次回 7月29日(水)よる10時から第4話を放送 日本テレビ系水曜ドラマ(毎週水曜よる10時放送)「ファーストクライ 母子救命救急班」。

数々の名作ドラマレビュー記事を手掛ける「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平氏は、7月22日(水)に放送した第3話をどう見たのか?第3話の場面写真とともに紹介する。

(※以下、第3話のネタバレを含みます)

本作は、富裕層向け“セレブ病院”の秘密裏に設立された「母子救命救急班」を舞台に、行き場をなくした妊婦たちを救い、新たな命の産声=ファーストクライを守るために奔走する、産科医療の最前線を描いたドラマだ。

日テレ水曜ドラマの前作『月夜行路』のレビューで、私は日テレドラマらしい“見やすさ”を「カジュアル」と表現した。しかし、今回の第3話を見て、その“見やすさ”の本質を私はまったく理解できていなかったことに気付かされた。
どんなに重いテーマであっても、それを軽やかに、そしてエンターテインメントとして成立させる。その裏には、周到な設計と、とてつもない“巧さ”が隠されていたのである。

前回の第2話が「本音に、する」をテーマに全ての物語を束ねていたように、第3話もまた、「痛み」をテーマに全ての物語を見事にまとめ上げていた。

今回描かれたのは、母が若年性アルツハイマーを患い、その母を介護する高校生の娘、つまりヤングケアラーが誰にも言えない妊娠に苦しむ物語。そして、セレブ側では出産後に何もかもやる気を失い、“産後うつ”と診断された女性が抱える別の“痛み”の真実。さらに、母子救命プロジェクトに反対していた麻酔科医・藤堂(岡部たかし)の過去…患者を受け入れられず“切り捨ててしまった命”が、実は自身の息子だったという過去を抱えながら自らの正義に葛藤する姿である。

ヤングケアラーの妊娠、その母の病状、一度は“産後うつ”と診断された女性の葛藤、そして「すべての患者は受け入れられない」という現実を貫いた結果、自らの息子を救えなかった藤堂の過去――それらはどれも、視聴するにはあまりにも重く、胸が締め付けられるエピソードばかりだ。

しかも本作は、その痛みを決して軽く描いてはいない。一つひとつを丁寧に積み重ねることで、視聴者にもその苦しさを実感させていく。だからこそ、ラストの少女の出産シーンには大きな感動が生まれた。

しかし、である。これほど重い題材を扱いながら、不思議なほど最後まで“見やすかった”のだ。
あまりに重苦しい作品は、どれほどテーマが優れていても、視聴者にとっては受け止めきれないことがある。少なくともテレビドラマにはエンターテインメント性も求められる。その絶妙なバランスを、本作は最後まで崩さなかった。

だからこそ最後まで物語を見届けたいと思えたし、見届けたからこそ、ラストの「痛みを取り除くこと」とは?の描写を通して、私自身も無痛分娩に対する考え方を改めて見つめ直すことができたのである。
そして、その“見やすさ”を成立させていた要素は、大きく二つあった。

一つは、主人公・光井(比嘉愛未)が愛読する医療漫画『ドクタージャスティス』である。
初回から登場していたこの漫画、私はてっきり作品全体を柔らかな印象にするためのアクセントであり、主人公を親しみやすく見せるためだけの単なるアクセサリーだと思っていた。しかし前回ラストで、その作者が実は藤堂だったことが明かされ、単なる遊びではなく、次回への“引き”として機能する重要なアイテムへと変わった。
そして第3話では、その役割がさらに大きくなる。『ドクタージャスティス』で描かれる“正義”は、藤堂自身が抱える二つの正義そのものだった。他の命を守るためには受け入れを断らなければならないという現実の正義と、どんな命も決して切り捨てたくないという医師としての正義。その狭間で苦しみ続ける藤堂の背景を、この漫画が見事に映し出していたのである。

さらに、藤堂が自らの息子を救えなかったというあまりにも重い過去を、あえて漫画というワンクッションを挟んで描いたことで、直接的な悲劇として突き付けるのではなく、視聴者が自然と受け止められる“見やすさ”へと変換していた。
それでいて、漫画という客観で描かれるからこそ、私たちは藤堂の痛みをより深く想像し、慮ることができる。この『ドクタージャスティス』という小道具は、本作の“見やすさ”を支える極めて重要なキーアイテムだったのである。

そしてもう一つが、母子救命チームという存在意義そのものだ。
よく、人は仲間がいることで痛みを分け合えると言う。今作は、それをドラマとして体現している。ヤングケアラーの妊娠も、産後うつを疑われた女性も、藤堂の過去も、どれも重い出来事ばかりだ。しかし、その都度、それらを過度に重苦しく演出するのではなく、チームメンバー同士のウィットに富んだ会話が自然と挟まれることで、物語全体に軽やかな空気が生まれている。もちろん、それは“見やすさ”という演出上の工夫でもあるだろう。だが、第3話はもう一歩踏み込んでいた。苦しみは一人で抱えるものではなく、チームだからこそ分け合える。その姿を作品自体が描いているからこそ、それぞれのエピソードは必要以上に重くなり過ぎず、結果として視聴者にとっての“見やすさ”にもつながっていたのである。
つまり、これまで私は、この“見やすさ”を単に視聴者への配慮なのだと思っていた。しかし違った。このドラマの根幹にある「チームによって、取りこぼされそうな命を救う」という思想そのものを表現するために、“見やすさ”という演出が存在していたのである。

見やすさは、ただ見やすいだけではなかった。作品のテーマを伝え、視聴者に届けるために欠かせない、本質的な演出だったのだと、第3話を見てようやく気付かされたのだ。

しかし・・・、そんな感動を覚えたのも束の間、ラストでは、光井の母親が実は、これまでチームの一員であり、コメディリリーフ的な存在としか思っていなかった倉田(山村紅葉)なのではないかという疑惑が浮上した。一話ごとにテーマを描き切りながら、物語全体の大きな謎も着実に前へ進めていく。その連続ドラマとしてのダイナミズムもまた、本作の大きな魅力なのだ。

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▼次回の第4話 あらすじはこちら
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<番組概要>

脚本:浜田秀哉
音楽:菅野祐悟
演出:大谷太郎 上田迅(ザ・ワークス)
チーフプロデューサー:松本京子
シニアプロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:森有紗 
        山田勇人 遠藤光貴 大垣一穂(ザ・ワークス)
主題歌:JUJU「夏蝉」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作協力: ザ・ワークス
製作著作: 日本テレビ

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