テレビ中継で「居眠り姿」を晒しているのに…国会議員が「修学旅行生の案内」は絶対におろそかにしない理由
※本稿は、澤田大樹『永田町の人をウォッチしてみた』(カンゼン)の一部を再編集したものです。

■国会議員が「常に眠そう」なワケ
国会中継で必ずといっていいほど映るのが、席で居眠りする国会議員たちの姿。じっと考えている風に両目を瞑っていらっしゃる方もいます。「寝てただろ!」と突っ込まれても、「いえ、熟考していたんです」と言い訳するためなのかもしれません。
仕事の会議中に、堂々と寝る社会人はそういません。ゆえになぜ議員はあんなに眠そうなのか……というのも自然な疑問ですよね。当然ですが、仕事中に寝たらダメです。ダメという前提の上ではありますが、「真っ当な国会議員たちは尋常じゃなく忙しい」というのもまた事実。まずは、国会議員たちの1日のスケジュールを見ていきましょう。
6時〜7時 起床(自宅の場所による)
7時半 党本部に出勤
8時〜9時 部会に出る
9時〜12時 部会を退席して、所属する委員会に出席
12時〜13時 お昼休憩
13時〜14時 本会議に出席
14時〜17時 議員会館の自室で、陳情に来た地元の支援者の話を聞く
国会見学に来た修学旅行生を案内
18時〜20時 地元の支援者と会食
20時〜22時 移動して、企業や団体関係者(支援者) と会食
22時〜24時 さらに移動して、記者との会食
1時 帰宅して急いで就寝
仕事中に寝てはダメですが、こうして見ると、つい寝落ちしてしまう気持ちもわからないでもないような……気がしてきます。
■毎日10〜15件の“会”に出席
自民党を例に挙げますが、まず「自民党公式サイト」を見ると、「今日の自民党」というページがあります。そこに、毎日の部会や委員会のスケジュールがずらりと並んでいます。平日は毎日10〜15件の何らかの“会”が開かれていることがわかります。中には、7時45分から始まる部会もあります。
7時45分には会議の席についていなくてはいけないとなれば、起床時間は6時台。前夜に会食が入っていれば帰宅時間は0時を過ぎることも多く、自由時間はほぼ皆無。4〜5時間睡眠がとれればマシ、といったスケジュール感なのです。
部会の種類は多岐にわたり、「厚生労働部会」「国土交通部会」「財政金融部会」など、各省庁と紐づいています。「この法案に、こんな要素を入れたほうがいい」などの議論を経て、党として出す法案をまとめていくのが部会の役割。定例で行われているもの以外に、何らか急遽議論すべきテーマがあれば都度、部会が立ち上がります。大学教授などの有識者を講師として招き、ヒアリング(勉強会)の時間を設ける場もあります。
どの部会に参加するかは個人の判断で、途中抜けも基本的には自由です。ただ、部会の役員になると、議論の進行役、まとめ役となりますので張り付きになります。
■自薦で農水部会長になった小泉進次郎
部会の役員は、部会長、部会長代理、副部会長の三役。会議の席のセンターに座って司会進行をするため、“ひな壇”と呼ばれています。その領域に明るい人が役員になりますが、手挙げの場合もアリ。例えば小泉進次郎さんは、「専門性はないけれどやりたい!」という思いの強さから、農水部会長を務めていましたね。

