「いじわるしないよね?」深浦康市九段が先手番入札に大混乱!“永瀬流”入札で先手獲得も持ち時間1分のビハインドに苦笑い/将棋・ABEMA地域トーナメント2026

「いじわるしないよね?」――そんなベテラン監督の思わず漏れたボヤキから始まった新ルールを巡る駆け引きが、大きなドラマを生んだ。6月27日に放送された将棋の早指し団体戦「JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026」の予選Aリーグ1位決定戦では、持ち時間を巡る究極の選択と、それに続く177手にも及ぶ死闘が繰り広げられた。
九州サザンフェニックスが3勝、北海道・東北バルペックスが1勝で迎えた第5局。リードを広げたい九州からは監督の深浦康市九段(54)が出陣し、北海道・東北を支える屋台骨の一人である中村太地八段(38)との対戦となった。
注目が集まったのは「先手番入札制度」だ。九州の控室で深浦九段が「先手を取りたいです。いくつなら取れますか?」と相談を持ちかけると、永瀬拓矢九段(33)は「60(秒)ならいけると思う」と強気の提案。しかし深浦九段は「そんな、いじわるしないですよね?(笑)」と、相手がそこまで秒数を使ってこないのではないかと予想した。これに対し、仲間たちが「いじわるしないんですか?」と笑い声をあげる中、佐々木大地七段(31)は「細かく刻んでくるタイプだと思うので、わからないですよ?」と警戒を促す。その結果、深浦九段は提案を元に「永瀬流で、62にしようかな」と永瀬九段の実績に基づき1分2秒を投じる決断を下した。

一方の中村八段は、深浦九段の先手雁木を予想しつつ、チームメイトとの相談で「そこまで(時間を)使いたくない」と方針を固めていた。「すごく(時間を)節約されたら嫌だな(笑)」と言いつつも、「1か2か…いや、屋敷(伸之)先生を見習って2で行こう」とわずか2秒を提示。結果として、中村八段の2秒に対し、深浦九段の1分2秒となり、九州の控室はこの絶妙な駆け引きに大盛り上がりとなった。先手番を獲得した深浦九段だったが、対局開始時から持ち時間にちょうど1分もの大差がついてしまったことに、やや複雑な表情を見せていた。
対局後、中村八段は「相手がどれくらいの秒数で入札するかを広瀬(章人)九段にアドバイスいただいたところですね。結構な秒数を自分が先手番を得るには入札する必要がありそうだということに思い至りまして。まあそこまでして先手番を得るよりも、0秒とか2秒とかそれぐらいで、後手番で時間がしっかりあった状態で戦った方がいいのではないかという、攻めた後手番でいきました」 と、作戦の意図を明かした。
実際の対局は、深浦九段が得意の雁木を志向する展開に。作戦家の深浦九段が中村八段の得意形を巧みに避ける組み立てを見せ、序盤から激しい主導権争いとなった。持ち時間のビハインドを背負う深浦九段だったが、「やっぱり年齢が上の方なので、切羽詰まるとかなり慌ててしまうので、ちょっと時間に余裕を持ってっていうことを心がけました」 と、ベテランらしい落ち着きで闘志あふれる指し回しを展開。後手の堅陣を力強く破壊し、一気に流れを引き寄せて177手にも及ぶ大熱戦を見事に制した。深浦九段の執念とチームの結束力が光ったこの一局は、九州サザンフェニックスの予選突破を大きく引き寄せる決定打となった。
◆JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026 超早指しの『ABEMAトーナメント』と『地域対抗戦』が融合した新シリーズ。全国を6つの地域ブロックに分け、全8チームによって競う団体戦。各チームは監督1名とドラフト会議で指名された棋士4名の計5名で構成される。予選は4チームずつ2リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出。試合は5本先取の9本勝負で、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。今大会より「先手番入札制度」を採用。対局開始前に持ち時間を「競り」にかけ、提示した時間がそのまま対局時の持ち時間からマイナスされる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
