和式か洋式か(イメージ写真)

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 男性トイレはスムーズに人が出入りするのに、女性トイレには長い行列ができる──。観光地のトイレでも、お祭りや花火大会などイベント時の仮設トイレでも繰り返されるこの光景。原因としては個室数の男女不均衡が語られてきたが、近ごろ改めて指摘されているのが「和式トイレ問題」だ。

【写真】仮設トイレ

トイレに大行列ができていて、娘が”漏れる”と泣き出しそうになりました」

 そう振り返るのは都内在住の主婦だ。夏休み客でごった返す千葉県内の観光地にある大型レストランで子供やママ友たちと食事をしていた時のこと。小さな娘から「トイレ」とせがまれ、大混雑の店内をぬって行くと、案の定、女子トイレ入口には十数人が並んでいた。今にも泣き出しそうな娘の顔を見て、絶望的な気持ちになったという。

空いているのに、誰も入らない個室

「娘の様子を見るに、もう何分も待てないと思っていたら、おばあちゃんが横をスッっと通っていく。順番飛ばしかと思ったのですが、誰も咎める様子がない。娘があまりに辛そうだったからか、先に並んでいる若い女性や子供たちが”どうぞどうぞ”って譲ってくれて。先頭に進ませてもらってトイレの中をのぞいたら、どうも空いている個室がある。よく見ると和式なんですね」

 行列の人たちは、空いているのに「和式」を使わず、使用中の「洋式」を待っていたのだ。

「助かったと思いましたね。和式トイレに娘を連れて行きことなきを得ましたけど、席に戻ると、他のママ友から”和式使えるなんてエラい”と言われて微妙な気持ちになりました」

 女性宅のトイレは洋式だが、実家は「和式」であったこともあり、自身に和式トイレへの抵抗はなかった。だがママ友たちの話を聞いている限り、和式トイレを普通に使える、というのは特別なことだったらしい。

「娘は普通に和式トイレで”うんこ座り”ができたんですけど、現代ではそれができない子もいるらしいんです。『すごいね、うんこ座りができて』って、褒められてるんでしょうけど、なんか複雑ですよね(笑)」

踏ん張れない、後ろに転んだ

 神奈川県内の私立高校に勤務する女性教員も、最近の生徒たちが「和式トイレ」を使えないと嘆く。

「中部地方の田舎にある合宿施設を利用したとき、和式の古いトイレしかありませんでした。洋式しか使ったことのない生徒たちもトライはしたそうなのですが、どうもうまくいかなかった。踏ん張れない、後ろに転んだという生徒が続出しました」

 合宿期間中、和式が嫌で我慢しすぎ、体調を崩した生徒もいたという。

「服が汚れるとか落ち着かないとか、和式トイレの評判は生徒たちに最悪です。私たちのような大人は、誰が座ったか分からない便器と肌の接触をせずにすむ和式の方が清潔なのでは?とか、力みやすくていい、なんて思っちゃうんですけどね」

 花火大会やライブイベントなど、大型特設会場に設置された「仮設トイレ」では、女性や若者たちが敬遠する「和式タイプ」が多い。仮設トイレのレンタル業者が実情を明かす。

「確かに、便座に座るタイプの仮設トイレもあるんですが、不特定多数が集まるイベントでは衛生的に不向き。なので、ほぼ和式が採用されています」

 さらに「和式」ならではの意外な利点もあるという。

「洋式だと居心地が良すぎて、トイレに長居してしまう。和式だと用を足すのに集中できて回転も速いんですね。また、女性は男性より衣服の着脱などで絶対に時間がかかるので、男性用の1.5倍から2倍程度の数を準備しますが、それでも女性用ばかりに行列ができてしまう。洋式を増やすと、トイレ行列がさらに長くなる恐れがあります」

 また、和式トイレに慣れていたほうが身を守れる、とレンタル業者は続ける。

「災害時の避難所などで多用される仮設トイレも洋式ではないことが多い。そのため、和式を敬遠して、トイレの回数が減ってしまった女性や若い被災者がいたそうです。せっかく避難しても、そのことが原因で体調を崩される場合があるのは残念です」

 足が不自由でしゃがむ姿勢がとれないなどの事情がないのであれば、和式トイレを使えないのは「慣れ」の問題だろう。人体の構造から、深くしゃがむ和式トイレのほうが排便しやすく、便秘になりづらいという指摘もある。とはいえ家庭のトイレは9割以上が洋式という現状を考えると、和式トイレ問題はしばらく続きそうだ。

取材・文/宮添優