ブガッティ・シロン超えの1606ps 『デンツァ Z レーシング』 BYDの上級銘柄によるフラッグシップEV 意識したのはポルシェ911
元アルファ・ロメオのデザイナーが描いたボディ
BYDの上級ブランド、デンツァは、7シーターのMPVにシューティングブレーク、ラダーフレームのオフローダーまで、多様なバッテリーEVを擁する。しかし開拓を進める欧州市場では、見た目や体験での一貫性の薄さが、懸案材料になっている。
【画像】意識したのはポルシェ911 デンツァ Z レーシング スポーツ志向な電動モデルたち Z9 GTも 全240枚
ブランドイメージの向上には、それらをまとめられる力強いリーダー的存在が必要になる。そこで開発されたのが、電動スポーツカーの「Z」だ。

デンツァ Z レーシング(欧州仕様)
ロー&ワイドで、イタリアっぽさも香るスタイリングを担当したのは、BYDのデザイン主任へ就任した、ヴォルフガング・エッガー氏。アルファ・ロメオ 8Cを手掛けた人物として、ご存じの方はいらっしゃるはず。
トリプルモーターによる圧倒的な動力性能を秘め、ライバルに掲げるのは世界最高峰のスポーツカー。デンツァの技術者は、2+2のフラッグシップを生み出すに当たり、ポルシェを強く意識したことを隠さない。ただし、それは4ドアのタイカンではなかった。
3モーターでシロン・スーパースポーツ超えの1606ps
親会社となるBYDは、市場屈指の電動パワートレイン技術を有する。大部分は自社開発とされ、その事実をアピールする手段を求めることは、当然だといっていい。
Zのリアには、462psを発揮する永久磁石モーターが2基。フロントには、680psのユニットが1基。システム総合での最高出力は、1606psに達する。ブガッティ・シロン・スーパースポーツより、6psだけだが上回る。

デンツァ Z レーシング(欧州仕様)
プラットフォームは、BYDのe3。スーパーカーで多いモノコックタブ構造ではなく、ポルシェ911のようなユニタリー構造を採用する。大きな部材を1度の鋳造工程で生み出す、ギガキャスト技術を用いることも特長だろう。
駆動用バッテリーは自社製のLFPセルで、容量は76.0kWh。ケースがシャシー剛性の一部を担い、軽量化へ配慮されたが、車重は2250kgとスポーツカーとしては軽くない。
英国で売られる中国車では歴代最高額の「Z レーシング」
ボディスタイルはクーペとスパイダーのほか、今回試乗したウイング付きのレーシングという3種類。マンタイキットで武装したポルシェ・タイカン・ターボGTから、ニュルブルクリンクの量産EV最速記録を奪うため作られた、特別仕様も少数提供される。
英国でのお値段は、クーペが14万2900ポンド(約3072万円)からで、レーシングは17万2900ポンド(約3717万円)。これは、911の高性能仕様と重なる価格帯といえ、英国で売られる中国車としては、歴代最高額となる。

デンツァ Z レーシング(欧州仕様)
Zのレーシングでは、サスペンションにエアスプリングではなくスチールコイルが組まれ、磁性流体ダンパーも装備する。セミスリックタイヤの指定も、可能だという。
今回はグッドウッド・サーキットで、Z レーシングへの試乗が許された。ウォームアップ・ラップ後に、1周だけ全開で。勝手にドライブモードを変えたり、推奨スピードを超えないよう、監視役も助手席に同乗していたが。
速度上昇は圧巻でも敏捷性は今ひとつ
時間が限られ、車内は充分に観察できなかったものの、シートはソフトで快適な反面、サイドサポートが不足気味。座面は、もう少し低い方が望ましい。お値段を踏まえると、プラスティック製部品が多いながら、安普請ということもなかった。
グッドウッドは全開にできる区間が限られ、1600馬力超えの実力を探るのに、1周はどこにも足りない。それでも、パワーデリバリーは感心するほどスムーズ。同時にレスポンスは、多くの1000馬力級のEVで体感する、一貫したリニアさとも異なる。

デンツァ Z レーシング(欧州仕様)
速度上昇は圧巻ながら、タイヤがトラクションを充分発揮できなかったのか、トルクは段階的に高まっていく印象だった。電子制御の介入も、原因かもしれない。
3基のモーターは抑制されたような感覚を伴い、スポーツカーの基準では敏捷性は今ひとつ。旋回に対する意欲性は、更に高めていいだろう。パワーオンによるライン調整や、積極的な身のこなしを得意とはしないように思えた。
絶対的な速さ以外の訴求力は未知数
正直なところ、期待超えの体験ではなかったといえる。しかし、より長い時間が与えられ、監視の目がなければ、秘めた多くの魅力に迫れていた可能性はある。当たり障りのない運転体験、という以上の評価に至っただろう。
パワーは有り余るほどながら、エンターテインメント性豊かな、誰もが没入できるドライバーズカーと呼べるだろうか。絶対的な速さ以外の訴求力は、未知数といえる。

デンツァ Z レーシング(欧州仕様)
擬似的なエンジン音も、走行中は再生される。ステアリングホイール裏に、パドルシフトも備わる。それらの完成度も、次の機会があるなら改めて探ってみたい。
デンツァ Z レーシング(欧州仕様)のスペック
英国価格:17万2900ポンド(約3717万円)
全長:4870mm
全幅:1990mm
全高:1350mm
最高速度:349km/h
0-100km/h加速:1.96秒
航続距離:379km
電費:4.9km/kWh(予想)
CO2排出量:-g/km
車両重量:2250kg
パワートレイン:トリプル永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:96.0kWh
急速充電能力:-kW(DC)
最高出力:1606ps
最大トルク:126.2kg-m
ギアボックス:1速リダクション/四輪駆動

デンツァ Z レーシング(欧州仕様)

