どれだけ鍛えてきたかが表われた鹿島の大逆転勝利の裏側。「僕の練習は長い」鬼木達監督の厳しくも愛のあるトレーニングで導き出された“アントラーズらしさ”
「本当に心臓に悪い」
試合後に話を聞いた鬼木達監督は苦笑いを浮かべていた。
国立での横浜との開幕戦に臨んだ連覇を目指す鹿島は「やってはいけないような失点の仕方してしまった」と指揮官が振り返ったように、常に先手を許す形で、58分までに1−3と2点のビハインドを追う苦しい状況となった。
しかし、ここからがまさに鹿島という“うっちゃり”ぶりを示す。
鬼木監督は改めて試合後の会見で振り返った。
「立ち上がりは自分たちがやってはいけないような失点の仕方をしてしまいましたが、今日は必ずタフな戦いになると送り出していたので、最後の最後まで諦めることなく、鹿島のメンタルの強さを最後は見せられたゲームだったと思います。ただ、連覇を狙うという意味ではあってはいけないような失点だったので、そこはしっかりと気を引き締めて次に向かいたいと思っています。
失点もそうですが、全体を通して特に前半は球際のところで相手のほうが気持ちが表われていたと思いますし、近くにいてもそこをつぶせないとか、つぶしにいかないとか、そういうシーンが非常に多かった。後半が始まる前に、やり方云々ではなくてそこのところをもう1回こだわろうと話しました。
前半の攻撃に関しては、思った以上に、恐らく開幕戦ということで気負っていたところはあると思います。チーム全体として後ろのビルドアップで少し後ろに重たくなって、結局それが守備になっても重く、コンパクトにならなかった。なので攻守で、自分たちの戦い方からしたら、攻撃をもっとスムーズにしないといい守備に入っていけないかなと思っています。常にいい攻撃からいい守備、というふうに頭にはあるので、テンポが上がらない理由としては少し相手を見すぎたというか、背後も行くけれども両方やってほしいという中で、そこが少し曖昧になってしまったかなと思っています」
19時半キックオフのゲームは、公式記録では気温29.4度で、かなり蒸し暑く、リーグ戦での最多入場者数記録を更新する6万3960人の観衆が詰めかけたゲームとあって熱気も充満。かなりタフなものとなり、足を攣る選手も続いた。
それでも尻に火が付いた面はあるだろうが、試合の終盤にあれだけ強度を維持し、一気に相手を飲み込んだ鹿島のタフさはやはり目を見張るものがあった。普段のトレーニングでどれだけ意識高く、自分たちを追い込んでいるかがよく表われたシーンと言える。
「自分でも『これ』というものがあるか分からないですけれども、日頃のトレーニングだと思います。自分のトレーニングは、最近の傾向と少し違って練習も長く強度も必要な時は出してもらっています。鹿嶋の気候というものもあるんですが、こっち(東京)ほど蒸し暑くないのでやれる時はとにかくガンガンやるということは自分が就任してから大きなことかなと思います。ただ、今日のような鹿嶋と違う気候でやるのは実際きつかったと思いますが、特に足が止まるか止まらないかは頭のほうだと思うので、そこが切れなかったというのがいい方向に進んでいるのかなと思っています」
会見でそう背景を語った鬼木監督は、試合後、再び「僕の練習は長いですから」と冗談まじりに語ってくれたのも印象深い。
猛暑のなか練習時間は長ければ長いほど良いわけではなく、選手のコンディションや集中度合いが大切になってくる。
それでも時間が長くなったとしても、選手たちを焚きつけ、鍛え、大事な時に最大の力を発揮させる鬼木監督のマネジメントは、やはりさすがと言える。
その裏には誰よりも強い勝利への渇望と、誰よりも選手を愛する人柄があることは周知の事実だ。
確かに3失点したように、開幕戦のパフォーマンスぶりは褒められたものではなく、課題は多い。自分たちでボールを持って主導権を握りたいとの理想のスタイルを目指すには道半ばだ。新戦力のマテウス・ブエノらとの融合にも時間はかかりそうである。
それでも最後は鹿島が勝っているという“らしさ”を表現した開幕戦からは、日々、どれだけ自分たちを追い込んでいるのか、鍛えているのか、その勝負強さの根源を見たような想いになった。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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