急増する「人手不足倒産」はまだ序の口か…2026年上期は37%アップ
2026年の春闘賃上げ交渉は、大手企業が定期昇給とベースアップを合わせ5.37%と3年連続で5%台を確保、引き上げ金額は1万9752円と過去最高となった。一方、連合も賃上げ率5.01%と3年連続で5%台を維持した。
どうする日銀?「物価高」倒産を止められるのか…企業物価2カ月連続7%台の高水準
こうした大手、中小企業の賃上げとエネルギー、食品などの物価上昇から、人手不足を背景にした中小企業の「人手不足倒産」が急増している。東京商工リサーチによると、26年上半期(1〜6月)の人手不足倒産は237件と、前年同期(172件)に比べ37.7%急増している。
人手不足関連倒産は「求人難」「従業員退職」「人件費高騰」といった要因に分かれるが、中でも人件費高騰による倒産は120件で、前年同期(50件)の2.4倍に急増している。
大手企業の賃上げに牽引され中小零細企業も従業員の確保、採用、待遇改善などで賃上げせざるを得ず、その結果資金繰りを悪化させ倒産に追い込まれているのだ。同社情報本部・坂田芳博課長がこう述べる。
「人手不足で賃上げしなければ人材確保は難しく、従業員も給与を上げなければ退職する。収益確保のため価格転嫁すれば取引先は取引中止を言ってくる。中小零細企業にとって無理な賃上げが経営を左右する重荷になっているんです」
人手不足による倒産で、従業員や経営幹部などの「従業員退職型」の倒産も増え続けている。帝国データバンクの「『従業員退職型』の倒産動向(26年1〜7月)」によると、同期の人手不足倒産件数257件のうち従業員退職型倒産は83件と、前年同期(74件)に比べ9件、約12.2%増え、22年以降5年連続で増加している。調査を担当した同社情報統括部の飯島大介氏が言う。
「現在のペースは前年(124件)を大幅に上回り過去最多の更新が確実視されています。コストアップ分をサービスや商品価格に転嫁できず、賃上げの原資を確保できない中小零細企業が増えています。賃上げができず既存の従業員の退社だけでなく、経営のキーマンまで条件のいい他社へ流出している。経営幹部の退職は早急に事業継続を断念させる大きな要因です」
業種別ではサービス業(22件)が最も多いが、建設業(20件)では大手中小とも慢性的な人手不足が続き、とくに若年層の建設業離れが深刻だ。今年の春闘で建設業は大手の平均5.37%を上回る6.76%(3万7727円)を出した。初任給も底上げ、40万円を支給する企業もある。
一方、従業員の賃上げができない中小零細企業は多く、建設業に限らず人件費高騰、従業員退職型の倒産は今後も高水準で続く可能性がある。
(木野活明/ジャーナリスト)
