約1カ月にわたり女性の吐き気や嘔吐(おうと)の原因となっていた胃石を「ダイエットコーラ」で溶かしたという事例が、医学誌のNew England Journal of Medicineで報告されています。

A Fizzy Fix | New England Journal of Medicine

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMimc2502450

Diagnostic dilemma: Huge mass in woman's stomach was likely caused by Ozempic-style drug - and dissolved with diet soda | Live Science

https://www.livescience.com/health/diagnostic-dilemma-huge-mass-in-womans-stomach-was-likely-caused-by-ozempic-style-drug-and-dissolved-with-diet-soda

アメリカのマサチューセッツ州に住む63歳の女性は、約1カ月にわたって吐き気や嘔吐、食欲不振が続いたため救急外来を受診しました。女性は医師に対し、上腹部と右半身に焼けるような痛みがあり、それが背中まで広がっていると訴えたとのこと。

この女性は2型糖尿病と肥満の既往歴があり、受診の前年からセマグルチド(オゼンピック)というGLP-1受容体作動薬を服用していました。オゼンピックは2型糖尿病や肥満の治療に用いられる薬で、女性は薬の服用以来18kgも体重が減少し、特にこの1カ月で減量が加速していたそうです。

医療チームが女性の腹部や骨盤のCTスキャンを行ったところ、肝臓で作られる胆汁を十二指腸や胆のうに運ぶ管である胆管が、わずかに拡張していることが判明。また、女性の胃は「半固形物」によってわずかに膨張していることもわかりました。

さらに詳しく調べるため、医療チームは胆管・胆のう・膵臓(すいぞう)・膵管を調べる非侵襲的なスキャンに加え、内視鏡を用いて食道から小腸上部をチェックしました。その結果、女性の胃の中に「胃石」と呼ばれる大きな塊があることが確認されました。

胃石は部分的に消化された、あるいは未消化の物質が固まってできた塊のことです。オゼンピックをはじめとするGLP-1受容体作動薬には、胃の内容物が腸に送られるのを遅延させ、より長く満腹感を持続させるという働きがあります。これによって未消化の食物がより長く胃の中にとどまり、胃石ができたのではないかと考えられます。



医療チームは女性を入院させると、すぐにGLP-1受容体作動薬の投与を中止しました。その後、医療チームは女性の体内にある胃石を溶かす方法として、「炭酸飲料を飲ませて胃石を溶かす」という方法を選択したと報告されています。

炭酸飲料を飲ませて胃石を溶かす」という方法は一見すると冗談に思えますが、実際に過去の症例報告や経験に基づく証拠は、「12時間以内に3リットル」のコーラを飲むことに胃石を溶かす効果があることを示しています。しかし、炭酸飲料の酸性度が胃石を溶かすのに役立つのか、あるいは炭酸自体に効果があるのかといったメカニズムはよくわかっていません。

女性には2型糖尿病の既往歴があったため、砂糖を含まないダイエットコーラが処方されました。また、女性は炭酸飲料が好きではなかったそうで、飲む量も3リットルではなく1.5リットルに抑えられたとのこと。

ダイエットコーラを飲む治療を始めてから2日後、女性は腹部に「ぐいっと引っ張られるような感覚」を覚え、その後は吐き気や腹部の不快感が軽減されました。内視鏡検査の結果、胃石はなくなっていたと報告されています。

女性は入院中に普通の食事に切り替え、退院時には吐き気や嘔吐、腹痛といった症状はなくなっていました。オゼンピックの服用を再開することはなく、退院後に食欲が増進して体重も少し増えたそうですが、数カ月が経過しても症状は再発しなかったとのことです。



最も一般的な胃石は食物繊維でできており、セルロース・リグニン・タンニンといった消化しにくい成分が多量に含まれている柿・パイナップル・レーズン・セロリといった食品を大量に摂取すると、胃石形成のリスクが高まるとのこと。また、肥満手術や胃に関連する手術による解剖学的変化や自律神経障害、GLP-1受容体作動薬など胃内容排出遅延を引き起こす薬の服用なども、胃石形成のリスクを高める可能性があります。

医療チームは症例報告の中で、「食物の残りかすから形成された胃石は、臨床的に安定した状態の患者に対し、初期治療としてコーラを経口投与することで対処できる可能性があります。この処置は一般的に費用対効果が高く、侵襲的な処置よりも合併症のリスクが低いものです」と述べました。