恒星間天体「3I/ATLAS」から豊富なアルコールを検出 アルマ望遠鏡による観測成果
アメリカン大学のNathan Rothさんたち研究チームは、チリの電波望遠鏡群「ALMA(アルマ望遠鏡)」を用いた観測により、太陽系外から飛来した恒星間天体「3I/ATLAS(アトラス彗星)」から多くのメタノール(CH3OH、アルコールの一種)が検出されたとする研究成果を発表しました。
彗星の中心部である「核(彗星核)」が太陽の熱で温められると、ガスや塵(ダスト)が放出されて「コマ」と呼ばれる淡い一時的な大気を形成します。このコマの成分を詳細に分析した結果、太陽系の彗星とは異なる化学的な特徴が明らかになったといいます。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌The Astrophysical Journal Lettersに掲載されています。

太陽系の彗星とは異なる化学的な特徴
2025年7月に発見された3I/ATLASは、2017年に発見された「1I/‘Oumuamua(オウムアムア)」、2019年に発見された「2I/Borisov(ボリソフ彗星)」に次いで確認された、3番目の恒星間天体(他の恒星系から飛来した天体)として注目されています。これまでにHST(ハッブル宇宙望遠鏡)やすばる望遠鏡など、地上や宇宙の様々な望遠鏡や探査機を使った観測が行われました。
研究チームは2025年8月から10月にかけて、ALMAを用いて太陽に接近しつつある3I/ATLASを観測。彗星でよく観測されるメタノールとシアン化水素(HCN)に注目してデータを分析した結果、3I/ATLASはシアン化水素に比べてメタノールの割合が高いことが判明したといいます。
論文によれば、3I/ATLASのシアン化水素に対するメタノールの割合は9月12日の観測では約124倍、9月15日の観測では約79倍に達します。既知の太陽系の彗星におけるメタノールの量は平均してシアン化水素の約26倍であり、3I/ATLASはメタノールが豊富な部類に入るとされています(※)。
※…論文では、太陽系の彗星でこれまでに最も高い割合のメタノールが検出されたのは「C/2016 R2 (Pan-STARRS)」の約280倍で、3I/ATLASのメタノールの割合はそれに次ぐ量だと述べられています。

コマの中の「ミニ彗星」からのガス放出
また、ALMAの高い解像度によって、分子が彗星からどのように放出されているのかも明らかになりました。
研究チームによると、シアン化水素は太陽系の彗星と同様に、3I/ATLASの核から直接放出されているように見えます。一方、メタノールは核からだけでなく、コマを漂う氷の微粒子からも放出されていることがわかりました。太陽に近づくにつれてコマの中の微粒子が温められることでガスが生じ、まるで“ミニチュア彗星”のようにメタノールを放出していると考えられています。
恒星間天体において、このような詳細なガスの放出プロセスが観測されたのは今回が初めてだといいます。
太陽系外の天体形成に関する手がかりに
RothさんはNRAO(アメリカ国立電波天文台)のプレスリリースに寄せたコメントで、「3I/ATLASの観測は、別の惑星系から指紋を採取するようなもの」であり、「太陽系の彗星では普段見られないような形でメタノールに満ち溢れています」と語っています。
なお、以前行われたJWST(ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)による3I/ATLASの観測では、この彗星が太陽から遠く離れていた時点で、コマに二酸化炭素が豊富に含まれていることが示されていました。今回の豊富なメタノールの検出は、3I/ATLASを構成する物質が太陽系の彗星とは異なる環境下で形成されたか、あるいは異なる進化の過程をたどったことを示唆しています。
別の惑星系で誕生し、太陽系に飛来した3I/ATLASのような恒星間天体を形作る物質を直接調べることで、太陽系外の惑星系における天体の形成についての理解がさらに深まると期待されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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