部会に出席するのは国会議員だけではありません。例えば、「厚生労働部会で政府提出法案について議論する」となれば、厚生労働省の担当官僚たちが必要な資料を準備し、朝8時に間に合うように党本部に資料を持って出勤する必要があります。議員たちも多忙ですが、各省庁の官僚たちの忙しさも半端じゃなく、一体、朝何時に家を出るのだろう、と首をかしげるほど。“霞が関は不夜城”という言葉にも納得します。
だったらもっと時間に余裕を持ってスタート時間を遅らせればいいのに、と思いますよね。でも、衆院の場合9時からは委員会、参院の場合は10時から委員会や本会議が始まってしまうので、朝しか時間がとれないのが現実なのかもしれません。
夜遅くまでの業務に関しては、「(政府側に質問内容を事前に知らせる)質問通告が遅い」「だから深夜まで業務が生じる」とたびたび議論が巻き起こっています。朝の部会ももっと別の時間帯にできないものか……検討の余地があるのではないかと思ってしまいます。
■議員が開く“モーニングセミナー”の正体
では、部会がない(出ない)ときは何をしているかというと、不定期で開催される「朝食会」に参加することもあります。
例えば、朝8時から経済界の有識者などと朝食を食べながら、今の政策について議論をしたり、3カ月に1回ほどの頻度で、“モーニングセミナー”といった名称の会合を開いたり。これは支援者らが5000円〜1万円払い朝食を食べる、政治資金集めのためのパーティとなっています。
朝9時からは委員会が始まります。国会議員なら何かしら所属することになる「委員会」。多くの議員が、8時から参加していた部会が終わらなければ、途中抜けして委員会に出席することになります。
1時間単位でスケジュールが組まれる部会と違い、朝9時〜12時までは委員会、お昼休憩をはさんで午後からは委員会の続きまたは本会議がスタート、といったスケジュールで動いていきます。
■修学旅行生の案内がビッグチャンスな理由
委員会が開いていないときには、ようやくほっと一息……つけるわけでもなく、国会での質疑応答に向けた官僚との打ち合わせも次々と入ってきます。さらに、国会議員のもとにはさまざまな来訪者がやってきます。例えば、「こんな現状の課題があるので、改善すべくこんな政策を通してほしいんです」といろいろな団体関係者が陳情に来たり、地元の支援者が面会に来たり。修学旅行で国会見学に来た小中学生の子どもたちを案内するというのも、重要なミッションだったりします。

修学旅行生の対応は、一度に100〜200人単位で名刺を配ることができるため、支持集めにとっては意外なビッグチャンスなのです。
子どもたちは有権者ではありませんが、修学旅行から家に帰り、「国会でね、○○さんって人が案内してくれたよ」「優しかったよ」と一言、保護者に話をしてくれれば、有権者に直接名刺が渡ります。仮に両親がいれば2人、さらに祖父母がいれば4人。地元の会合で名刺を配れる数よりもはるかに多く、バカにならない数でしょう。
委員会の合間に、こうした来訪者たちに対応していれば、あっという間に17時、18時になってしまいます。
■「会食」という名の仕事
18時になれば仕事は終わるかといえば、まったくもって終わりません。夜には「会食」という仕事が待っているからです。

会食が1回で終わればいいのですが、3回立て続けにはしごする議員も少なくありません。自民党の議員からは、「朝が早いので、22時には終わらせるようにしています」という声をよく聞くようになりましたが、18時から1回目、場所を移動して20時から2回目、22時から3回目という猛者もいます。
会食の相手はさまざまですが、共通しているのは「いい関係を築きたい人」。上京している地元の支援者とご飯に行くこともあれば、ロビイング(主張を持つ個人や団体が、政府の政策に影響を及ぼそうと行う私的な政治活動)をしてきた企業や団体関係者と情報交換をしながら関係構築を図る場合や、記者や官僚との会食もあります。
これが毎日続くことを考えれば、強靭な胃袋を持っていることもまた、国会議員に必要な特性といえるかもしれません。
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澤田 大樹(さわだ・だいき)
TBSラジオ記者
1983年福島県出身。2009年TBSラジオに入社。2010年にラジオ記者となる。東日本大震災取材後、2013年にTBSテレビに出向し報道局政治部記者、ニュース番組ディレクターを務め、2016年に再びTBSラジオへ戻る。ニュース番組のディレクターを担当したのち、2018年からは国会担当記者となる。著書に『ラジオ報道の現場から 声を上げる、声を届ける』(亜紀書房)。人気ポッドキャスト「セイジドウラク」のパーソナリティー。
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(TBSラジオ記者 澤田 大樹)
