抹茶小倉にあんかけ、鉄板イタリアン。ご当地グルメ通も圧倒された、個性爆発の名古屋スパゲッティが楽しすぎる
個人的に、名古屋はまったくと言っていいほど不案内な街です。東京と大阪の生活が長いため、失礼ながら名古屋はスルーすることが多く、まるでエアポケットのような印象を持っています。そんな中、村上春樹さんが、名古屋を「魔都」と呼んでいるコラムを拝見し、興味津々。何度か名古屋に遠征してきました。いやー、ものすごく面白く、かつおいしい街ですね。料理もユニークすぎて、次から次へと行きたい店が増えてしまいました。
今日から名古屋特集をスタートしますが、過去最長の6回シリーズになります。まさに名古屋では「第20回アジア競技大会」が開幕しました。主会場である「パロマ瑞穂スタジアム」をはじめ、各地で熱戦が繰り広げられます。その最中に、自信をもってお届けする「名古屋メシ」、どうぞご期待ください。
のけ反るほどの衝撃、「マウンテン」が見せつける名古屋メシの深み

パロマ瑞穂スタジアム
初回は、名古屋ならではのスパゲッティ料理を取り上げます。驚きの数々、どうぞびっくりしないでください。最初にご紹介するのは、アジア競技大会が開催される瑞穂スタジアムから自転車で20分ほどの場所にある、『マウンテン(名古屋市昭和区)』です。
朝9時、開店時間に合わせ向かうと、まず大きな看板に迎えられます。そこには、まさに巨大な山。「うちの料理は難攻不落です!」、と挑まれている気分になります。

マウンテン
お店は、ヨーロッパのアルプス界隈にありそうな、おしゃれな佇まいでひと安心。ただ、名古屋の食文化を象徴する至宝、と言われるお店ですので、慎重にドアを開けます(笑)。

マウンテン
名古屋は「喫茶店文化」とはよく言われますが(別の回でご紹介します)、マウンテンも昭和の空気を感じさせる素敵な雰囲気で、またひと安心。
メニューは、いったい何種類あるのだろうと思うほど豊富です。その中から選んだのは「甘口抹茶小倉スパ」。抹茶も小倉あんも、純日本のテイストですし、「超甘口」というスパゲッティのイメージからはかけ離れた言葉もあります。メニュー名だけでは何が何だかわかりません(笑)。注文してから10分ほどで、料理が運ばれてきました。その瞬間、思わずのけ反ってしまうほどの衝撃が。パスタは鮮やかな緑色、これが抹茶なのでしょう。上にはホイップクリームと小倉あん。すでにこの時点でノックアウトされた気分です。
では、実食です。パスタを一口。たしかに抹茶の味はしますが、それを凌駕するほどめちゃくちゃ甘い。麺に絡めたホイップクリームも小倉あんも甘いのは当然で、甘口の三重奏。これは本当にスパゲッティなのだろうか、、と思わずにはいられません。

マウンテン(甘口抹茶小倉スパ)
何とか登頂(マウンテンのファンは、完食することを「登頂」と呼ぶらしいです笑)しましたが、甘いものが苦手な筆者には、次回は普通のメニューが良さそうです。ちなみに、名古屋はあんこの消費量が日本でもトップクラスとか。あんこを使った「小倉トースト」も名古屋名物ですので、さもありなんです。マウンテンには他にも、「甘口バナナスパ」「納豆サボテン卵とじスパ」などなど、頂が見えないほど不思議なメニューがズラリ。登山同様、ぜひ心と体の準備を抜かりなくお立ち寄りください。
新幹線を待ちつつ駅ナカで「ミラカン」とビール、からの「あんかけスパ」
続いての名古屋スパゲッティは、「あんかけスパ」です。ご紹介するのは、名古屋駅の飲食街にある『スパゲッティハウスチャオJR名古屋駅太閤通口店(名古屋市中村区)』。不案内な名古屋とはいえ、出張では何度も訪れたことがあります。ただ、飲食はほぼすべて名古屋駅界隈で済ませていました。中でもチャオは、駅ナカで名古屋メシを堪能できる、何かと重宝するお店です。

