増水すれば水浴びも困難。被災想定生活ではお風呂は貴重な楽しみになったという

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 いつ、どこで災害によって日常が断ち切られてもおかしくない日本で、常に「生き抜く力」が試される。そこで稀代の変わり者・東出昌大が読者に代わってライフライン断ちを実践! 見えてきたのは防災用品のリストだけでは測れない人間の弱さと、生きる力の正体だった。
◆あえて「被災想定生活」を送っておけば家族が守れる

「断ったライフラインはスマホと水道、電気、ガス。あとスーパーも使えないですね」

 そう事もなげに語る東出昌大の元を取材班が訪れたのは、季節外れの台風が近づいていた6月某日。9月25日に発売される彼の初単著『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』の原稿確認と、実践中の「被災想定生活」を取材するためだった。

 案内された築200年の古民家内は電気をつけていないのに、採り込まれた自然光で思いのほか明るい。入口すぐには文化竈が据えられ、昼食用の塩漬け野生肉を食べる東出を柔らかく照らしている。

「いま日本全国各地でさまざまな災害が起きてるじゃないですか? 電気、ガス、水道が全部止まって、日常が突然壊されるといった報道が連日流れてきて。じゃあ、いまあるライフラインを断ったらどうなるのか、試してみたくなったんです。それに実際災害が起きたとき、事前に経験があれば家族を守れる。どこまでが生活に直結した問題かを体で理解することが大切なんです。今回やってみてわかったのは本当に水ですね」

◆確保するだけでは無意味。水をどう運び、使うかも

 東出の暮らす地域では、山中の湧き水を利用できる。それでも、水場まで山道を行き、汲んだ水を運び、飲用、調理、トイレ用など配分を考えなければならない。

「災害時に水があるか、ないかだけじゃない。安全に確保して、必要な場所まで運べるかまで含めて考えなければならない。車は、もともと残っているガソリンだけが使え、給油できない設定で挑んだんですけど、それでも車を出したのは、ほぼ水汲みでしたね」

 そして、食料の確保も被災時には重要な問題。当たり前のように使えていた冷蔵庫は使えず、中身は傷んでいく。そこで、東出が実践したのは肉の塩漬けだった。獲った猪や鹿の肉を塩で保存し、食べる際には薄く切って水で塩を抜く。その水も捨てず、肉の筋や野菜、ヨモギなどと一緒に鍋へ入れ、スープに。水も食材も無駄にしない。

「みんな『備蓄が!』と言うけど、備蓄ってまずは知識だなと思いました。そして、実体験が必要。長期保存に塩漬けという知識があったうえで、この肉は3週間塩漬けにしても食べられるとわかれば、もっと有効ですよね」