ネットの動作が軽くなる裏ワザが嘘だった! ※画像はイメージです(NEOヤジ1970/photoAC)

写真拡大

パソコンを使って仕事をするAさんは、ある日ネットで「パソコンの動作が軽くなる裏ワザ」と題された記事を見つけた。記事の指示通りに、指定されたシステムファイルを削除したところ、パソコンは突然シャットダウン。再起動を試みても画面は真っ暗なままで、最終的に大切な仕事のデータまで消失する最悪の結果になってしまった。

【画像】AIを使って調べ物をする主な理由ランキング

この状況にAさんは「こんな危険な情報を出したやつは許せない!絶対に訴えてやる!」と怒りを露わにする。では実際に、ネットで悪質な情報を拡散している記事執筆者やそのサイトの運営者を訴えることは可能だろうか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。

ーネットの記事でパソコンが壊れた場合、相手を訴えられますか?

法的には、不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)として、執筆者やサイトの運営者を訴えること自体は可能です。

ただし、実際に裁判で賠償を認めさせるためのハードルは極めて高いと言わざるを得ません。なぜなら、情報を信じて最終的に「ファイルを削除する」という実行ボタンを押したのはAさん自身だからです。

裁判では、記事の記述に明らかな過失や悪意があったこと、あるいはその記事を読まなければ故障は起きなかったという「因果関係」を、訴える側が客観的に証明しなければなりません。

ー記事に「自己責任」と免責があれば、賠償請求は無理ですか?

免責事項があるからといって、100%諦める必要はありません。

法律上、あらかじめ設定された免責条項であっても、執筆者や運営者に「故意」や、それに近い「重過失」があった場合には、その免責は無効とされる可能性が高いからです。

たとえば、そのファイルを消せば確実にパソコンが壊れると知りながら、面白半分で「動作が軽くなる」と嘘を書いていたようなケースでは、自己責任という言い逃れは通用しません。

一方で、単なる技術的な知識不足やうっかりミスによる誤情報だった場合は、免責条項が有効とみなされ、請求が難しくなる傾向にあります。

ー悪質なデマでPCを壊したライターを、刑事罰に問えますか?

理論上は、刑法第258条の2の「電磁的記録等損壊罪」や、第233条の「業務妨害罪(偽計業務妨害)」などが検討対象になります。

もし、ウイルスのような不正プログラムを掴ませるのではなく、嘘の指示でユーザー自身にファイルを消去させた場合であっても、悪質な罠として刑事責任を追及できる余地はあります。

ただし、警察に被害届を受理してもらい、捜査を動かすためには、単なる個人のトラブルを超えた組織的なサイバー犯罪であるといった、社会的影響の大きさや悪質性の高さを示す客観的な裏付けが求められます。

ー記事に騙されてパソコンを壊された際、必要な証拠は何ですか?

裁判を有利に進めるためには、客観的で改ざん不可能な証拠を初期段階で集める必要があります。

まずは、問題となったウェブサイトのURL、記事の全文が確認できるスクリーンショットやPDFでの保存です。記事が削除されてしまうと立証が難しくなるため、速やかな保存が求められます。

次に、パソコンのシステムがいつ、どのように操作されたかを示す動作記録の抽出です。これに加えて、パソコンの修理業者やデータ復旧業者による「システムファイルが手動で削除されたことが原因で起動不能になった」という専門的な診断書や見積書が、因果関係を証明する決定的な証拠となります。

●北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。

(よろず~ニュース特約ライター・夢書房)