上白石萌音×Snow Man向井康二は「ただの若者向け恋愛ドラマ」じゃない…『らんまん』『虎に翼』脚本家が挑む”秋ドラマ”のスゴい中身

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10月から放送が開始される「2026年秋ドラマ」。

『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』の野木亜紀子、映画『国宝』の奥寺佐渡子、朝ドラ執筆経験もある長田育恵や吉田恵里香など、豪華な脚本家陣が揃い、しばらくテレビドラマを観ていない層の心にも響くような作品が目白押しだという。

前編記事『「日本のドラマは薄っぺらい」なんて言わせない…『国宝』『逃げ恥』の脚本家も集結、石原さとみ・横浜流星ら「秋ドラマ」が“異例の豊作”になりそうなワケ』に続き、注目の秋ドラマについて、ドラマライター・ドラジ氏が解説する。

複雑な事象を物語に昇華する脚本家・長田育恵

作品③『いろはの恋は時代をかける』

出演:上白石萌音、向井康二(Snow Man)、山中柔太朗(M!LK)、大森元貴、YOUなど

脚本:長田育恵

プロデューサー:宮﨑真佐子、松本明子

本作は、令和の小学校教師の身体に江戸娘の魂がタイムスリップするというSFであり、ロマンティックコメディでもあるという、方向性に想像のつかないスリリングなドラマになりそうだ。

上白石萌音やSnowMan・M!LKといった男性アイドルがキャスティングされていることや、TBSの火曜22時枠であることから「若者向けの恋愛ドラマ」だと思ったが、脚本を担当する長田育恵に着目すると、単なる「恋愛ドラマ」にとどまらず、SFと社会課題を融合させた物語に仕上がることが期待できる。

長田はもともと舞台やミュージカルの脚本を手掛ける劇作家として活躍していたが、2020年代に入ると日本ドラマの脚本も多く手掛けるようになり、植物学者・牧野富太郎の生涯を神木隆之介主演で描いた朝ドラ『らんまん』や、代理母出産をテーマにした『燕は戻ってこない』などの名作を輩出してきた。

長田は複数の事象を1つの物語に集約する筆力が極めて高い。

朝ドラ『らんまん』は、家業の閉鎖、娘や教授の死、関東大震災、妻の病気など多くの問題が主人公を常にとりまいていた作品だった。

『燕は戻ってこない』は日本国内でまだ認められていない代理母出産などの生殖医療の問題と、「29歳非正規雇用者の困窮」などの現実描写が交錯した作品となっていた。

こうして俯瞰するとどちらも情報量が多いように見えるが、これに筋道を立て、1つの作品として昇華していく力は唯一無二だ。

最新作の『いろはの恋は時代をかける』も、タイムスリップ、恋愛、教育現場における諸問題と大量の事前情報がすでに発表されているが、脚本を担う長田育恵がどのようにまとめあげるのか、注目したい。

社会から透明化された人々を描く脚本家・吉田恵里香

作品④『もうパパ!』(ABCテレビ・テレビ朝日系/日曜22:15)

出演:原菜乃華、堤真一、塩崎太智(M!LK)、円井わん、岩瀬洋志、矢田亜希子など

脚本:吉田恵里香

プロデューサー:寺川真未、宮本日奈美、神通勉、倉田知奈

『もうパパ!』はチャンネル登録者数100万人を目標に動画配信に力を入れる父娘の物語だ。目標達成を目前にするが、父親の機嫌をうかがう日々に疑問を抱き始める娘の紀子(原菜乃華)と目標に必死で娘の変化に気づかない父の良詫(堤真一)の関係性にも変化が生じはじめる…。

この作品の脚本を務めるのは、2024年に大きな注目を浴びた朝ドラ『虎に翼』を手がけた吉田恵里香だ。

吉田はこれまで多くの社会派ドラマを手掛けてきた。前述の『虎に翼』や、『恋せぬふたり』『生理のおじさんとその娘』はその筆頭例だ。社会で声をあげられない人や、透明化されているマイノリティを正面から描いてきた。

しかし、これらの社会派ドラマはNHKドラマが多い。吉田が脚本を担当した民放ドラマは『花のち晴れ~花男 Next Season~』(2018年/TBS系)や『君の花になる』(2022年/TBS系)など恋愛作品をはじめとする若者をターゲットにした作品が多い印象だ。

「憲法14条」を核に女性やマイノリティの声を巧みに掬い上げて称賛された『虎に翼』後、初の担当作はこれまでエンタメ基調の多い民放ドラマだ。

『もうパパ!』は『虎に翼』と同じく社会派路線を貫くのか、これまでの民放作品のようにエンタメ路線でいくのか、注目したい。

そして、『もうパパ!』には、吉田恵里香の作家性とは別に、もう一つ注目したい現代的なテーマがある。それが「動画配信者の描かれ方」だ。

これまで動画配信者は炎上したり、迷惑をかけたりする主体として描かれることも少なくなかった。

しかし、現実でもYouTuberが当たり前の存在として受容されているように、フィクションにおける描かれ方にも変化がみられる。

たとえば、春クールに放送された『銀河の一票』(カンテレ系)では、渡邊圭祐が動画配信者の白樺透を演じたが、ここでは都知事をめざす主人公たちの助っ人として大活躍する様子が描かれた。動画配信者がポジティブに描かれるようになったのだ。

吉田が「動画配信者の主人公」をどのように描き、どのような世界観を紡ぎ出すのかという点にも、要注目だ。

以上が10月から始まる秋クールの期待作だ。

こうして業界を俯瞰して観ると、日本ドラマの豊かさとは、社会問題を扱っていることそのものではなく、社会問題・人間の矛盾・透明化されている人々の生きづらさといった複雑な事象を、それぞれ異なる方法で「物語」に昇華できる作り手がいるということではないだろうか。

「日本のテレビドラマは薄っぺらい」

これまでも幾度も言われてきたし、これからも言い続ける人はいるだろう。

そう思う人にこそ、秋のドラマを覗いてみてほしい。

タイトルやキャストを眺めるだけでは日本ドラマの豊かさに触れることはできない。社会問題や人間の矛盾をどう描くか。私たちが暮らしている「今、ここ」を相対化し、社会をより良くするヒントはどこに張り巡らされているのか。

秋ドラマにはその問いに挑む脚本家たちが勢揃いしている。

「日本のテレビドラマは本当に薄っぺらいか?」という問いへの答えを出すのは、秋ドラマを観てからでも遅くはない。

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