【山村 佳子】「娘は売春しているのではないか」48歳シングルマザーが調査依頼した20歳の娘の「やばすぎる推し活」

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「推し活は日々を楽しくしてくれますが、限度を超えると心の病に発展することも。推し活は、刺激と達成感がセットであることを意識したいものです。例えば、最初はライブチケットが当たれば十分だったのに、脳がそれに慣れ、さらにグッズ購入、全イベント制覇、推しとの接触などを求めてしまう。これにより、生活の土台が崩れてしまう人も少なくありません」

こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。

山村さん連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにしていったのかも含め、さまざまな事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。

今回山村さんのところに相談に来たのは、48歳の会社員・真緒さん(仮名)だ。20歳の大学生の娘の行動がおかしいと連絡してきた。

ADHDの傾向がある娘を大学へ

真緒さんは28歳で娘を産み、30歳でシングルマザーになります。離婚の背景にあったのは、娘の育児方針。真緒さんは娘が1歳半の時に特性を見抜き、協調性を育てるために保育園に入園させ、仕事復帰します。それが専業主婦志向の夫には不服でした。

真緒さんの予想通り、娘は発達障害グレーゾーンでした。娘にはADHD傾向があり、好きなものにはのめり込むけれど、ルーティンワークが苦手。真緒さんはその特性を考慮し、中学・高校の通学を支え、中堅大学への合格まで導きます。

娘には17歳から19歳まで交際している恋人がおり、真緒さんと3人で食事するほど仲良しでしたが、1年前からあるYouTuberにハマり、恋人と別れます。それからは推し活にのめり込んでいきました。資金稼ぎのためにコーヒーショップだけでなく居酒屋でアルバイトを始め、留年が確定。

「大学を辞める」と言う娘と真緒さんは対立し、その2日後に娘のワンピースポケットからラブホテルのレシートを見つけます。さらに翌日、娘のバッグにコンドームが入っていることを確認。

「母として恐ろしいのは、娘が売春していることです」と言う真緒さんは、娘を立派に育てたいという意識が強い。娘が自分自身と向き合い、生き方を改めるための素材として、証拠を取ることにしました。

娘のアルバイト先に

真緒さんに調査日の候補を聞くと、「娘の行動パターンを知らないんです」と話していました。それにより、娘を支配せず、自主性に任せていることがわかりましたが、曜日を特定しないと、調査費用がかさむばかり。娘は一日中外出しない日もあれば、夜中に帰ってくる日もあるのです。とりあえず、アルバイトの曜日を聞いてもらい、その日から調査をすることにしました。

朝8時に自宅から出た娘は、駅まで10分ほど歩いて都心の人気コーヒーショップに出勤。娘は真緒さんに似て、目鼻立ちがはっきりしている整った顔立ちです。さらに、背が高いので立ち振る舞いが映える。8時から始まった勤務の様子を見ていましたが、娘のファンらしき中年男性の姿もあり、楽しそうに仕事をしていました。

嵐のような忙しさでしたが、娘は小学校時代からこのコーヒーショップが好きで研究していただけあって、テキパキと注文をさばいていました。そして13時に仕事を終え、一度自宅に戻ります。

雑居ビル内のラウンジへ

19時になると再び出てきて、入っていったのは都心の雑居ビル内にある、スナックのようなラウンジのようなお店。店のSNSを見ると色気を売りにしており、胸の谷間を強調した女性が、「今日もお待ちしております」という投稿をしていました。

20時から0時まで働き、終電に飛び乗って帰宅していました。娘は少し酔っているようで、疲れたような顔をしています。娘は真緒さんに「居酒屋で働いている」と嘘をついていたことになります。

ラブホテルに出かけるような用事は週末にあるのではないかと踏み、土曜日は朝から家の前で張り込みをスタートしました。これまでの調査から、娘が都心のコーヒーショップの人気店員であること、そして夜はスナックで働いていることが分かっていました。こうした背景から、もしラブホテルに入るような相手がいるとすれば、年上の男性である可能性が高い。そう踏んだ私たちは、車を用意して娘を尾行することにしました。

清楚だけどセクシーなワンピースで

朝8時に真緒さんがテニスラケットを持ってどこかに出かけた後、娘が出てきたのは10時でした。清楚でありながらセクシーなワンピースを着ています。電車で30分ほど移動し、主要幹線道路沿いにあるコンビニへ。ペアの探偵は、私のGPSデータを追い、数分後に車で到着します。それから5分後、コンビニにドイツ車が停まり、降りてきた40代半ばの男性が、店内にいた娘の肩を叩きました。自信に溢れており筋肉質で、清潔感のある印象です。娘が男性と共に自然に車に乗ったので、もしかすると元夫かとも思いつつ、追跡を開始しました。

