東京都のイベントで、婚活アドバイザーの話を聞く参加者(8月8日、東京都港区で)=和田康司撮影

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 少子化に歯止めがかからない中、東京都の出生数が10年ぶりに増加に転じた。

 独自の子育て支援策を展開する都は、物価高に対応する安価な住宅の供給とともに、婚活支援を本格化させている。「子育て」「住まい」、そして「結婚」。都がつがえる「3本の矢」は、出生率の向上につながるか。(村上藍)

令和8年8月8日

 末広がりの「八」が並んだ令和8年8月8日、都主催の婚活支援イベントが都心の商業施設で開かれ、プロフィル写真の無料撮影会や婚活アドバイザーのセミナーは多くの男女でにぎわった。

 「婚活だけでなく、仕事で会った人にも好印象を持ってもらい、縁を広げたい」。話し方の診断を受けていた埼玉県川口市の会社員(38)の言葉は熱を帯びる。小池百合子知事も会場を訪れた。

 都が今年度、結婚支援事業に投じる関連予算は、前年度の倍以上となる7億円。AI(人工知能)によるマッチングや結婚式を挙げたカップルにSNSで式の様子を発信してもらう事業などがある。

 今春の都の調査では、18~49歳の未婚者のうち結婚を望む人は6割弱に達したが、交際を望む人の半数は日々の生活で出会いを意識した活動をしていないという結果が出た。都が昨年度に開催したイベントでは、計1500人の定員に5倍超の応募が殺到した。

小池知事「少子化の背景に『少母化』」

 昨年の人口動態統計(概数)で、国内で生まれた日本人の子どもの数は67万1236人と10年連続で前年を割り込んだが、東京都(8万5064人)は857人増と上向いた。ただ、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は2023年に都道府県で初めて1を下回り、24、25年は全国最低の0・96にとどまる。

 都は、婚活支援によって結婚したい人に寄り添い、実現を後押しした結果として出生率の向上にもつなげたい考えだ。小池知事は「少子化の背景に『少母化』がある」と危機感を抱く。

 子育て支援にも力を入れる。18歳以下に月5000円を支給しているほか、2歳児までの第1子保育料無償化や無痛分娩(ぶんべん)の助成などに取り組んできた。不動産価格の高騰が社会問題になると、子育て世帯向けに家賃を相場の7~8割に抑えた「アフォーダブル(手頃な)住宅」の供給も始めた。

他県と「共同戦線」

 豊かな財政力を誇り、次々に施策を繰り出す都に対し、首都圏を中心に人口流出を危惧する神奈川県などから苦言が相次ぐが、都は婚活支援事業では、他県とも共同戦線を張る。

 主催イベントでは都内在勤の都外在住者にも門戸を開き、山梨、愛知、香川の3県とは、水引を使った共通のロゴで広報を展開し、知事同士が互いのイベントでビデオメッセージを送り合う。山梨県の10月の婚活イベントでは、都がホームページでの周知など参加者集めに協力する。

 都幹部は、連携の効果に期待を寄せる。「東京が少母化対策のけん引役を担い、恩恵を全国で分かち合うことでいわゆる『東京一極集中』批判も和らげば」

「結婚後も切れ目のない支援を」指摘

 少子化と人口減を背景に、全国の自治体はこぞって「官製」の婚活支援事業に力を入れる。こども家庭庁によると、47都道府県に加え、全体の4割近い633市区町村が今年度、国の交付金を事業に充てている。

 山口県は、インターネット上の仮想空間で、自分の分身を操る交流イベントを8月に初開催した。「対面で話すのが苦手」といった声に応えたもので、県こども政策課は「自宅から参加でき、じっくり話せる利点もある」として県外からの参加者増にも期待する。

 ただ、同庁の調査(2023年度)では、国の交付金を受けた自治体のうち婚姻率や婚姻数の増加に効果があったと考えるのは2%。三重県伊賀市や広島県安芸高田市は「結婚や定住に結びつくかの見極めが難しい」などとして婚活イベントを取りやめた。

 結婚の動向に詳しい中央大の山田昌弘教授(家族社会学)の話「行政による結婚支援には批判もあるが、行政が関わることで信頼性が確保され、民間サービスの利用をためらう人にも出会いの選択肢が広がる。子育て世帯が離れないよう、住宅支援など結婚後の生活が成り立つための切れ目のない支援をしていく必要がある」