(※写真はイメージです/PIXTA)

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母子家庭で育ったYさん(23歳)は、経済的理由から私立理系大学への進学を諦めかけていました。しかし、無利子の第一種奨学金を利用して無事に志望大学に進学。大学で専門スキルを身につけた結果、大手IT企業に就職し、現在は月収約31万円のシステムエンジニアとして活躍しています。奨学金を活用して自らの可能性を広げ、初ボーナスで母親に温泉旅行をプレゼントするなど、親孝行を実現できた20代男性の事例を紹介します。

経済的な理由で諦めかけた理系大学への進学

「学費の高い理系の大学に行きたいなんて、口が裂けてもいえませんでした。高校時代は進路のことでずっと悩んでいましたね」

都内の大手IT企業でシステムエンジニアとして働くYさん(23歳)は、当時の心境をそう振り返ります。Yさんは幼いころに両親が離婚し、母親の収入だけで育てられました。Yさんは工学部への進学を希望していましたが、私立の理系大学となれば年間150万円以上の学費がかかります。

毎日の生活費を切り詰めて自分を育ててくれる母親の姿を見ていたYさんは、高校卒業後は就職するか、学費の安い専門学校へ行くしかないと考えていました。しかし、Yさんの高校の担任教師が提案してくれたのが、日本学生支援機構の「第一種奨学金(無利子)」の利用でした。

第一種奨学金の対象は、特に成績が優秀で経済的に修学が困難な学生。Yさんはこの制度を利用するため、必死に勉強をして高校トップクラスの成績を維持しました。

そして、Yさんは無事に大学に合格し、無利子で月に5万円強の奨学金を借りられることになりました。母親は泣いて喜んでくれたそうです。

「もし奨学金がなかったら、間違いなく大学には行けなかったです」

支えてくれた母親に初ボーナスで温泉旅行をプレゼント

Yさんは学業とアルバイトを両立させながら、真面目に大学を通い続けました。専門的な知識と技術を身につけたYさんは、卒業後に念願だった現在の大手IT企業にエンジニアとして就職することができたのです。

現在のYさんの月収は約31万円。業績に応じたボーナスも支給されるため、毎月約1万5,000円の奨学金返済もまったく苦になりません。利息もないので、借りた分だけを計画的に返していけばいいという安心感もあります。

「初めてのボーナスで、母親を温泉旅行に連れて行きました。今までずっと苦労をかけてきたので、やっと少しだけ恩返しができた気がしたんです。母さん、ありがとう。って心から感謝を伝えました」

もしあの日、お金を理由に大学進学を諦めていたら、今の充実した仕事も安定した生活も手に入っていなかったとYさんは語ります。

「奨学金のおかげで、自分の将来の可能性を狭めずに済みました。しっかり稼げるようになったので、これからは繰り上げ返済も視野に入れつつ、母親にもっと親孝行をしていきたいです」

Yさんにとって奨学金は、未来を切り拓き、家族を笑顔にするための救済措置だったのです。

奨学金が果たす本来の役割

奨学金は多くの学生にとって欠かせない、進学のセーフティーネットとして機能しています。

日本学生支援機構(JASSO)によると、日本の大学で学ぶ学生のうち、およそ3人に1人(31.7%)が同機構の奨学金を利用して学費や生活費を工面しています。とくに理系学部など学費が高額になるケースでは、世帯収入だけでは進学費用を賄いきれない家庭が少なくありません。Yさんのように、経済的な理由から進学を断念せざるを得ない若者を救済する手段として、奨学金は重要な役割を担っています。

奨学金には大きく分けて、利息がつかない「第一種奨学金」と、利息がつく「第二種奨学金」があります。第一種は無利子であるため返還総額が膨らむリスクがなく、社会に出てからの家計管理が計画的に行いやすいという大きなメリットがあります。ただし、貸与を受けるには一定の学力・家計基準をクリアしなければなりません。

近年、奨学金の返済苦や滞納といったネガティブな側面がメディアで取り上げられがちですが、本質的には意欲ある若者の「学ぶ権利」を保障し、将来の選択肢を広げるための制度です。

Yさんのように、奨学金を正しく活用して専門的なスキルを身につけ、社会人としてしっかりと自立して返済を続ける若者も数多く存在します。奨学金制度が、次世代の若者たちの才能を開花させるための有効な投資となっていることが、こうした事例からも伺えます。

[参考資料]

日本学生支援機構(JASSO)「奨学金事業に関するデータ集」