「そのまぶたの下がり、加齢のせい?」―受診率8%、治療が可能な病気を見逃していませんか?
「まぶたが重い、目が開けづらい」――そうした症状があっても年のせいだから仕方がないと放置されがちです。しかし、まぶたが下がる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」は、見た目の変化だけでなく、視野や日常生活にも影響する病気です。多くの人が症状を抱えているにもかかわらず、まぶたの下がりを自覚していても医療機関を受診する人はわずか8%にとどまるという調査結果もあります。こうした実態を背景に、参天製薬株式会社は2026年7月13日、東京都内で報道関係者向けプレスセミナー「眼瞼下垂の実態と課題、治療の現状~点眼薬がもたらす新たな選択肢~」を開催しました。セミナーの概要をご紹介します。
「眼瞼下垂」とは―見た目だけの問題ではない
会見では、九州大学 眼科 診療講師の田邉美香先生が臨床医の立場から、眼瞼下垂に悩む患者さんの実態を解説しました。
眼瞼下垂とは、まぶた(上眼瞼)が下がり、正面を見たときに上まぶたの縁が通常より低い位置にある状態を指します。まぶたの開き具合は、MRD-1(瞳孔の中央から上まぶたの縁までの距離を測る指標)で評価され、正常値はおおむね2.8~3.5mm以上とされています。ただし文献によって差があり、統一した見解はありません。
眼瞼下垂は、生まれつきの「先天性」と、後から生じる「後天性」に分けられます。田邉先生は、後天性が約9割を占め、その中でも、加齢などでまぶたを持ち上げる腱膜が緩む「腱膜性」が最も多いと説明しました。コンタクトレンズの長期使用(特にハードレンズ)や、白内障・緑内障などの眼科手術の後にも生じることがあるといいます。
一方で、眼瞼下垂の背景には、神経や筋肉の病気など見逃してはいけない病気が潜んでいることもあります。田邉先生は「加齢によるものと決めつけず、ほかの原因がないかを見極めることが重要」と述べ、発症時期や、ものが二重に見えないかといった問診の大切さを強調しました。
眼瞼下垂の症状は、大きく「視覚的な症状」「見た目(整容)の変化」「随伴症状」に分けられます。まぶたが上から視界を覆うことで上方が見えにくくなるほか、目が疲れる、目を開けづらいといった訴えが多く報告されています。さらに、下がったまぶたを持ち上げようと、おでこや眉に力を入れる動作が続くことで、頭痛や肩こりを招くこともあります。田邉先生は「患者さんが感じている症状は多岐にわたる」と指摘しました。
症状があっても受診しない―「受診率8%」の現実
田邉先生は、30歳以上の一般集団約7万4000人を対象とした大規模なWeb調査の結果も紹介しました。まぶたの下がりを自覚している人のうち、実際に受診した人は約8%、治療を受けた人は3.3%にとどまっていました。年齢が高いほどまぶたの下がりは増える一方、受診率はむしろ下がる傾向がみられたといいます。
受診につながらない背景には、認知度の低さがあります。「まぶたの下がりは加齢ではなく病気の可能性がある」と知っていた人はわずか7.6%で、治療法があることを知っていた人も約10%にすぎませんでした。その一方で、症状のある人の85%以上が「改善したい」と回答しており、田邉先生は「多くの患者さんは症状を仕方がないと受け入れているわけではない」と語りました。
治療の選択肢に加わった「点眼」
これまで眼瞼下垂の治療は手術が中心でした。そうした状況の中で、点眼治療薬アップニークミニ点眼液0.1%(一般名:オキシメタゾリン塩酸塩)が、後天性眼瞼下垂を対象に国内で2025年12月に承認され、2026年5月に発売されました。手術に抵抗がある人にとって、治療選択の幅が広がった形です。アップニークミニ点眼液は、1日1回点眼するタイプで、防腐剤を含まない使い切りの個包装製剤です。
作用のしくみとしては、まぶたを持ち上げる筋肉の一つである「ミュラー筋」に働きかけて収縮させ、上まぶたを持ち上げます。腱膜が緩んでいる腱膜性の眼瞼下垂でも、この筋肉の収縮によってまぶたの挙上が得られると考えられると、田邉先生は述べました。
臨床試験では、点眼を続けたグループでMRD-1が平均約1.09mm改善し、プラセボ(有効成分を含まない点眼)と比較して有意な差が示されたと報告されています。効果は点眼開始から比較的早い段階で表れ、1回の点眼による効果は8時間以上持続しました。さらに、継続投与によりその効果は6カ月後まで維持されたとされています。安全性については、報告された副作用の発現はごくわずかで、主なものはまぶたのかゆみだったと説明されました。継続使用期間中に、重篤な副作用や治療中止に至る副作用は認められていないといいます。
点眼薬の使い方と手術との使い分け
Q&Aでは、使い方についての質問が出ました。田邉先生は、視機能の改善を目標とする場合は継続使用が原則であり、点眼をやめるとまぶたの状態は元に戻ると説明しました。ただ、医師と相談のうえ、外出する際など必要なときに1日1回点眼する使い方もあり得るとしました。症状が重い場合や、まぶたの皮膚のたるみが強い場合には手術が選択肢となり、一人ひとりの症状に合わせた使い分けが重要だと述べています。
また、この薬は美容目的ではなく、後天性眼瞼下垂に伴う視機能障害などの改善を目的とするものです。会見では、まず眼科で診断を受けて原因を確かめることが望ましいこと、緑内障のうち一部のタイプでは注意が必要で、原則として眼科で処方されることが想定されていることも示されました。日本眼科学会も本剤に関する治療指針を示しているといいます。
なお、本剤は国内で承認・発売されていますが、薬価が収載されていない自由診療での使用となります。
「まぶたの下がり」を年齢のせいにしない社会へ
今回の会見を通じて繰り返し語られたのは、眼瞼下垂は単なる見た目の問題ではなく視機能にも影響する病気であること、そして多くの患者さんが「年齢のせい」と思い込み、治療できる病気だと知らないまま受診に至っていないという現実でした。
田邉先生は、症状に悩む人が正しい知識を得て、適切な診断・治療につながることへの期待を示しました。
まぶたの下がりに心当たりがある場合、加齢によるものか、あるいは背景に別の原因があるのかは、自己判断が難しいものです。まずは眼科で相談し、現在の状態や選択肢を確認することが、次の一歩を考える出発点になります。
*本稿には特定の治療法についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や受療促進などを目的とするものではありません。

