年収500万円・42歳女性を蝕む“ドパ中年”浪費「コンビニスイーツ、インスタで見た服を爆買い…」 対策は「物理で遮断」「欲望を株へ」【FPが助言】
コンビニのレジで新作スイーツを見るとつい手が伸びる。寝る前にスマホをいじっていたら、気づけば「購入」ボタンを押している--そんな心当たりはないだろうか。SNSのショート動画など、手軽で強烈な刺激ばかりを追い求める若者を指す「ドパガキ(ドーパミン中毒のガキ)」という言葉が話題を集めている。SNS発の俗称だが、手軽な刺激に理性を奪われ、欲望のブレーキを失っているのは若い世代に限った話ではない。日々のストレスや疲労を言い訳に刹那的な浪費に走り、気づけば通帳の残高がすっからかん……という「ドパ中年」も少なくないのだ。今回は、「お金の管理が苦手」という相談に多数対応してきたFPの岩切健一郎さんが、精神論に頼らない「物理的防衛術」をドパ中年に向けて指南する。

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【Case】残業帰りのコンビニに深夜のインスタ…貯金が泡と消えていく42歳独身女性の日常
都内の広告制作会社でディレクターとして働く亜衣梨さん(42歳・独身、仮名)の年収は500万円。ボーナスはなく、月々の手取りは30万円強。家賃11万円の1Kで暮らしている。
「ぜいたくさえしなければ貯蓄や投資も可能なはず。でも、通帳の残高は200万円ちょい。老後のことを考えると、このままではダメですよね」と苦笑する。悩みは自身のプチ散財癖だ。
仕事ではクライアントや制作スタッフとの調整に追われ、深夜まで激務をこなす日々。そんな亜衣梨さんにとって、ささやかなリフレッシュスポットとなっているのが、退勤後に立ち寄る駅前のコンビニだ。明るい店内に並ぶ「新発売」のシールが貼られた季節限定スイーツ、TVで話題のアイスクリーム、人気キャラのコラボメニュー、新フレーバーのチューハイ……。疲れ切った頭で店内を回っては、気になる商品を次々とカゴに放り込んでいく。スマホをレジにかざせば、軽快な電子音とともに数千円の会計が終わる。
だが帰宅してそれらを消費し、自宅のベッドに倒れ込んだ後も、亜衣梨さんの買い物は終わらない。ぼんやりとした頭でインスタグラムをスクロールしていると、タイムラインに気になる情報が次々と流れてくる。「この人のセンスいいな」とフォローしているインフルエンサーが紹介する、この季節のおすすめコーディネート、バッグ、スニーカー。トレンドの色味のリップ、髪の毛が「トゥルトゥル」に仕上がるシャンプー…。自分のセンスに自信がないので、お気に入りのインフルエンサーがすすめるものはそのままオンラインショップで買っている。寝落ちしてスマホが手から落ちるまで、スクロールを止められない。
高収入ではない自覚があるから、ハイブランドのバッグやジュエリーには手を出さない。ただ、「仕事柄、ある程度トレンドは追っておかなきゃ」と自分に言い訳しながら、コンビニ通いやインスタチェックで数千円から数万円の出費を続けている状態だ。
【FPが助言】手軽に快楽を求める「ドパ中年」…キャッシュレスでさらに感覚が麻痺
「手軽な刺激を脳が求めてしまうのは、大人も同じです。なまじお金を持っていて管理してくれる保護者がいないから子どもよりやっかいかもしれません。欲しいものを見つけたら即座にポチる、オンラインゲームでガチャをまわす、ネットオークションの駆け引きにはまる、お腹が空いたら迷わずフードデリバリーを頼む、コンビニで新作を見かけたら反射的にレジへ運ぶ……。浪費先はそれぞれですが、目の前の刺激を追ってお金を使っているうちに、家計運営に支障をきたしてしまっている人は多いですね」
お金の管理を苦手とする人の相談を数多く手掛けてきたFPの岩切健一郎さんは、刺激に溺れる〝ドパ中年消費〟の実態をそう語る。
