ネット上にデータを保存できるオンラインストレージ・サービスの将来はどうなるのでしょう?

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5月22日、今後の日本のインターネットを揺るがしかねない判決が東京地方裁判所で下りました。訴訟の内容は、"オンライン・ストレージサービス"に関するものです。

オンラインストレージ・サービスといえば、ポータル最大手のYahoo!の「Yahoo!ブリーフケース」やジャストシステムの「InternetDisk」など、私たちに身近なサービスでもあります。

そのサービスでどうして訴訟が起こり、なぜ判決が日本のネット社会を根底から変えかねない事件なのか、そのあらましを見ていきましょう。

■オンラインストレージ・サービスとは

オンラインストレージは、インターネット上に様々なファイルやデータを保存できるサービスです。自宅で進めた仕事データを保存し、会社でダウンロードしたり、データのバックアップに使うこともできる便利なサービスです。

また、有料・無料のサービスがあり、一人で使用するものや他者とのデータ共有を前提としたものなどがあります。

■事件のきっかけ

事の発端となったのは、イメージシティ(当時コンピュータシティ)が運営する「MYUTA」という登録制の音楽ストレージサービスでした。

MYUTAでは、まずユーザーが専用ソフトを使ってCDから音楽データを変換します。さらに、それをパソコンを介してMYUTAのサーバにアップロードし、携帯電話へダウンロードすることで、いつでもどこでも自分の音楽が楽しめるサービスを提供していました。

これに対してJASRAC(日本音楽著作権協会)は、MYUTAには"複製権"や"公衆送信権"などの権利が及び、著作権侵害に当たると指摘しました。JASRACは、許諾を得た上でサービスを開始するように申し入れましたが、両社の話し合いは合意に至りませんでした。

そして、イメージシティは同サービスを06年4月に中止した上で、JASRACを相手取り、著作権侵害に当たらないことの確認を求めて提訴に踏み切ったのです。

■拮抗する両社の主張

イメージシティ側は、「複製や送信はユーザー個人が行っているものであり、不特定多数への送信はしておらず、著作権法第30条1項の"私的使用のための複製"の範囲内である」と主張しました。

対するJASRACは、MYUTAのサービスは、複製権や公衆送信権などの権利に及び、著作物の利用主体もイメージシティにあるので、JASRACの許諾が必要であるという主張です。

●イメージシティの主張
・データの複製や送信を行っているのはユーザー個人である
・MYUTAはデータ保管を代行するサービスである
・個人認証で本人以外はダウンロードできず、音楽データを不特定多数に送信していない
・複製はユーザーの"私的複製"の範囲内である

●JASRACの主張
・音楽データはイメージシティが所有するサーバに保存される
・同社にとってユーザーは不特定多数にあたる
・サーバから不特定多数のユーザーに送信されるため、公衆送信の主体はイメージシティとなる

■判決−イメージシティの訴えは棄却−

東京地裁の判断は、音楽の複製および公衆送信の主体は、原告であるイメージシティが行っているものであるとし、原告の訴えを棄却しました。

棄却にいたる理由は、以下のとおりです。

・イメージシティが貸与した専用ソフトで音楽が変換され、イメージシティが管理および所有するサーバにデータを保管している。

・データは各ユーザーの携帯電話へ送信され、同社にとってはユーザーは不特定多数(公衆)にあたる。

こうした理由から、複製と公衆への送信の行為の主体はイメージシティにあり、JASRACがもつ複製権・公衆送信権に基づく"差し止め請求権"が及ぶという判決が下されました。

■ネットに与える影響

この判決は、音楽に限定したものではなく、著作権を有するものが対象となっており、ストレージサービスに及ぼす影響は計り知れないと、ネット上で批判の声が上がっています。

つまり、個人が所有する著作物を個人で使用するだけでも、許可なくストレージサービスに保存すると著作権侵害となる、とも捉えることができます。そうすると、たとえば、著作権を有するものを自分にメールする場合でも、経由するサーバが自前のものでない限り、著作権者の公衆送信権を侵害する可能性が出てくるかもしれないのです。

さすがにそれは極論でしょうが、今回の判決は、解釈次第によっては影響が大きすぎると懸念され、まだ地裁判決ということもあって今後の展開が注目されています。もしかすると、今後のインターネットサービスの未来を大きく変えることになる事件かもしれません。


イメージシティ
JASRAC
JASRACのプレスリリース

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