パワハラ認定が怖くて…部下に注意できない上司が急増中→どうやって接するのが正解?【社労士が解説】
中間管理職のAさんは、この春から同じ部署に配属された新入社員の態度に頭を抱えていた。たとえば、ある日Aさんが「そろそろ仕事には慣れてきた?」と聞くと「うん、だいぶ慣れた!」と返される。新入社員が先輩にタメ口をきくのはおかしいと思いつつも、Aさんはこれで注意することがハラスメントと指摘されるかもしれないと考え、怖くて注意できない。
さらに、電話が鳴っても出ようとしなかったり、仕事が終わっていなくても定時で帰ったりと、新入社員の目に余る行動は続いた。それでも「厳しく注意するとパワハラと思われる」という不安から、Aさんは何も言えないままモヤモヤと不満を募らせていくのだった。
Aさんは新入社員に対して、どうすればパワハラ認定を恐れず指導に踏み切れるのだろうか。社会保険労務士の小島朋子さんに話を聞いた。
パワハラと指導の分かれ目は、感情的にならずに事実を伝えられるかどうか
ー本来必要な指導をためらった結果、上司と部下双方にどのような弊害が生じますか?
部下は自分の行動を見つめ直す機会を失い、成長に必要な経験を積めなくなるはずです。フィードバックを受けないまま放置されれば、業務上の信頼を得にくく離職につながる場合もあります。
上司は「部下を指導・育成できていない」と判断され自らの上司からの評価が下がる可能性があります。問題行動が見過ごされる職場には「何をしても許される」という空気が広がり、秩序も乱れるでしょう。
ー部下への注意がパワハラにあたるか指導にあたるかは何によって決まるのでしょうか?
優越的な関係を背景にした言動であること、業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、相手に精神的・身体的苦痛を与えたり職場環境を悪化させること、以上の3点を満たしたときにパワハラと定義されます。
パワハラと指導の主な違いは、目的や言動が業務上必要かつ相当な範囲内で行われているかにあります。つまり、「仕事に必要な注意であっても、やり方が行き過ぎていればパワハラ」となり、「やり方が優しくても、仕事に関係ない嫌がらせであればパワハラ」になるという基準です。
ーパワハラだと言われないためには、どのような伝え方が効果的ですか?
部下を指導する際は、人格ではなく行動や事実に焦点を当てましょう。「敬語も使えないの?」ではなく「『慣れました』のほうが丁寧だよ。言葉遣いを意識しよう」など、問題となる行動とその改善策を冷静に伝えます。
「なぜ今伝えるのか」「どう改善してほしいのか」など指導の意図を自分の中で明確にしておくのも重要です。あわせて、一方的に指導するのではなく相手の事情を聞き取るようにし、指導の場所や、言葉遣い、音量に気を付けてください。
◆小島朋子(こじま・ともこ) 社会保険労務士
複数の社会保険労務士事務所勤務を経たのちに独立し、「社会保険労務士事務所ホライズン」を設立。スローガンは「誰も孤立しない社会」。生活への不安を軽減するべく、労務相談や障害年金の申請等のサポートをおこなう。
(よろず~ニュース特約ライター・夢書房)