車は第三京浜道路に入り、港北インターで降り、そのままインター近くのラブホテルへ。男性は娘の手を握っていましたが、娘の表情は見えません。最も高い部屋のボタンを押し、2人は無言のまま部屋に入っていきました。

そして、午後になると出てきて、みなとみらいのビルの駐車場に車を停めました。エレベーターで人気のイタリアンレストランに移動し、食事を始めます。男性は経営者のようで、AIの進化と人間の職業について、あるいは世界情勢について一方的に話している。娘は笑みを浮かべているものの、落ち着かない様子で、食も進んでいません。

しばらくしてから、男性が「体調悪い? 大丈夫?」と言い、車に戻りました。周囲に人がいないことを確認すると、娘に対してキスをします。そして、お金が入っている封筒を渡していました。娘はパパ活もしていたのです。娘は車を降りると、男性にバイバイと手を振り、そのまま駅のトイレに駆け込んでうがいをしていました。

相手は父親ほどの年齢の男性です

以上の証拠を押さえて、真緒さんに報告します。事前に、「娘さんが、真緒さんに絶対に知られたくないであろう証拠を押さえました。相手は父親ほどの年齢の男です」と話しておきました。真緒さんは「うすうす感じていたので、覚悟はできています」と言います。

この証拠の目的は、娘が自らの行動に気づき、大学に戻り、未来に向かって行動することです。ですから、今後の親子関係のことを考え、ラブホテル内の行動、車内のキスシーンや手繋ぎシーンなど生々しい部分はカットし、建物の外観や車の画像を入れるのみとしました。

真緒さんは食い入るように証拠の画像を見つつ、自然に流れる涙を拭おうともしません。ラブホテルの外観が映ると、「ああ」と小さく叫んで顔を覆っています。そして「よく撮ってくださいました。これで今から娘と話し合いをします」と言い、帰っていったのです。

それから3日後、「娘と話し合いをして、大学を継続することと、夜のバイトを辞めることで話が落ち着きました。ちょっと色々あって、話を聞いてください」と連絡があり、カウンセラーとしてお会いすることに。

YouTuberの投げ銭に100万円近く

真緒さんは以前よりも落ち着き、こけていた頬も戻っていました。娘のことを相当心配していたんだろうなと拝察したのです。

「まず、娘がハマっていたのは、あるYouTuberでした。私は単に動画を見るためのものだと思っていたら、生中継の配信で『スーパーチャット』という機能があり、そこにコメントと共に金銭を送るシステムがあると知ったのです。娘は『配信内で名前を呼んでもらえて、特別扱いされたことが嬉しかった』と話していました。娘は、この機能で相手に100万円近くのお金を送っていたのです」

いわゆる“投げ銭”というシステムですが、これは相手のパトロンになったような気分を味わえるだけでなく、金額も明記されるので、ファン同士のヒエラルキーの上位に立つこともできる。毎日やっているうちに、判断基準がわからなくなり、無理をして多額の課金をしてしまうと聞いたことがあります。

「そうなんです。娘は『ライバルに負けたくない』とのめり込んでしまったようなのです。『投げ銭しても名前を呼んでもらえなかったことがあり、もっと頑張ろうと夜の仕事を始めた』と話していました。こういう射幸心みたいなものにつけ込む仕組みって、おかしいですよね」

娘は真緒さんにパパ活のことも知られてしまったと覚悟し、包み隠さず話したそうです。

「夜の仕事は、推し活仲間の紹介でした。あそこのお店、表向きはスナックですが、客と店員が“自由恋愛”としてデートできる『出会いの場』であると。娘はあの男性が2人目で、相手の勤務先も知っているから変なことはされないと思いホテルに行ったそうですが、やはり気持ち悪かったと泣いていました」

「私、闇堕ちしていた」

娘は自分の行動を証拠によって客観的に見つめたことで、「間違ったことをしている」という意識を強く持ったそうです。そして、推し活を卒業することに決めました。

「娘はこのままでは『私、闇堕ちしていた』と話していました。もう善悪の判断もつかなかったそうです。親に知られたくない、恥ずかしい行動の背景にYouTuberの存在があるので『もう観たくない』とも話していました。ただ、ここまで調査をして、娘の心を傷つけたのは事実だと思います。今後はそこに向き合っていきます」

真緒さんは、自分の気持ちに整理をつけるように、私にそう話してくれました。きっと娘もこれからは勉強や就職活動などに打ち込み、未来に向かって進んでいくでしょう。これからまた“推し”ができるかもしれませんが、この経験を踏まえ、次はいい距離感で付き合えるようになるはずです。

今回の調査料金は50万円(経費別)です。

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