」と声をかけます。
すると孫娘が、何気なくこう答えました。
「おじいちゃん、来週は来なくていいよ。友達と遊びに行くから」
「一瞬、何を言われたのか分からなかった」と正雄さんは振り返ります。
孫娘に悪気がないことは分かっていました。ただ、自分が来ることをあれほど楽しみにしていた孫から「来なくていい」と言われたことが、思った以上にこたえたのです。
「『そうか』とだけ言って帰りました。車を運転しながら、ずっとその言葉を考えていましたね」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』では、60歳以上で日常生活のなかで家族や知人から「子や孫の世話」を頼られている人は26.0%です。家族のなかで祖父母が担う役割は、決して珍しいものではありません。
孫の成長をきっかけに見直した週末の過ごし方
その夜、健太さんから電話がありました。
「今日、娘が変なこと言ってごめんな」
そう謝る息子に、正雄さんは「別に変ではないよ」と答えました。健太さんによれば、孫娘は最近、週末に友達と出かけることが増えていました。
「父さんが嫌とかじゃないんだよ。最近は土日も予定があるからさ。来る前に連絡してくれれば、みんないる日を言うよ」
その言葉を聞き、正雄さんはこれまでの週末を振り返りました。
最初は息子から「遊びに来れば」と誘われて始まった習慣です。しかし最近は、正雄さんのほうから「今週も行っていいか」と聞くことが増えていました。
「孫が変わったというより、大きくなったんですよね。私だけが、あの子たちが小さかったころと同じつもりだったんだと思います」
それから正雄さんは、毎週のように息子宅へ行くことをやめました。
だからといって、孫に会わなくなったわけではありません。月に1回程度、家族の予定が合う日に食事へ出かけたり、孫の試合を見に行ったりしています。
空いた週末には、以前好きだった釣りを再開しました。近所の知人に誘われ、月に何度か一緒に出かけています。
「最初の土曜日は、朝起きて『今日どうしよう』と思いましたよ。でも考えてみれば、毎週孫の家に行かなきゃいけないわけじゃない。孫には孫の予定があるし、私にも私の予定があっていいんですよね」
内閣府の同調査では、60歳以上のうち親しくしている友人・仲間が「たくさんいる」「普通にいる」「少しいる」と答えた人は合計82.8%。一方、「ほとんどいない」は12.6%、「全くいない」は3.5%でした。また、外出の目的として「趣味・余暇・社会活動」を挙げた人は34.3%に上ります。
孫が成長すれば、祖父母との時間の持ち方が変わることもあります。それは必ずしも関係が悪くなったことを意味するものではありません。
家族との時間が生活の大きな部分を占めていた場合、その頻度が減ったときに空いた時間をどう過ごすかという問題も出てきます。家族との付き合いを続けながら、自分自身の予定や人間関係も持っておくことは、生活の変化に対応する一つの方法といえるでしょう。

