“騒音トラブル”に幸せな結末は本当にある…「顔も知らない迷惑な隣人」と対面して変わったのは“自分自身”だった
集合住宅で起こる住民トラブルのなかで最も多いものといえば、騒音問題だろう。だが、この難問、解決できることもあるという。2月12日、Xユーザー「日没」氏が聞いた話を紹介した投稿が反響を呼んだ。高齢女性が下の階の小さい子がいる家族に騒音のクレームをつけたところ、その家族が菓子折りをもって総出で謝罪に来た。以降もこの一家は女性と顔を合わせるたびに、迷惑をかけていないか確認していたという。すると、女性は自分が神経質過ぎた、と感じるようになり、一件落着したそうだ。【取材・文=中川淳一郎】
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心の中に変化が
日没氏は「顔も知らんクソガキと非常識な若夫婦!から、よく挨拶しに来てくれる律儀な夫婦と可愛いお子さん、に印象が変わったんだろうな」と分析しているが、まさにコレなのである。

というのも、私自身も同じ体験をしたからだ。私の場合、「上の階に住む一家」の3〜4歳の女の子が、朝の5時台後半から保育園へ行く前の7時台までドタドタと走り回り、この音で起きてしまうことがたびたびあった。休日は時間帯こそ異なるものの、騒音は平日と変わりない。これが1年にわたって毎日続き、すっかり参った私は、昨年2月、上の階のお宅のポストに「朝早い時間に走り回るのは控えていただけませんでしょうか」と書いた紙を入れた。
その日の夕方も走る音はやまないため、「こりゃあ明日の朝も思いやられるぞ……」とそのお宅へ足を運んだ。すると一家4人(1歳ぐらいの男の子を父親が抱いていた)が玄関まで姿を現した。女の子には「こんにちはー」と手を振った。そこから「やめてくれとは言わないが、せめて朝早い時間は少し抑えてほしい」と伝えた。先方は「申し訳ありません」と言った。
以来、朝のドタドタ音は少し減った。すると、自分の心の中に変化が生まれてきたのだ。自分は子育て経験がないから分からないが、小さな子は走ることが成長には非常に重要なのではないだろうか、と。それを抑えるようお願いしてしまったのはなんと心が狭く、神経質だったのだろう、と。母親には「静かにしなさいと言ったでしょ!」と朝の準備が忙しい時間に言わせて心を削らせているのでは。それに加えてあの夫婦は子育てという尊いことをしているのに、なぜ慮ることができなかったのか……。
今日も元気に走っとるな
すると、今度は自分こそ謝罪せねばならないのだろうか、という気持ちになったのである。その気持ちが芽生えてから数日後からの3週間は海外へ行ったが、その間一家に謝罪できないことをやきもきするようになった。そして3月に帰国した後、母親と姉弟と外で会った。私はすぐに母親に軽く会釈をし、姉に手を振った。母親は「桜が咲いてきましたね」と私に言ってきた。
若干緊張しているようにも見えたが、そりゃそうだろう。クレーマー男と今対峙しているのだから。そこで私は頭を下げ「この前はあんな不躾なことを言ってしまい申し訳ありませんでした。これからは好きなだけ走り回ってください。今はまったく気になりません」と伝えた。
今後、弟も走り回ることが想定されたがそれはどうでも良かった。とにかく自己嫌悪から抜け出したかったのである。この時以来、母親と私は会うと笑顔で挨拶をするようになった。
1年以上経った現在でも「朝の運動会」は続いているが、正直、気にならなくなったどころか「オッ、今日も元気に走っとるな」と思うようになった。冒頭の「日没」氏が分析するように、顔を合わせることで、印象がガラリと変わったのだ。「謎の騒音一家」が「丁寧な夫婦と、すくすく育つ可愛い姉弟」になった。
もちろん「話せばわかる」ばかりではない
というわけで、集合住宅の生活音が気になる人は、一度顔を合わせて「少しだけ配慮してもらえますか?」と言うと相手によっては迷惑だと感じる心がス〜ッと引いていくかもしれない。
ただし、一人暮らしの大人が連日宴会三昧だったり、大音量で深夜に音楽をかけたりしている、などの場合は管理会社を通した方がいい。今回の件はあくまでも子どもがかかわっていたので無事着地したが、大人だと何があるかは分からない。
騒音を巡っては、悲惨な結末を迎えるケースも存在する。1974年に神奈川県で起きた、ピアノの音が原因で殺人事件に発展したケースが有名だ。2021年にも大阪府大東市にあるマンションで、上の階に住む男が下の階の女子大生を失血死させたうえ、部屋に放火した事件もある。顔見知りになることで互いに相手を尊重するケースを今回紹介したが、「話せばわかる!」という相手ばかりではないことは覚えておきたい。
ネットニュース編集者・中川淳一郎
デイリー新潮編集部
