シーズンが進むにつれ調子を上げてきたパラレス【写真:羽鳥慶太】

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オイシックスで投げるケンジ・パラレスとは何者?

 プロ野球の2軍ファーム・リーグに参加しているオイシックスで、異色の剛腕がプレーしている。今季途中加入したケンジ・パラレス投手は、米ロサンゼルス育ちの日系3世。直球は最速98マイル(約158キロ)を誇る。昨夏はMLBのドラフト指名を目指していたがかなわず、日本の球団と片っ端からコンタクトを試みた末に「2軍球団」へ飛び込んだ。祖母の国ニッポンは、その目にどう映っているのか。

 パラレスは昨年、米大学リーグ1部のロヨラ・メリーマウント大でプレーした24歳。ドラフト指名が有力な選手が集まる「MLBドラフトリーグ」にも参加し最後までアピールしたが、7月のドラフトでは指名されなかった。ちょうど1年前の昨年8月、指名漏れという傷心の中で向かったのが祖先の国、日本だった。

「大リーグのドラフト指名があると期待していたんですが、なかったんです。そこで日本に旅行に行き、1週間くらい渋谷に滞在しました。それがとても楽しい思い出だったんです」

 ただ遊ぶだけでなく、日本で行われている野球のレベルの高さにも目を奪われた。米国へ戻ると父に「日本は素晴らしい選択肢になると思う。すごくレベルが高い野球をやっている」と告げたほどだ。2人で、NPB全12球団にメールでアプローチすると、縁がつながりオイシックスへの入団にこぎつけた。

 オイシックスは1軍がない“2軍球団”だ。米国には多くの独立リーグが存在するとはいえ、この概念を理解するにはAIの手助けまで必要だった。「入団を決める前にChatGPTなどを使って、このチームについてできる限りのことを調べました」。1軍がないことは理解した上での入団。ただこの独特の立ち位置も「見方によっては、むしろポジティブだと思っています。実力を証明できれば、特定の1球団だけではなくどのNPB球団にも行けるんですから」と前向きにとらえている。

「近所の人とトラブルになりかけたり…」日本の生活に体当たり

 パラレスには日本とメキシコの血が流れており、母方の祖母が大阪出身だ。とはいえ、海外での一人暮らしは初めて。いざ新潟に住み始めると「日本のマナーや習慣に慣れるのは、結構大変でした」。日々体当たりの繰り返しだ。

「ごみを分別して出さないといけないんですが、最初はよくわからなくて、近所の人とトラブルになりかけたりしました」と苦笑い。ただ、環境には満足している。「ショッピングモールが近くにあって、はま寿司とか吉野家によく行きます」。生活に慣れると同時に、成績も上がってきた。ここまでファーム・リーグで17試合に投げ防御率2.21。20回1/3で20個の三振を奪う一方で、四球も16個と課題ははっきりしている。

「真っすぐが速いのは知られていると思うので、とにかく四球を減らしたいです。今はコーチと一緒にフォームの細かい修正に取り組んでいます。普段ならシーズン中にフォームをいじることはしませんが、絶対に改善したいと思っているんです」

 日米の野球の違いは厳然としてあるという。驚かされたのは「足の速い、良いランナーが多いこと」だ。「打席から一塁までの駆け抜けタイムも、アメリカより速いのではないでしょうか。あと日本ではやはり『スモールベースボール』がかなり重視されています。アメリカは三振かホームランかという感じですが、日本の野球には、あらゆる細かいプレーが存在します」。この違いを乗り越えられるという自信もある。

「自分は三振を取ったりアウトを取ったりする以外にも、大学時代指導してくれたコーチから『野球IQが高い』と言われてきました。3歳から野球をやっているんです。日本のような環境だと、頭を使ってプレーできる自分の強みがより際立つと思っています」

 日本での挑戦は「まだ、何年とは決めていません」という。「一番大切なのは今季、しっかりイニングを投げて良いパフォーマンスをすることです。結果を残せばスカウトも注目してくれるので、近い将来すぐにチャンスが来ると思っています」。NPBに進むのであれば外国人枠となる。円安の影響もあり、各球団で若い選手の育成を狙った獲得も見られるようになっている。パラレスのもとに吉報は届くか。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)