親密な様子のツーショットをSNSにアップしていた保栄被告と史歩理被告(SNSより)

写真拡大

 元プロボクシングの世界チャンピオンであり、バラエティ番組にも多数出演する薬師寺保栄氏(58)。そんな彼が養子の女性・史歩理被告(29)とともに有印私文書偽造・同行使などの罪で起訴された初公判が8月5日、名古屋地裁にて開かれ、検察官は懲役1年を求刑して結審した。30歳ほど年下の養子の存在に驚かされるが、事件はまさにその養子を巡る一連の出来事であった。

【写真】保栄被告と元モデル・史歩理被告のサウナでのツーショット写真。ジムを宣伝する水着姿の投稿も

 2015年に結婚した保栄被告だが、その1〜2年後にテレビ番組で共演した史歩理被告と交際。2022年に妻とは別居状態となっていた。史歩理被告のものと見られるSNSには2024年以降、保栄被告の会社に「就職した」とし食事中のツーショット写真をアップしたり、ジムの宣伝に鍛えた美ボディの水着姿を投稿したりと、親密な様子の投稿も複数うかがえる。

 2人は保栄被告の財産を史歩理被告に相続させる目的で、史歩理被告を保栄被告夫妻の養子にしようとし2024年11月、書類の養母欄に勝手に妻の名前を書いたといい、双方ともその事実を認めている。保栄被告が法廷で明かした「妻の署名偽装」の理由とは--傍聴を行った裁判ライターの普通氏が詳報する。【前後編の後編。前編から読む】

「私の財産を少しでも史歩理に…」

 前編に引き続き、保栄被告の被告人質問での供述を明らかにする。

 2024年11月に起きた本件事件の約1か月前、保栄被告の両親の養子となっていた史歩理被告。それは史歩理被告に薬師寺姓を名乗らせたい思いからであった。

 史歩理被告は祖父母に育てられており、その祖父母からも結婚を急かされる節があり、高齢の祖父母を安心させたい思いがあったのだという。保栄被告の両親も史歩理被告を養子に迎え入れることを歓迎していたといい、家族ぐるみで良好な関係性は築けていたようであった。ただ、そのときにはまだ保栄被告と妻との婚姻関係は続いていた。

 そして両親との養子縁組から1か月も経たずして、史歩理被告を保栄夫妻の養子にしようと考える。その思いについて供述する。

「史歩理とは29歳差があり、普通に考えれば私の方が先に死にます。私の財産を少しでも史歩理に残したいと思って」

 養子縁組には当然、妻の同意がいることはわかっていた。しかし、離婚協議の進展もしないなか同意を得られるとは思わず、無断で進めることにした。

今後は「史歩理と結婚したい」

 弁護人から犯行を振り返り、どうすべきであったかを問われた。

「妻と離婚するまで待ち、正式に史歩理と籍を入れればよかったです」

 保栄被告の両親から「早くケジメをつけろ」と言われ、史歩理被告の祖父母を喜ばせたいと思った気持ちは供述するものの、当時は誰に相談をすることもなかったといい、事を急いだ理由に納得するような答えが出ることはなかった。あくまで年齢を理由にしたが、それ以上に急ぐ事情は見受けられなかった。

 そしてその行動は保栄被告が築き上げてきたキャリアにも傷をつけることになった。

 起訴が報道されて以降テレビの冠番組は打ち切りとなり、運営するボクシングジムでも、「不適切な経営のジムにはいられない」と会員の退所も出た。そして、あくまで判決次第ではあるものの、日本ボクシングコミッションからは一定期間のライセンス停止見込みを告げられているという。

 時期は不明ながらも、養子縁組を無効とする調停を家庭裁判所に申し立てたという保栄被告。しかし、虚偽記載とはいえ、養母としている妻が不出廷だったことから不成立になったという。

 最後に、身勝手な思いで役所に迷惑をかけたことを深く詫び、二度と犯罪を行わないことを法廷で誓った。そして、改めて法の手続きに沿って、史歩理被告と結婚したい意向を示した。

「保栄の気持ちが嬉しくて」

 保栄被告のやりとりを目の前で聞いていた史歩理被告は、特に保栄被告の供述に自身の認識との齟齬はないと答える。史歩理被告としても、保栄被告との結婚を望みながらの交際関係であった。

 祖父母に育てられ、早く結婚したい思いがあった。その思いは保栄被告にも伝えていた。当然、保栄被告が結婚していたことは理解していたが、離婚して籍を入れたいという言葉を信じていた。

 保栄被告の両親の養子となったあと、保栄被告の養子にしたい旨とその意図を告げられた。

弁護人「保栄被告の財産を相続させたいために養子にしたいと聞いてどう思った」

史歩理被告「歳の差があるんで、保栄が死んだ後も考えてくれていて、嬉しかった」

弁護人「保栄被告からは何をして欲しいと」

史歩理被告「書類に元奥さんの名前を書いて、と」

弁護人「悪いことをしている認識はなかったのですか」

史歩理被告「ありました」

弁護人「それでも書いて提出したのは」

史歩理被告「保栄の気持ちが嬉しくて応えようと」

 史歩理被告は保栄被告の妻や役所に対して迷惑をかけたことを謝罪する言葉は述べたものの、「刑事裁判になるとは思ってなかった」とも供述する通り、文書偽造、ましてや戸籍の信用性に関わる重大な事件を起こしたという認識は薄いように思えた。

 今後は保栄被告同様、養子縁組無効調停などに協力をし「法律を守って保栄と生きていきたい」とその意向を語った。

「法を守り、保栄と一緒に暮らしていきたい」

 検察官は、一連の犯行の動機は安易で、妻の信用をも害する悪質な犯行と指摘。また文書の信用性、戸籍制度を揺るがしかねないという社会的な問題を含むとして両名に懲役1年、偽造の養子縁組の書類没収を求刑した。

 保栄被告の弁護人は、事実を一貫して認めており、養子縁組の無効を申し出るなど反省の態度を示している点を主張。そして、日本ボクシングコミッション(JCB)のライセンスの停止見込みなどすでに社会的制裁を受けていると主張。実際8月14日には、「プロボクシング界の権威と信用を毀損」したとして、JCBは薬師寺被告の6か月間のクラブオーナーライセンス停止処分を発表した。

 史歩理被告の弁護人も、養子縁組の概念を十分に把握することなく、家族を喜ばせたいと安易に行った反省をしているとして執行猶予判決が相当であると弁論した。

 両被告に最後に陳述の機会が与えられた。

保栄被告「今後、自分の私欲で物事を考えず、そして犯罪に関わらない、犯罪をしないことをここに誓います」

史歩理被告「多くの方にご迷惑をおかけしたことを深く反省しています。今後、法を守り、保栄と一緒に暮らしていきたいと思っています。申し訳ありませんでした」

 裁判の中で何度も出た「安易」という表現。行為自体は擁護できるものでなかったが、二人の一貫した供述は絆の太さを感じさせるものではあった。

 両者がお互いに過ちを抑止する関係性になることを願う。判決は9月16日に予定されている。

(了。前編から読む)

◆取材・文/普通(裁判ライター)