(※写真はイメージです/PIXTA)

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高齢期の住まいでは、広さや資産価値だけでなく、日々の管理にかかる手間や移動のしやすさも重要になります。長年暮らした戸建てに愛着があっても、庭や建物の維持、室内の階段が負担になり、元気なうちにマンションへ住み替える人もいます。

「この家をあと10年管理できる?」夫婦が考え始めた住み替え

「この庭、あと10年も手入れできると思う?」

妻の恵子さん(仮名・73歳)にそう聞かれ、隆夫さん(仮名・73歳)は答えに迷いました。

夫婦は30年以上、戸建てで暮らしてきました。年金は二人合わせて月約33万円、預貯金は約5,500万円。住宅ローンも完済しています。

経済的には余裕があり、すぐに家を手放す必要はありませんでした。

ただ、70代に入ってから、庭木の剪定や草取りを業者へ依頼する回数が増えていました。外壁や屋根の修繕も必要で、見積額は200万円を超えています。

恵子さんが特に気にしていたのは、室内の階段でした。

寝室は2階にあり、洗濯物を干すにも毎日階段を上り下りします。ある日、荷物を持って降りていた際に足を踏み外しかけたことから、「今は大丈夫でも、80歳になったらどうだろう」と考えるようになりました。

「平屋に建て替える方法もあるんじゃない?」

長男の裕介さん(仮名・46歳)はそう提案しました。しかし夫婦は、建て替えれば今度も庭や建物の管理が残ると考えました。

そこで検討したのが、駅前に建つ中古のタワーマンションでした。

選んだ部屋は70平方メートルほどの2LDK。価格は約5,800万円でした。戸建ては約4,600万円で売却し、不足分や諸費用は預貯金から支払いました。

「タワマンに住みたかったわけではないんです。駅に近くて、家の中に階段がなくて、自分たちで外回りを管理しなくていい。その条件で探したら、ここになりました」

スーパーやドラッグストア、内科は徒歩圏内。車を使わなくても日常生活が成り立つ点も決め手でした。

総務省『令和5年住宅・土地統計調査(住宅の構造等に関する集計)』によると、65歳以上の人が居住する住宅で、2ヵ所以上の手すり設置または屋内の段差解消といった「一定のバリアフリー化」がなされている割合は、2023年時点で45%でした。高齢期まで同じ住宅に住み続ける場合、住宅そのものが身体の変化に対応しているかも重要になります。

総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、高齢者のいる世帯の81.6%が持ち家に暮らしています。持ち家が多数派である一方、住み慣れた家を維持するか、暮らしに合わせて住み替えるかは、それぞれの家庭で異なります。

「広い家を持つこと」より大切になったもの

住み替えて最初に変わったのは、休日の過ごし方でした。

以前は春から秋にかけて、庭の手入れや家の修繕について考えることが少なくありませんでした。現在は建物の共用部分を管理組合・管理会社が管理するため、自分たちで屋根や外壁の工事を手配する必要はありません。

室内もワンフロアです。恵子さんは、「洗濯物を持って階段を上らなくていいだけでも楽になった」といいます。

オートロックや有人管理も安心材料になりました。戸建てに住んでいたころは旅行へ行くたび、新聞を止め、郵便物を気にし、庭が荒れないか心配していました。今は長期間留守にする際の負担も減っています。

一方、タワーマンションならではの費用もあります。

管理費と修繕積立金、駐車場代を合わせると月約7万円。固定資産税も安くありません。将来的に修繕積立金が上がる可能性もあるため、「戸建てより何でも安くなったわけではない」と隆夫さんは話します。

「金銭面だけを比べれば、ここに移る必要はなかったかもしれません。でも、家のことで自分たちがやらなければならないことは確実に減りました」

夫婦は車も1台手放し、必要なときだけレンタカーやタクシーを利用するようになりました。

長男からは当初、「5,000万円以上出して、今からマンションを買うの?」と心配されました。

それでも隆夫さん夫婦は、資産をできるだけ多く残すことより、元気なうちに生活環境を整えることを優先しました。

「子どもに残すことばかり考えて、大きな家を最後まで持っていても、私たちが大変なら意味がないと思ったんです」

現在も預貯金には余裕を残し、どちらかに介護が必要になった場合の費用や、将来さらに住み替える可能性にも備えています。

戸建てとマンションのどちらが高齢期に向いているかは、一概には決められません。戸建てには広さや自由度がある一方、建物や庭を自分で管理する必要があります。マンションでも管理費や修繕積立金など継続的な負担があります。

重要なのは、現在の住まいを維持できるかだけではなく、年齢を重ねた後も無理なく生活できるかという視点です。住居費、移動手段、買い物や通院、建物の管理まで含めて考えることで、自分たちに必要な住まいの条件も見えやすくなります。