アパレル販売員から職人へ…足場なしで高所作業に挑む女性。男社会で道を切り拓き、万博工事を成功させるまで
そんなタフな現場で活躍している女性がいる。株式会社ギアミクス ロープアクセス事業責任者の矢部由季奈さん。
以前はアパレルや靴の販売員として働いていた彼女が、なぜ畑違いの職人の世界へ入ったのか。“ロープアクセス女子”として最前線を走る矢部さんの転機と、仕事への想いを聞いた。
高校2年生の頃からアパレルショップでアルバイトを始め、高校卒業後もしばらくその仕事を続けていた矢部さん。その後、新たな挑戦として生命保険会社に入社したものの、「営業の仕事は思うように成果が出ず、精神的にもかなり辛くて、半年ぐらいしか続かなかった」と思い返す。
次の仕事を探すなかで、自宅近くの靴店の求人を見つけ、実際に働いてみると「接客業は自分に合っている」と感じ、気づけば5年ほど勤めることに。
転機になったのは、彼氏(現夫)のアドバイスだった。
「当時、交際中だった今の夫から、『一度外の世界を見てみたら』と背中を押され、あらためて自分のやりたいことと向き合いました。それまで販売の仕事しかしてこなかったんですが、実はキャリアウーマンへの憧れもあったんです。
そうした思いを夫に相談したところ、ロープアクセスを行っている会社を紹介してもらい、事務員として働き始めました」(矢部さん、以下同)
ロープアクセスとは、屋上から垂らしたロープを伝って作業員が下降し、外壁の補修や調査を行う工法のこと。足場やゴンドラを設置する必要がないため、工期を大幅に短縮できるうえ、仮設費用も抑えられる。
また、狭い場所や足場の設置が困難な環境でも柔軟に作業できるほか、修繕が必要な箇所だけをピンポイントで施工できるため、コストパフォーマンスも高い。
このような理由から、多くの建物オーナーから支持を集めているのだ。
◆男性との体力差を補うには“気合”と“根性”しかなかった
しかし当時は建築に全く興味はなく、ロープアクセスのことすらも知らなかったという矢部さん。
だがある日、上司から人手不足を理由に、ロープアクセスの「安全監視員」として現場への同行を頼まれる。
そこで初めて、ロープアクセスの仕事を間近で見た。
