熱海富士(C)共同通信社

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 13日に初日を迎える大相撲秋場所。このグズグズとした長雨を吹き飛ばしてくれるのは誰か。

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■豊昇龍休場は賢明

 痛めていた右膝を7月末に手術した横綱豊昇龍は休場となった。無理をしてまた悪化させたら元も子もない。賢明な判断だと思う。まずはしっかり治してもらいたい。

 豊昇龍にはそのうえで、相撲を変えてほしい。これ以上けがをしないためにも、もう強引な投げに頼らず、持ち前のバネを生かし、立ち合いで前みつをとって一気に走る速攻相撲を模索してほしい。かつての千代の富士のように。そして悲願の、横綱での初優勝を──。豊昇龍、今はしばし雌伏の時期だ。

■覚醒した熱海富士

 さて今場所、私の本命は、関脇熱海富士だ。先場所12勝。進境著しく、覚醒した感がある。相手を正面に置き、まわしにこだわらずに、巨体を生かして前へ前へと出るようになったのが大きい。優勝した安青錦に対しても、本割では右、左と突きながら前へ出て、堂々押し出した。

 先日の体重測定では、1キロ増えて幕内最重量の198キロに。今場所も、その体を武器に、圧力をかけ続ける相撲がみられそうだ。優勝争いの経験も、決定戦に3度進出と十分。いま一番賜杯に近いとみる。いよいよ初優勝か。

 同時に、大関昇進も懸かる。12勝以上を挙げれば、「直近3場所を三役で33勝」とされる昇進の目安にも届く。

綱とり霧島の展望&「やってみないと分からない」2人

■綱とり霧島の展望

 対抗は大関霧島。このところ幕内で一番安定している。春場所で優勝して大関に復帰。続く夏場所、名古屋場所と連続して優勝同点。勝ち星はいずれも12番。この場所に向けての稽古も意欲的だった。熱海富士と並んで優勝争いの軸になるだろう。

 先場所に引き続いて綱とりが懸かる。ただ、優勝しても12勝ではどうか。やはり「13勝以上の高いレベルでの優勝」が求められる。

 長年相撲を見てきた私の持論だが、「12勝と13勝の間の壁は非常に高くて厚い」。しかし、いよいよ円熟味を増してきた今の霧島なら越えられないことはない。過度にプレッシャーを感じて崩れることも、もうあるまい。ここはもう1勝上積みして、綱を掴んでほしい。

■「やってみないと分からない」2人

「穴(3番手)」には、横綱大の里と、大関復帰の安青錦を挙げる。

 まず大の里だ。2場所連続休場が明けた先場所は、たしかに「15日間全うする」こと自体が大切だっただろう。だがそれはもう終わった。「しばらく土俵を離れていたから」という言い訳はもはやできない。この秋場所が、今後の相撲人生を占う勝負の場所になると言ってもいいのではないか。

 大の里自身、それを感じているのだろう。今回の夏巡業では終盤にかけて申し合いを積極的にこなしていたし、稽古総見でも、泥くさく、がむしゃらにやっていた。その後、二所ノ関一門の連合稽古でも大関琴桜と20番取った。

 しかしそれでも、私はまだ「やってみなきゃ分からない」という見立てだ。果たして、いま充実している熱海富士や霧島を凌駕できるまで、かつての馬力が戻ったのか……。横綱キラーで動きがよく、ますます意気軒高な藤ノ川を仕留めることができるのか……。先場所彼らに負けた取組が脳裏にちらついてくるのだ。予想は「3番手」にとどめる。

 では、安青錦はどうか。先場所、左足首や左足親指にけがを抱えながら優勝決定巴戦まで戦った末に優勝した。精神力と地力に疑いはない。

 しかし、その後のけがの具合が気にかかる。決定戦まで激しく戦っただけに、あるいは尾を引いているのではないか。現に、巡業でも相撲を取る稽古は行わなかったし、その後も、稽古の様子はさして聞こえてこない。この際、休場して治療に当たった方がいいのではないかと思うほどだ。ゆえに今場所は未知数だ。やはり「3番手」に置く。

■注目は若き新三役

 ここからは優勝予想とは別に、注目力士を。

 まずは新関脇藤ノ川(21)。今年春場所で、藤ノ川が前頭上位に上がってきたときに、私は「星勘定は気にしなくていい。1勝しかあげられなくてもいい。その代わり、きっぷのいい相撲で横綱大関相手に思いっきり光る1勝を!」と言った。

 そうしたら、もっか横綱戦は初挑戦から4戦全勝(大の里と豊昇龍にそれぞれ2勝。不戦勝は除く)。そのうえ先場所は前頭筆頭で勝ち越しまで決め、ついに三役に。あっぱれだ。

 もう一人の新三役、伯乃富士(23)も面白い。こちらも前頭上位で横綱大関を苦しめてきた(金星5個)。2人の若き上位キラーが秋場所をかき回すか。賜杯レースの鍵を握るのはこの2人かもしれない。

銭の取れる四股&恒例・新入幕力士推し!

■銭の取れる四股

 琴栄峰が2場所連続の2桁勝利で前頭筆頭にまで番付を上げてきた。

 所属する佐渡ケ嶽部屋には、大関琴桜のほか、関脇経験のある兄・琴勝峰(前頭1)がいる。そのうえ、出稽古に来る幕内上位力士も少なくない。こうした環境で揉まれ、このところ一場所一場所強くなっている。四つ相撲にうまさが出てきた。今回は上位陣総当たりとなり、厳しい場所になると予想されるが、どこまで通用するか見ものだ。勝ってよし、負けてよし、得るべきものが多い場所となりそうだ。

 もう一つ、琴栄峰で見るべきところは、大相撲ファンにはもうおなじみの四股。まっすぐに伸びた脚が高々上がって一瞬止まる。まさに銭の取れる四股である。

 十両時代に話題に上るようになった。そして幕内昇進が決まったとき、師匠の佐渡ケ嶽親方から「名前を覚えてもらうために、これからもあの四股を続けろ。できれば、もう1秒2秒長く上げていろ」と言われたそうだ。

■恒例・新入幕力士推し!

 新入幕は2人。一人は、寿之富士(としのふじ=前16)。モンゴル出身。同志社大学相撲部から、当時白鵬が師匠の宮城野部屋に入門し、聖白鵬(せいはくほう)を名乗った。その後、伊勢ケ浜部屋に移籍して今年初場所から寿之富士に。

 もともと顔つきは白鵬に似ていたが、体もだんだん肉がついてまるで白鵬のよう。併せるかのように、持ち味の四つ相撲にもかなり力強さが出てきた。身長も関取で最も高い195センチ。十両は負け越し知らずの3場所で通過した。勢いをそのままに、ひょっとすると旋風を巻き起こすかもしれない。

 もう一人は、朝翠龍(前15)。175センチと小兵で、キレがある相撲を取る。朝紅龍(前13)の弟で、史上14組目の兄弟幕内の誕生となった。今場所出場の幕内力士では、ほかに琴勝峰(前1)・琴栄峰(前1)も兄弟。幕内前・後半戦で一組ずつ兄弟力士が出てくることに。これも観戦の楽しみだ。

(構成=山家圭)