大阪でも名古屋でもない…専門家が副首都は「福岡」が圧倒的に適していると答えた「納得の理由」
「大阪ありき」で進む副首都構想。待ったをかけたのは、アジアのゲートウェイとして成長中の福岡だ。そこには納得の理由があった。
副首都は本当に「大阪」でいいのか?
'26年7月、高市政権肝いりの重要法案が紆余曲折の末、成立した。正式名称「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律」、通称「副首都法」である。
大規模災害によって東京圏の首都中枢機能が麻痺した際に、その役割を代替する都市を国が指定するというこの法律。もともとは自民党と連立を組む日本維新の会が強力に推進してきたものであり、その思惑が、彼らの本拠地である「大阪」の副首都化であることは誰の目にも明らかだった。
そんな「大阪ありき」の空気の中、この出来レースに待ったをかけるエリアが存在する。九州の玄関口、福岡県だ。
都市経営や経済の専門家たちが口をそろえて副首都にふさわしいと評価するのが、ほかでもない福岡なのである。
奇跡のコンパクトシティ
「福岡市は、人口密度を下げずに成長を続けてきた奇跡のコンパクトシティです。九州全域から若者が集まり、勢いと成長力は圧倒的。副首都としては、大阪よりも福岡のほうがはるかに優れています」
そう太鼓判を押すのは、全国50ヵ所以上の地域再生プロジェクトに関わってきた「まちづくり専門家」の木下斉氏だ。
では、なぜ大阪ではなく福岡なのか。専門家たちの分析から解き明かしていこう。
そもそも副首都の指定要件は、大きく分けて次の4つである。①東京圏との同時被災の可能性が低いこと、②国の行政機能の代行・分散体制、③人口・経済の集積状況、④地方行政体制の確立、だ。
さらに木下氏は、都市経営の実務的な観点から「空港・港などで海外と直接つながる交通の強さ」、すなわち⑤「国際接続」を重要な要件としてつけ加える。
首都のバックアップ機能を置くうえで最も不可欠な条件、①「東京圏と同時被災しないこと」から見ていこう。
ここに、大阪最大の弱点がある。それは南海トラフ地震だ。駿河湾から日向灘沖にかけての全長約700kmを震源域として発生する巨大地震であり、東京も激しい揺れが想定される。
大阪の致命的な弱点
今後30年以内に70~80%の確率で発生するとされる南海トラフ地震において、大阪府は「想定被災圏」のど真ん中に位置しているのだ。大阪府独自の想定によれば、南海トラフ地震が発生した際、大阪府内の死者は最悪ケースで1万人を超える。市街地の9割が平坦な大阪は、津波や浸水被害に対して非常に脆い地形をしている。
これに対し、福岡県の南海トラフ地震における死者想定はわずか200人にすぎない。桁が2つも違う圧倒的な安全性である。
「東京、大阪、名古屋という三大都市圏は、南海トラフの被災圏に位置しています。つまり大阪は東京と同時被災する危険性がある。その点、福岡は、被災のリスクが低く、バックアップ機能が高いのです」(木下氏)
次に②「国の行政機能の代行」について。ゼロから何千億円もの税金を投じて巨大な庁舎群や交通インフラを建設するよりも、すでに必要な国家機能が揃っている場所に置くことこそが現実解だ。
この点でも福岡は完璧な体制を整えている。国交省や経産省など主要な官庁の出先機関はすでに福岡市内に集積している。防衛面でも航空自衛隊の春日基地、陸上自衛隊の西部方面隊(熊本)、米海軍基地(長崎・佐世保)が近隣にある。
さらに都市開発のポテンシャルも高い。日本で初めて辛子明太子を製造・販売した老舗食品メーカー・ふくやの川原武浩社長が説明する。
「福岡市の中心部は福岡空港が近いため、航空法による建物の高さ制限があります。しかし、近年、この制限を緩和していく動きがある。既存の建物を高いビルに建て替えていくだけで、莫大な延べ床面積を生み出せます。
また、九州大学の跡地(箱崎地区)や香椎の人工島など、大規模な開発用地もすでに確保されています」
すでに開発の進んだ大阪のように土地買収や複雑な権利調整に時間を費やす必要がなく、低コストかつスピーディに副首都機能を拡張できる環境が整っているのだ。
大阪は神戸や京都と仲が悪い?