「特に今は、スマートフォンの普及とキャッシュレス決済によって、買い物に伴う『お金を失う痛み』が感じにくくなっています。じっくり検討して本当に必要なものを手に入れる買い物ではなく、手軽な散財で一時的な高揚感を得ることが癖になっているのでしょう」
※ここでいう「ドパ中年消費」はあくまで家計改善の相談現場で見られる浪費傾向を指すもので、買い物依存症など医学的な診断・治療を意味するものではない。深刻な依存の自覚がある場合は、専門の医療機関へ相談することが望ましい
【FPの処方箋①】精神力で耐えようとせず、「物理」で遮断せよ
では、こうした浪費傾向から抜け出すにはどうすればよいのか。岩切さんは「刺激を求める脳を、気合いや根性で制御することはできません」と一刀両断にする。
「精神力でどうにかできない問題は、物理で解決するしかありません。まずは何がトリガーになって衝動買いをしてしまうのか、それに月あたり、年あたりいくら浪費しているのか。自己分析して、そのトリガーとなる刺激から物理的に自分を遠ざけることが大事です」
コンビニに寄ると買ってしまうのなら、帰り道のルートを物理的に変えて、コンビニの前を通らないようにする。そもそも刺激に接触しなければ、脳が快楽を求める化学反応が起こることもない。ネット関係の浪費を予防するなら、スマホ内の「アプリ消去」をすすめているという。
「深夜にデリバリーを頼んでしまう、オークションや通販で競い合って買ってしまう、ゲームでガチャをまわしてしまう相談者には、該当アプリを消すようアドバイスしています。一度アプリを消してしまえば、再び使おうとしたときに再ダウンロードやログインの手間が発生しますよね。その数十秒から数分の待ち時間こそが、暴走した脳を冷却し、我に返るための貴重な防壁になります」
【FPの処方箋②】刺激の出口を「消費」から「生産と長期投資」へ転換せよ
脳が刺激や達成感を求めるエネルギーそのものを完全に消し去ることは難しい。問題は、そのエネルギーの出口が「安易な消費」に偏ってしまっている点にある。岩切さんは「手軽な消費で心を満たそうとするのではなく、快感を別の手段で求めるようにしてみるのもおすすめです」と話す。
「お金を使って一瞬の刺激を得るのではなく、文章を書く、音楽を作る、絵を描く、あるいは体を動かして汗を流すといった『生産的な活動』にエネルギーを向けてはどうでしょう。もちろん仕事に打ち込んで、脳の報酬系を満たすのも正しい選択です」
それでもなお「お金を使いたい」という衝動がおさまらないのであれば、消えてなくなるお菓子やトレンド次第で陳腐化する服を買うのではなく、長期的な資産形成につながる金融商品へ矛先を変えることを岩切さんは勧める。
「毎月決まった金額を、新NISAなどを通じて投資信託や株式の購入に充てるんです。値動きを見守り、将来の資産を育てていくプロセスに興味を持つことができれば、散財の衝動を資産形成への健全な意欲へと昇華させることができますよ」
なお、投資信託や株式は元本が保証された金融商品ではなく、市況によっては購入額を下回る可能性もある。「お金を増やしたい」という気持ちにとらわれて無計画に資金を投じるのではなく、無理のない範囲の金額で、長期・分散を意識しながら始めることが大切だ。
※プライバシー保護のため、記事で紹介する事例は、具体的な状況の一部を変更しています。
岩切健一郎(いわきり・けんいちろう)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®。1986年生まれ。29歳で適応障害とADHD(注意欠陥多動性障害)の診断を受ける。コンサルティング会社や外資系保険会社の営業職を経て、現在は保険代理店に在籍。合同会社ひなた代表として、発達障害当事者やその家族に特化したFPとして活動中。著書に『発達障害かもだけど、お金のことちゃんとしたい人の本』(ダイヤモンド社)がある。
取材・文/鷺島鈴香
デイリー新潮編集部
