1月31日、乗馬の際に手を振る場面もあったという

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英国での“主役”は2人

 英バッキンガム宮殿は現地時間9日、アンドリュー「元王子」ことアンドリュー・マウントバッテン=ウィンザー氏に関する疑惑の高まりについて、チャールズ国王が「深い懸念を表明している」と明らかにした。この異例の声明は「アンドリュー氏本人が対処すべき」としつつも、「警察の要請があれば当然ながら(宮殿は警察を)支援する」と述べている。

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 この展開に至った要因は、1月末に米国で追加公開されたエプスタイン文書だ。全体は電子メール記録や裁判文書、FBI情報提供者の証言、宣誓供述書、メディア記事の写し、SNSのスクリーンショットなどで構成され、追加公開分には300万枚以上の文書と画像、動画が含まれている。

1月31日、乗馬の際に手を振る場面もあったという

 これらはジェフリー・エプスタイン元被告(獄中で自死)の性犯罪について、米捜査当局が証拠資料として収集したものだが、すべてが“事実”として保管されたものではなく、各文書についての解説なども用意されていない。海外メディアは実際に文書を確認し、内容を独自に精査しているため、追加公開により浮かんだ疑惑は五月雨式に報じられている。

 米国では元米大統領のビル・クリントン氏や言語学者のノーム・チョムスキー氏、実業家のビル・ゲイツ氏とイーロン・マスク氏といった面々が、エプスタイン元被告との浅からぬ関係を取りざたされている。一方、英国での“主役”は前駐米大使のピーター・マンデルソン氏とアンドリュー氏だ。

衝撃的な写真の数々

 アンドリュー氏は昨年10月、「自身の称号と授与された名誉(職)」の不使用、すなわち返上を宣言した。「王子」の称号は保持されるとみられていたが、結局は剥奪となり、現在は「元王子」である。

 当時のもっとも大きな疑惑は、2001年にエプスタイン元被告の仲介で17歳だったバージニア・ジュフリーさん(昨年4月に自死)に行為を3度強要したというものだ。その証拠として、アンドリュー氏とジュフリーさんのツーショット写真はあまりに有名だが、アンドリュー氏は「合成写真」と反論していた。だが、今回公開された文書では、エプスタイン元被告の共犯者が電子メールの中で写真に言及していた。つまり、写真は本物と確定したのだ。

 電子メール記録からは他にも、アンドリュー氏がエプスタイン元被告をバッキンガム宮殿のディナーに誘ったり、エプスタイン元被告がアンドリュー氏と思われる「公爵」に「賢く、美しく、信頼できる」26歳のロシア人女性を紹介したりと、親密な関係が浮かび上がっている。2019年のテレビインタビューで発言した「2010年末の時点で縁を切った」という内容も嘘だったことが確定した。

 文書に含まれていた写真もインパクトが強い。アンドリュー氏と思われる男性が、横たわった女性の上で四つん這いになっている姿や、その女性の腹部に手を置いている姿、椅子に座った女性たちの膝上で寝転がっている姿など、見ている側が恥ずかしくなるほどだ。

 さらに別の文書からは、女性ダンサー1人に対してエプスタイン元被告とともに「さまざまな行為」を要求したという主張が見つかっている。もう今度こそ一巻の終わりでは……と思える状況だが、残念ながら話はまだ続いてしまうのだ。

悪化する「中国関連の疑惑」

 2月9日に報じられた新たな疑惑は情報漏洩だった。アンドリュー氏が10年にわたり英国の貿易大使(貿易・投資担当の英国特別代表)を務めた際、香港やシンガポール訪問などの公式報告書と投資関連のレポートをエプスタイン氏に流していたというものだ。追って、そこにアフガニスタンの投資機会に関するレポートも含まれていたことが判明した。

 たとえロイヤルファミリーでも貿易大使としての守秘義務がある。だが電子メール記録からは、アンドリュー氏が受信の5分後にエプスタイン元被告へレポートを転送していたことがわかった。冒頭でバッキンガム宮殿が表明した「警察への支援」は、反君主制団体「リパブリック」が本件を公職の不正行為として警察に告発したことを受けている。

 アンドリュー氏が英国の国家安全保障における急所となっている疑惑は、これが初ではない。エプスタイン疑惑で金銭的な危機に見舞われた際にはMI5が「スパイ」と目した中国人実業家と接近し、後に「その人物とは縁を切った」とこれまた釈明する羽目に陥った。

 中国関連疑惑は今回の追加公開でも続いている。エプスタイン元被告は2015年11月、LinkedInの共同創業者リード・ホフマン氏に送ったメールで、「アンドリュー王子は中国へ向かっている。彼は習主席とかなりの時間を過ごした」と記していた。アンドリュー氏と習近平氏の公式会談は2016年4月と2018年5月の2回で、このメールが送られた時期ではない。

アンドリュー氏どころではない英国政府

 すべての行動が英国のマイナスにしかならないという絶望的な「元王子」。チャールズ国王が要求していた“質素な家に引っ越し”の件だけは、2月2日に退去が確認された。現在は王位継承順位からの除外や生活費の見直しなど、さらに厳しい対応を迫る声が高まっている。

 だが、現在の英国はアンドリュー氏の処遇よりも喫緊の課題がある。エプスタイン文書における英国のもう1人の主役、与党労働党の重鎮・マンデルソン氏の件だ。昨年9月に駐米大使を解任された理由はエプスタイン元被告との交友関係だが、今回の追加公開により、英国政府の機密情報をエプスタイン元被告に流していた疑惑が浮上。マンデルソン氏は労働党を離党し、貴族院議員も辞任した。

 改めて任命責任を問われたキア・スターマー首相は、5日の演説でエプスタイン元被告の被害者たちに謝罪。マンデルソン氏の嘘を信じて駐米大使に任命したなどと釈明した。8日には、マンデルソン氏を駐米大使に推した首席補佐官のモーガン・マクスウィーニー氏が辞任している。

 この一件には労働党からも激しい怒りの声が上がり、スターマー政権は窮地に陥っている。スターマー氏は先に、アンドリュー氏に米議会での証言を促すような発言をしたが、今となっては似たり寄ったりか。アンドリュー氏の処遇が決まるよりも先に、政権へのダメージが修復不可能になるのではという予測もある。

デイリー新潮編集部