副首都に指定されれば、③「人口および経済の高度な集積」の観点から企業移転の優遇措置などが講じられる。しかし、優遇措置があっても、人口減少で衰退する地域に企業が移転したいと思うだろうか。
この点、'25年の国勢調査速報値において、福岡市の人口増加率は3・2%を記録し、全国の21大都市の中で堂々の第1位に輝いている(大阪市は2・0%で第4位)。
さらに起業の活発さを示す開業率(4・9%)も、7年連続で21大都市中第1位を維持している。
全国から若者が集まり、新しい産業やビジネスが次々と生まれているのが現在の福岡なのである。
「関西圏から人口を集める都心回帰の成長である大阪に対し、福岡は東京やアジアなど域外からの新規投資や人材を引き寄せており、成長の質が異なります」(木下氏)
若者が街にあふれ、新陳代謝を繰り返す福岡のエネルギーは、停滞気味の日本経済を牽引する第二のエンジンに相応しい。
④「地方行政の運用体制」の面でも、大阪と福岡の差は歴然としている。大阪では副首都推進本部を置いて10年以上が経過しているが、そのエネルギーの多くは「大阪府vs.大阪市」の制度論争や対立に費やされてきた。大阪が一人勝ちすることで神戸や京都など周辺都市との連携がうまくいかない場面も散見される。
ソウルや上海にも近い
対照的に、福岡は「面」で支える広域連携の体制が最初から出来上がっている。前出の川原社長が言う。
「福岡は人のつながりが強く、連携しやすい環境があります。例えば明太子は、私の祖父が韓国・釜山で出会ったお惣菜をヒントに生み出しました。しかし、レシピを独占せず広く共有して、福岡の食文化として育んでいった。何でもオープンにして、他人と高め合う意識があるんです」
象徴的なのが、福岡市から新幹線でわずか15~20分の距離にある北九州市、そして40分の距離にある熊本市という、3つの政令指定都市が強固に連携している点だ。
過密化する福岡空港の機能を、24時間運用が可能な北九州空港が補完し、熊本には台湾のTSMC進出に象徴される国内有数の半導体産業がある。中枢機能の博多、工業・港湾の北九州、ハイテク製造業の熊本という役割の異なる街が新幹線と高速道路で結ばれている。
九州全体の経済規模(域内総生産)は約52兆円と、オーストリア一国分に匹敵する。一つの都市で抱え込む大阪に対し、九州全体を一つの「経済圏」として面で機能させる福岡のシステムは、副首都として圧倒的に強靭なのだ。
そして木下氏が重視する⑤「国際接続力」も福岡の強みだ。
地理的に見ると、福岡から韓国のソウルまでは約540km。東京からの距離(約1150km)の半分以下である。上海や台北も近く、日帰りで行き来することも可能だ。
福岡県民のオープンで人懐っこいDNA
国立文化財機構東京文化財研究所の石村智氏が言う。
「古代日本において大宰府は『遠の朝廷』と呼ばれ、外交と九州全体の行政を司るもう一つの都でした。
福岡は歴史的に大陸や朝鮮半島と交流が盛んで、博多の街自体、中国から渡ってきた人々の影響を受けて築かれたとされます。福岡には、海外の文化を受け入れて発展させる『オープンなDNA』が刻み込まれているのです」
TSMCの熊本進出が証明したように、台湾や韓国、東アジアからのヒト・モノ・カネの投資を、東京を経由せずにダイレクトに受け止める拠点として、福岡・九州はすでに機能している。有事の際に東京の空港や港湾がストップしたとしても、福岡が日本と世界をつなぐ「ゲートウェイ」として即座に代行できる。
以上、見てきたように福岡は副首都としての高いポテンシャルを秘めている。そもそも大阪はすでに全国第2位の経済圏として自立しており、補助金などのテコ入れはそれほど必要ないはずだ。
「副首都は『災害時の保険』にとどまりません。東京一極集中を打破し、日本全体の成長力を底上げする可能性を秘めているのです」(木下氏)
客観的なデータと専門家たちの太鼓判が示す通り、副首都は、「福岡」で決まりだ。
「週刊現代」2026年9月14日号より
【もっと読む】次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…!日本地震予知学会がいま、もっとも心配している「港町の名前」