チャオ
ビール飲みながら軽く食事をする、新幹線を待つ時間の大人の嗜みですね(笑)。つまむのは、まずはスパゲッティの「トッピング」で、特におすすめは「ミラカン」です。名古屋以外の方には、聞き慣れない言葉かも知れません。
ベーコンやウィンナーなどを炒めた「ミラネーズ」と、野菜の具材「カントリー」を合わせたもので、略して「ミラカン」。話は脱線しますが、四文字略語は日本のあちこちで見聞きします。たとえば、マツケン、クドカンなどの人名。馬名でもエバヤン(フォーエバーヤング、2025年の米ブリーダーズカップクラシックで日本馬初優勝の快挙)が有名ですし、ドンペリ、グラサン(笑)、など商品やサービス名にもよく登場します。ぱっと聞いて印象に残るのが強みで、四文字略語がハマれば、「絶対有名になる、流行る」、と略語評論家(自称)としては、つい注目してしまいます。

チャオ(ビールとミラカン)
閑話休題。そんな響きのいい「ミラカン」とビールを合わせていたら、スパゲッティが到着しました。「カントリー」に、名古屋名物エビフライと目玉焼きをトッピング。色合いが美しい料理で惚れ惚れします。あんかけスパの「とろみあん」は、ケチャップやウスターソースをベースに、黒コショウがしっかり効いたスパイシーな味わいです。

チャオ(あんかけスパ「カントリー」とトッピング)
最近口にしていないので、無性にあんかけスパが恋しくなってきました。それにしても、名古屋では誰もが知ってる料理ですが、なぜ他地域に広がらないのか、不思議でなりません。早く東京でも「ミラカン」が流行りますように。
熱々でおいしさが増していく、大須「せろり」の鉄板イタリアン
最後の名古屋スパゲッティは、熱々の鉄板の上に料理がのった「鉄板スパゲッティ」です。ご紹介するのは、『大須せろり(名古屋市中区)』です。

大須せろり
大須という街がこれまた面白い。大須観音の門前町として栄え、大きな商店街が広がり、電気街としても有名です。東京で言えば、浅草と秋葉原を掛け合わせたような街かもしれません。お店に入ると、女性スタッフが気持ちよく迎えてくれます。いただいたのは、「鉄板イタリアン」。こちらのお店ではナポリタンのことをイタリアンと呼ぶようです。トッピングは大好きな目玉焼き。
ほどなく熱々の鉄板が運ばれてきましたが、なんと玉子焼きが敷かれています。その上にパスタ、そしてまた玉子。ダブル玉子になってしまいました(笑)。パスタを一口。熱々でこれは旨い。鉄板で焼かれた卵は少し塩気があり、ビールとよく合います。目玉焼きとはまた違った味わいで、ダブりも結果オーライです。パスタはしっかりとしたアルデンテで、鉄板の熱を受けながら、また少しずつおいしさが増していきます。いやー、旨かった!

せろり(鉄板イタリアン)
レジでは、酔いもあってか、100円玉と1円玉を間違えて出してしまいました。すると、女性スタッフの方が「色が似ていますよねー」とさりげなくフォローしてくださいました。名古屋の方は、ほんと優しい人ばかりです。
名古屋の料理は「とにかく重ね合わせる」のが特長のひとつらしいです。今回取り上げた名古屋スパゲッティも、マウンテンではパスタの上に抹茶と小倉あん、チャオではとろみあんにミラカン、せろりでは鉄板とダブル玉子と、いずれも名古屋メシの個性をよく表す一皿でした。次はどんな料理が待っているのか。そんな期待と不安(笑)を胸に、6回の連載に挑みたいと思います。
文・写真/十朱伸吾
おとなの週末Web専属ライター。全国のご当地グルメを求めて40年余。2013年には、“47都道府県食べ歩き”を達成した。訪れた飲食店は1万軒をゆうに超える。旅と食とお酒をこよなく愛するオプチミスト。特にビールには一家言あり。競馬と写真とゴルフも趣味。週1の自転車ツーリングとサウナでダイエットにも成功した。好きな言葉は「発想力は移動時間に比例する」。

