井波彫刻を学ぶ海外の作家が増加 言葉の壁はスマホで解決 交流が次代をつくる新たな力に
250年以上の歴史を持つ伝統工芸・井波彫刻。その技を学ぼうと、海外から訪れる人たちが増えています。高い技術や職人文化にひかれ、井波で技を磨く外国人たち。彼らが感じる井波彫刻の魅力とは。
今年7月から3か月間、井波彫刻を学んでいるのは、ロシア出身のグラフィック・デザイナー、エラ・ペチェチアンさんです。
エラ・ペチェチアンさん
「西洋のスタイルとは異なる彫り方で、そのことにとても興味を持った」
土田信久さん
「なるべく粗彫り使ってやる方がベスト」
エラ・ペチェチアンさん
「・・あ、はい」
言葉の壁は、スマートフォンを使いながら乗り越えていました。
土田信久さん
「あーOK、OK」
「もう、だいたい通じますね。専門用語がもしわからなかった場合は、図面というか、絵で教えるというか、そういうことなので通じないということはまったくない」
「やはり左右対称にしないとダメですから、右側を小さくしたほうがいいかもしれない」
エラ・ペチェチアンさん
「・・あー、はいはい」
250年以上の伝統がある井波彫刻。井波別院瑞泉寺など神社仏閣の装飾が起源とされ、木を巧みに彫り上げる高い技術が受け継がれています。
その魅力にひかれ、南砺市で技を学ぶ海外の工芸家が増えています。
井波彫刻協同組合では、海外からの研修生を2024年度以降、8人受け入れています。
ムハマッド・サトリオさん22歳(インドネシア出身)
「難しいところたくさんあるんですけど」
「井波は、すべてが彫刻に関わっていて街なかにあふれている、人々も彫刻に関係しているところが、そこがすごく面白く感じている」
マルセラ・チェムスさん21歳(ドイツ出身)
「ここで学んだことは伝統的なもので、ドイツに戻ったら現代的なものと融合させることができたらいいと考えている」
7月に来た3人は、井波で技を学んだドイツ人彫刻家がSNSで発信した暮らしや制作の様子を知り、高い技術や職人文化にひかれて学ぶことを決めたといいます。
井波彫刻協同組合 酒井秀哲理事長
「こちらの方から仕掛けなくても、発信でこっちへまた来られるということが、すごくいいことだなあと思っています。外国の方が来て、そして世界に広めていきたい、また交流を持ちたいということは、すごくいいことだなと思っています」
井波彫刻師を目指して修業をする人は、60年ほど前には、およそ100人いました。
しかし現在は、その10分の1。住宅事情の変化などで欄間の需要も減る中、井波彫刻は、分岐点に差しかかっています。
海外からの研修生の受け入れに携わる中嶋勝彦さんは、国際交流が担い手の確保につながればと期待しています。
中嶋勝彦さん
「外国で(井波の)彫刻を学びたいっていう若い人がそれなりにたくさんいるっていうのがだんだん分かってきまして。その人たち同士が交流することによって、井波の若い人たちも自分たちのやってることがこんなに海外にも評価されるんだなということが分かってきたのが今だと思うんですね」
ムハマッド・サトリオさんは、三代目南部白雲さんのもとで、彫刻師を目指す日本の若者たちと技を磨きました。
技術だけでなく、責任感や規律、忍耐力など職人文化にも触れました。
井波との交流をこれからも続けたいとしていて、工房の仲間たちにとっても、サトリオさんの存在は刺激になっています。
吉本知正さん29歳(千葉県出身)
「井波という伝統の中の新しい風を起こしてくれる、そういう刺激をくれる存在だと思っている」
田島智愛さん24歳(東京都出身)
「彫刻に対する熱意がすごいので、我々も学ぶところがたくさんある」
糸川寛太さん25歳(京都府出身)
「一緒に修業していて、頑張ろうという感じ」
担い手不足が課題となる中、海外から学びに来た人たちとの交流が、井波彫刻を次の世代につなぐ新たな力になっています。

