フィンランド南西部オルキルオト島の原子力施設。敷地周辺の地下に使用済み核燃料の最終処分場が建設されている(6月中旬)

写真拡大 (全4枚)

 【ジュネーブ=船越翔】原子力発電所の使用済み核燃料を地下深くに埋設するフィンランドの最終処分場「オンカロ」が操業を開始する見通しになった。

 フィンランド規制当局は4日にオンカロの安全性を認める声明を出しており、同政府は年内にも運転許可の判断を下す。稼働すれば、世界初の最終処分場となり、建設を検討する他国の動向に影響を与えるのは必至だ。

核燃料の処分方法の確立「原発の恩恵を受けた現世代の責任だ」

 フィンランド放射線・原子力安全庁は同日の声明で、オンカロの設計や緊急時対応の検証結果について「運転許可を与えるための安全要件は満たしている」と指摘した。

 オンカロは、フィンランド語で「洞窟」を意味する。建設地には、同国南西部オルキルオト島が選ばれた。

 使用済み核燃料については、各国は保管施設での一時的な貯蔵を余儀なくされているのが現状だ。オンカロでは、国内の原発5基の使用済み核燃料を専用容器に詰め、地下400〜450メートルの坑道に掘った縦穴に、核燃料の放射能が安全なレベルに下がる10万年後まで保管する。最大6500トンを貯蔵できる設計で、最終的には坑道自体を粘土で密閉する。

 フィンランドでは、1983年から最終処分場の建設計画が進められてきた。同政府は核燃料の処分方法の確立は「原発の恩恵を受けた現世代の責任だ」と強調する。

地震がめったに起きない立地、国民理解の後押し

 原発の稼働に伴って増える「核のゴミ」を巡っては、ほかに最終処分場の建設計画が進むのはスウェーデンなど一部にとどまる。日本を含めた各国では住民の反発もあり、場所の選定に難航している。

 電力供給の4割を原発が占めるフィンランドは住民の反対がほとんどなかった。同島が、地震がめったに起きない約19億年前の地下岩盤に立地することも国民理解の後押しとなった。

 「核のゴミ」処理という最大の障壁が解消され、脱炭素につながる原子力政策を進めやすくなる。政府は次世代炉の一種である小型モジュール炉(SMR)などの導入に注力している。

 オンカロが安全保障上のリスク低減につながるとの期待も大きい。フィンランドの最大の脅威であるロシアは、ウクライナ国内の原発周辺を攻撃する。オンカロが稼働すれば、放射性物質の大量拡散を防ぐ防護強化策になり得る。

 ただ、10万年という前例のない長期計画の先行きを見通すのは難しく、国外からは懸念の声も上がる。オンカロを運営するポシバ社は「操業許可後も安全性の向上を続ける」と強調した。

地元町長「住民と対話 信頼醸成」

 原子力発電所から生じる使用済み核燃料の最終処分場「オンカロ」の建設計画が進んだ背景には、地元住民の合意と理解がある。処分場が立地するフィンランド南西部エウラヨキ町のベサ・ラカニエミ町長(57)は読売新聞のインタビューに「情報公開と信頼の積み重ねが重要だ」と語った。

 町中心部から約15キロ離れたオルキルオト島が1999年に処分場の候補地に選ばれ、翌年に町議会が受け入れを決定。採決は賛成が20票、反対が7票だった。その後、運営を担うポシバ社などが住民説明会や刊行物で情報発信を続け、ラカニエミ氏は「科学的知見の提供と対話を積み重ね、信頼が醸成された。こうした関係は1年や2年では築けない」と指摘する。

 立地自治体の利点にも触れ、年間2000万ユーロ(約37億円)を超える同島の原子力施設関連の税収について「安定収入があれば、教育や医療など質の高いサービスを提供できる」と語った。一方で、「『すべてがうまくいっている』と満足するのは好ましくない。問題があれば改善すべきだ」とも述べ、住民による政府や企業への監視が不可欠だと強調した。(フィンランド南西部エウラヨキ、船越翔、写真も)