《目の前で下剤を注入し排便させ…》”元15歳アイドル”と”30代事務所代表”すれ違う証言…被告人は「真剣に付き合ってた」、アイドルは「思い出すだけでトラウマ」と主張
SNSやライブを中心とする地下アイドルの台頭など、アイドル活動を夢見る未成年が増えている昨今。一方で、そんな夢に乗じるようなハラスメント行為、過激さを求める演出、整備されていない労働環境が問題になるケースも少なくない。
【写真を見る】アイドルに囲まれる、事務所代表のX被告。誕生日を祝われる投稿をアップしていた
アイドルグループを運営する芸能事務所の社長・X氏(30代、男性)は、14歳から活動していた所属アイドル・Aさんに対し、彼女が15歳の頃から立場を悪用し性的行為を繰り返していたとして、児童福祉法違反の疑いで2025年に逮捕された。そのX氏の公判が現在東京地裁にて行われている。
過去の記事【元アイドルが15歳の時に"30代事務所代表"から受けたと主張した「アブノーマルな性交渉」…涙ながらに語られた"関係の実態"】では、Aさんが証人として出廷し、その長年に渡る被害を訴えている。
そんななか、裁判は被告人への質問へ。X氏は、未成年であるAさんとの性交は認めたものの、「Aさんとは交際しており立場を悪用したものでない」など多くの部分でAさんと異なる主張を行った。そして、そのズレこそが、現在の地下アイドル業界が抱える課題の一端であると感じさせるものであった。傍聴を行ったライターの普通氏がレポートする。【前後編の前編】
X氏による芸能事務所の立ち上げ
当事者のプライバシー配慮のため、被害者だけでなく、被告人の氏名も匿名で行われている当裁判。本記事もその配慮に則って、関係者名は伏せた上で報じる。
本件で争点となっているのが、X氏の行為が「児童福祉法違反」にあたるのか、それとも未成年淫行を禁止する「青少年健全育成条例違反」に留まるのか、という点だ。「X氏は立場を悪用し、Aさんに淫行をさせた」というAさんの主張が認められれば、X氏の行為は「児童福祉法違反」にあたると認定されることとなる。
逮捕時から約8か月身柄拘束が続いていたX氏であったが、Aさんの証人尋問以降に保釈されていた。保釈後はクリニックに通院し、小児性愛の性的傾向は見られないとする診断結果を証拠として提出している。
以下では、被告人質問でのX氏による供述に基づき、事件までの経緯を確認していく。だが、X氏とAさんの供述の間には齟齬があるため、随所でAさんサイドの法廷での証言と比較を行うこととする。
X氏が芸能事務所を立ち上げたのは2017年、年齢は30代前半のときだった。それまでは芸能界と関係ない社会人生活を送っていたが、「夢を追いかけて頑張る人を応援したい」との思いから事務所を立ち上げた。
事件のあった2021年ごろ、事務所の所属アイドルは6~7名で、複数のグループを結成していた。アイドルをサポートするスタッフはX氏の知人で構成しており、ライブに1回付き添うと5000円の賃金を支払うのみで正規雇用者はいなかったという。
Aさん側の証人として証言台にも立ったスタッフのBさんは「イベント企画、衣装など、基本すべてX氏が決めていた」と供述する。事務所内でのX氏の影響力の強さを示すと同時に、人件費をできるだけ抑えてX氏自身が動かないと経営が成り立たない苦しさも感じさせるエピソードだった。
しかし被告人自身は「グループの運営はスタッフに任せていた」などと供述し、事件の本題に入る前から関係者との供述に食い違いを見せていた。
深まっていくX氏とAさんの関係
当初、Aさんは別の事務所に所属してアイドル活動をしていたが、事務所閉鎖に伴い、X氏の事務所に移籍したという。
X氏はAさんのアイドル活動について以下のように総評した。
「Aさんはアイドル活動が大好きだと思う。しかし言い方が悪いが行動が伴っていない。他の人が頑張ってビラとか配る中、Aさんは行わず、それなのに要望だけ大きい」
最終的にAさんが事務所を退所するまでに、多くのスタッフがAさんの担当になっては外れたという。ある時期からは特定の担当スタッフへの愚痴が増え、「あのスタッフが事務所にいるなら辞める」とまで言うようになった。もともとAさんが行っていた自傷行為も目につくようになってきたという。
そこでAさんの担当業務を、X氏とそのスタッフとで分担することになった。その際に、Aさんから何度も「(X氏のことを)世界で一番好き」、「20歳までに死にたいけど、X氏と一緒なら死なない」などと言われたことから、Aさんが自ら命を絶つことのないよう、そばにいるために交際することを決めたのだという。
"下剤注入"や"拘束具"も拒めず
X氏は「Aさんと交際を開始した」と主張するが告白の類は行っておらず、「世界で一番好き」とAさんから言われたことを同様の意味と捉えたという。なお、Aさんも同様の発言をしたことは認めたが、複雑な家庭環境の影響もあって人間関係に悩み続けている人生の中で、ようやく信頼できる大人に出会えたと感じたためにそう発言した、と主張している。
確かにAさんの発言や姿勢は積極的だったかもしれない。しかしそれを制するのが大人であり、かつ芸能事務所を運営する者としての務めだろう。X氏自身も「不徳の致すところ」と供述した通り、未成年であったAさんと性的関係を持った点については反省している。
ただ、逮捕勾留中に面会に来ていた母親に対して「真剣に付き合ってたのになんで(被害申告されたの)だろう」などと語っていたといい、その行為の問題性をなかなか認識できなかったようだ。
X氏とAさんの主張のズレは、当初は言葉の行き違いに過ぎなかったのかもしれない。しかし関係が深くなるにつれ、事実関係において認識に大きなズレを生み出していき、裁判当事者たちの頭を悩ませていくことになる。
Aさんは、被害者として証言台に立つ中で、X氏のことを何度も「好きだった」「信頼していた」と表現していた。しかしそれは恋愛感情ではなく、アイドル活動を人生の支えとする中で、信頼できる大人に出会えたからという意味合いだった。
その思いから、X氏と性的関係になった後は、要求を拒むと自身の活動が途絶えてしまうのではないかと思うようになっていったという。そして途中からは半ば諦めるように、「X氏にとって都合のいいように」関係を継続していたとAさんは証言する。
また、X氏からされて嫌だったこととして、以下のような行為を挙げた。
手などを無理やり口に突っ込まれて胃の内容物を吐かされ、それを被告人が口にした。下剤を注入させられ、目の前で便を出させられた。拘束具で縛られ、性的玩具を使用された。腹部や顔面を強く殴られるなどした。これらをAさんは「思い出すだけでトラウマ」と涙ながらに証言している。
しかし、これら行為についてX氏は「(Aさんの)かなり誇張」と表現し、当事者間の主張はどんどん食い違っていった--後編記事で詳報する。
(後編につづく)
◆取材・文/普通(裁判ライター)
