「AI画像は絶対に使わない」ユニリーバが W杯 マーケでも貫くブランド信頼

記事のポイント
ユニリーバ傘下のダヴ・メンはワールドカップに向けて数百人規模のクリエイターを起用し、1億5000万人超へのリーチをめざしている。
ローカライズされた大量のコンテンツをリアルタイムで供給するため、メガクリエイターとマイクロクリエイターを組み合わせた階層型戦略を採用している。
ユニリーバは「インフルエンサー・ファースト」戦略を推進する一方、AIは規模拡大の支援に活用しつつ、ブランド管理では人間同士の連携を重視している。
この製品ラインは、マーショーン・リンチやジョーダン・ウッズのようなメガクリエイターから、マイクロタレント層(フォロワー1万人〜10万人のクリエイター)まで、数百人のクリエイターを起用し、少なくとも1億5000万人の潜在視聴者にリーチすることをめざしている
少なくとも、ユニリーバの米国ダヴ・メン部門責任者であるジェイク・ハーシュ氏はそう期待している。
前回のワールドカップは決勝戦だけで約15億人の視聴者にリーチしたが、マーケターたちは、北米全土で48チーム・104試合にわたって繰り広げられるワールドカップの期間を通して、十分な量のコンテンツを生み出し続けることを求められている。
「コンテンツをローカライズし、消費者にとって関連性の高い瞬間に、関連性の高いコンテンツを届けるという発想は、きわめて重要だ」とハーシュ氏は述べ、こう付け加えた。「我々は、この巨大な文化的瞬間において、見逃されない存在になりたい」。
ロジスティクスを乗り切るためのクリエイター
ダヴはクリエイター戦略において階層的なアプローチを採用している。メガクリエイターには、自身のオーディエンスにブランドを認知してもらうためのリーチと認知度向上という役割が課される。
フォロワー数の少ないクリエイターには、ワールドカップ期間中にダヴがさまざまなオーディエンスの目に「いつでも、どこでも留まる」ような状況を同時に作り出すためのサポートを求められている。
ユニリーバのこのブランドは、インフルエンサーやクリエイターの起用にかかる金銭的な詳細は明らかにしなかった。ハーシュ氏によれば、ダヴ・メンは、優れたコンテンツをさらに後押しするために、クリエイターとインフルエンサー向けの予算を別途確保しているという。
ワールドカップは4年に一度開催される。それゆえ、世界最大のグローバルなスポーツマーケティングの好機ともいえる一方で、ロジスティクス上の悪夢でもある。米国、カナダ、メキシコの各地で数多くの試合が行われるのに加え、マーケターたちは、現地の試合やイベント、放送・ストリーミング、ソーシャルメディアにわたって存在感を示そうと取り組んでいる。
「(クリエイター戦略を使えば)トーナメント全体を通して関連性を保ち続けることができる。数カ月前に計画され、実行されてしまったデジタル広告の出稿では、もうその列車は出てしまっているようなものだ」と語るのは、VMLのスポーツマーケティング・体験型イベント・エンターテイメント部門であるVMLライブ(VML Live)でグローバル最高顧客責任者を務めるチャーリー・ウェイド氏だ。
クリエイター重複を防ぐAIとブロックリスト
ユニリーバは、同社CEOのフェルナンド・フェルナンデス氏が3月に「インフルエンサー・ファースト」戦略を発表したあと、30万人のクリエイターに大きな賭けに出た。
ダヴ、ヘアケアブランドのトレセメ(TRESemmé)、マヨネーズのヘルマンズ(Hellmann's)といったブランドを抱えるユニリーバのポートフォリオ全体で、これだけ多くのクリエイターを管理するのは大変なことだ。
クリエイターとの関係を管理する、そしてクリエイター同士のカニバリゼーションを防ぐために、正式なブロックリストや生成AIツールを使用する代わりに、ハーシュ氏は社内のチーム間のコミュニケーションに頼っている。
「我々は、AIベースのテクノロジーの役割を、規模拡大を助けてくれるイネーブラー(実現手段)と捉えている。ただし、クリエイターのコミュニティを強化し、我々のプログラム全体でブランドへの信頼を確保するうえでは、チーム間のコミュニケーションが不可欠だ」と、同ブランドの広報担当者は述べた。
クリエイター自身に関しては、クリエイティブ素材に使用されるAIはいずれも、個別に承認を得る必要があるとハーシュ氏は述べた。注目すべきは、ダヴが、実在する女性の代わりにAI生成画像を決して使わないという確固たる方針を掲げている点だ。この方針はダヴ・メンにも及ぶ、とハーシュ氏は付け加えた。
クリエイターを活用したスポーツマーケティングの定石
スポーツマーケティングは近年勢いを増しており、マーケターたちは、スポンサーシップの枠を超えて目立つための新たな方法を見つけることを迫られている。クリエイターの活用は、その選択肢のひとつにすぎない。
「かつては、ただ目に触れさせることがすべてだった。ある程度のマーケティング予算を投じ、どこかにロゴを貼り付けて、それが報われることを期待する、という具合だ」と語るのは、独立系のデザイン・クリエイティブコンサルタンシーであるブレットプルーフ(Bulletproof)でクリエイティブディレクターを務めるグレゴール・ジョンストン氏だ。
ジョンストン氏はこう付け加えた。「クリエイターやインフルエンサーを加えることで、顧客体験にさらなる価値を付加できる新たな道が開けたように感じる」。
[原文:Why Dove is betting on hundreds of creators for the World Cup]
Kimeko McCoy(翻訳、編集:藏西隆介)
Image/Unilever
