関連画像

写真拡大

京都大学キャンパス内の立て看板(通称「タテカン」)が撤去されたことをめぐり、教員らで構成する京都大学職員組合が大学と京都市を訴えた裁判の控訴審判決が2月26日、大阪高裁であった。大阪高裁は一審に続いて、職員組合の請求を退けた。

職員組合は長年、キャンパス内に立て看板を設置してきたが、大学が2018年5月、構内の立て看板を一斉撤去した際、組合の看板も撤去された。組合側は違法だとして2021年4月に提訴した。一審の京都地裁は2025年6月、請求を棄却し、組合側が控訴していた。

控訴審で組合側は、2008年まで総長をつとめていた尾池和夫氏が、自身の在任中は立て看板の掲示を認めており「労使慣行として成立していた」とする陳述書を提出。しかし、大阪高裁は、尾池氏の陳述は「個人的な感想」にとどまるとして退けた。職員組合側は「ありえない判決」と上告する構えだ。(ジャーナリスト・田中圭太郎)

●約20秒で閉廷した控訴審判決

この日の判決は、裁判長が「本件控訴を棄却する」と主文を読み上げただけで、約20秒で閉廷した。敗訴した職員組合は高裁前で「不当判決」と書かれた紙を掲げた。

その後、職員組合と弁護団は大阪市内で報告集会を開き、委員長の坂梨健太准教授が声明を読み上げた。

「本件ではおよそ法に基づいた裁判がおこなわれておらず、日本全国に知られていた京大におけるタテカンの承認という明白な歴史的事実自体が否定されました。京大職組はこの誤りを示すために上告して最高裁判所で争う予定です」

この訴訟で、職員組合は大学と京都市に対し連帯して慰謝料330万円、大学に対してさらに220万円の支払いを求めている。実質的には、立て看板撤去の違法性を問う訴訟と位置づけている。

一審の京都地裁は、職員組合に立て看板を設置する権利は認められず、労使慣行も成立していないなどとして請求を棄却。控訴審も一審判断を相当とした。

●元総長の陳述を「個人的な感想」と判断

控訴審で、職員組合側が争点としたのは、(1)表現の自由の侵害、(2)組合に対する不当労働行為、(3)手続きを経ない撤去の違法性──だった。

不当労働行為について、組合側は、2020年7月の団体交渉で当時の理事が立て看板を労使慣行と認めたと主張。また、尾池氏の陳述書などを提出した。

尾池氏の陳述書は、学部長、副学長、総長のいずれの時期も立て看板の設置を認め、「労使慣行は成立していた」とする内容だった。組合側は尾池氏の証人尋問も申請したが、却下された。

しかし、判決は「労使慣行に基づくものとして大学に容認されていたとは認められない」と判断。尾池氏の陳述についても、立て看板一般に関する「個人的な感想」にすぎないとした。

この点について、弁護団の寺本憲治弁護士は「陳述書は尾池先生と一緒に練り上げたもの。それを個人的な感想と言われたのは、非常に残念というか、悔しい思いだ」と述べた。

また、表現の自由についても、判決は「不当に制限される結果を招くともいえない」とし、他の争点も一審判決を維持した。

●立て看板撤去は管理強化を強めた時期と重なる

京都大学の立て看板は「タテカン」と呼ばれ、長年にわたりキャンパスやその周辺に多数設置されてきた。大学は京都市から屋外広告物条例に抵触するとの行政指導を受けたとして撤去を実施した。

しかし、職員組合は条例に抵触しない場所に設置した看板も、わずか3時間後に撤去されたと主張する。

提訴時に「京都大学のタテカン文化を取り戻したい」としてクラウドファンディングを展開したところ、訴訟費用として約300万円が集まった。学生や地域にとっても関心が高い裁判となっている。

立て看板撤去は、大学が管理強化を強めた時期とも重なる。2017年には学生寮「吉田寮」に対して全寮生の退去を求め、その後訴訟に発展。2025年8月に和解したが、大学と寮自治会の話し合いは進展していない。

●控訴審判決当日は入学試験2日目だった

さらに京都大学は2025年12月、10兆円規模の大学ファンドの運用益が配分される「国際卓越研究大学」の候補に選ばれた。

認定条件の一つは、京都大学の研究の伝統でもある約1000の小講座制を解体し、約40のデパートメントに再編すること。このデパートメント制への移行によって、教授会のあり方にも影響が及ぶ可能性がある。

報告集会で、副委員長の細見和之教授は「管理強化の流れの中で、国際卓越研究大学の採択がもっと大きなものとなって来る。そういう大きな流れの中で、タテカンとか表現の問題をどう考えるかをしっかり提起していかないといけない」と語った。

職員組合は上告する方針だ。一方、京都大学は判決当日が入学試験2日目にあたり、この日は取材対応ができないとした。