なぜ今「ロゴなしバッグ」が選ばれている? LVMH 失速の裏で進む、静かな主役交代

記事のポイント
価格高騰とロゴ疲れを背景に、高品質ながら手頃な価格帯の新興バッグブランドが支持を集めている。
誰もが知るロゴよりも、「知る人ぞ知る」個性や独自のスタイリングにステータス価値が移行した。
新興勢は広告費を抑えて品質に還元し、製造背景や物語性を重視することで賢い消費者の共感を得る。
価格高騰とロゴ疲れを背景に、高品質ながら手頃な価格帯の新興バッグブランドが支持を集めている。
誰もが知るロゴよりも、「知る人ぞ知る」個性や独自のスタイリングにステータス価値が移行した。
新興勢は広告費を抑えて品質に還元し、製造背景や物語性を重視することで賢い消費者の共感を得る。
ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)のバッグを選ぶのに、ファッション通である必要はない。そもそもボッテガブランドのバッグは、ファッション通の選択肢から外れつつある。
こうした背景により、パーカー・サッチ(Parker Thatch)、リフナー(Liffner)、サヴェット(Savette)、マヌ・アトリエ(Manu Atelier)、デメリエー(DeMellier)、ポレーヌ(Polène)などのブランドが台頭した。さらにケイト(Khaite)やトーテム(Toteme)といった、「クールな女性」を象徴する旬のファッションブランドのバッグも人気がある。
インフルエンサーやサブスタッカーなど、現代ファッション界の「権威」による支持も、これらブランドへの追い風となっている。
価格競争力と大手ラグジュアリーの苦戦
2013年に帽子ブランドとして発足したジャネッサ・レオネ(Janessa Leoné)は2026年1月、ハンドバッグブランド「ザ・レオネ(The Leoné)」を正式に発表した。ジャネッサ・レオネは同名の創業者名を冠したザ・レオネについて、ブランドを象徴するハンドバッグになると期待を寄せる。
ザ・レオネの価格はサイズによって897〜1297ドル(約14万2000円〜約20万5000円)で、直販(D2C)チャネルとeコマースサイトのモーダ・オペランディ(Moda Operandi)で販売した。モーダ・オペランディではすでに3回の完売を数え、発売から48時間で2色が売り切れた。
Glossyでは1月初め、レオネバッグの貢献により、レオネが2026年に3桁成長を見込んでいると報じた。
リフナーのバッグはネッタポルテ(Net-a-Porter)をはじめ、ショップボップ(Shopbop)やサックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)で販売され、価格帯はおよそ395〜745ドル(約6万2000円〜約11万8000円)だ。一方パーカー・サッチのバッグは428〜1200ドル(約6万7000円〜約19万円)の価格帯で、主に直販(D2C)を通じて流通しているが、少数の専門ブティックでも取り扱いがある。
対照的にボッテガの象徴的な「アンディアーモ(Andiamo)」シリーズの一部製品はおよそ5100ドル(約80万6000円)であり、ザ・ロウ(The Row)のハンドバッグ「マルロ(Marlo)」の場合、価格帯は3400〜5800ドル(約53万7000円〜約91万7000円)だ。また2025年に人気を博したルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のバッグ「スピーディ(Speedy)」は、1730〜5000ドル(約27万3000円〜約79万円)という価格設定だ。
ルイ・ヴィトンなどを擁するLVMHの決算報告によれば、2025年上半期において、衣料・皮革製品の売上高が前年同期に比べ8%減少したという。同部門はLVMH全体の収益の半分近くを占める主力事業だ。さらにケリング(Kering)でも同年上半期、傘下のグッチ(Gucci)とサンローラン(Saint Laurent)はそれぞれ、売上高が前年同期比26%減(グッチ)、同じく11%減(サンローラン)となった(ただしこれは、皮革製品に限定した数字ではない)。
「ロゴ」から「スタイリング」への価値観のシフト
従来のラグジュアリー・ブランド以外のブランドが、「クール」さを象徴するバッグの発信元になる傾向は強まる一方だ。サブスタックの「ル・キャッチ(Le Catch)」を手がけるインフルエンサー、マーリーン・レントミースター氏は、「(小規模でニッチなブランドのバッグを使う方が)より事情通になった気分になれる」と語る。
同氏は以前、パーカー・サッチやクレールビビエ(Clare V.)とコラボレーションを行った実績を持つ。レントミースター氏自身のショップマイ(ShopMy)では最近、トリーバーチ(Tory Burch)やメイドウェル(Madewell)に加え、リフナーやパーカー・サッチなど非伝統的な高級ブランドのバッグを取り上げている。
「こうした新興高級ブランドは『知る人ぞ知る』存在であり、そのこと自体がステータスなのだと思う」とレントミースター氏は指摘し、「我々はロゴであるとか、どこにでもある画一性に食傷気味だ。誰もが同じバッグで代わり映えがしない。それは退屈でおしゃれには程遠く、個性や独創性が伝わらない」と付け加えた。
より手頃な価格帯への移行は、一部の人々にとって、以前なら手の届かなかった「イット・バッグ(流行のバッグ)」が買えるようになったことを意味する。また別の人々にとっては、単に購入できるバッグの数が増えるという意味でもある。
レントミースター氏によれば、「今は(コングロマリット系ハイブランドの)バッグひとつの値段で、本当にクールなバッグが3つ買える」という。また同氏は、現在本当の価値を持つのはロゴではなくスタイリングだと指摘し、「高額な品と安価な品をどう組み合わせるか、あるいは黒一色の装いにどう差し色を効かせるか。今やロゴ満載のバッグよりも、そうした着こなしの方が重要であり、価値がある」と語った。
レオネ氏も同意見だ。「人々は群衆に埋没したいわけではない。新しいものを見つける人であること、そして他人と被らないものを持つことは、ある種の特別感を示すシグナルになる」と同氏は述べた。
老舗と同じ工場、しかし「ブランド料」の上乗せはなし
レオネ氏によれば、自分自身によく似たターゲット層を念頭に、新作バッグをデザインしたという。たとえば大きいサイズのザ・レオネバッグは、働く女性にとって実用的で、ノートパソコンが収納できる。
「誰もが身に着けるものを通じ、アイデンティティを見いだそうとしている」とレオネ氏は語る。また現在の高級ブランドの価格設定は、時に「悪い冗談」のように感じられるとし、「新興ブランドでも同等の品質を得られると分かれば」なおさらだと指摘する。
同氏によれば、ザ・レオネバッグの生産を行うのは老舗高級ブランドと同じ工場だという。それでも価格を抑えて販売できるのは、コングロマリット系ブランドのように、マーケティングに大金を費やさないからだと同氏は説明した。
その一方でレオネ氏は話題作りのため、コートニー・グロウ氏、ケリー・ピエリ氏、ココ・シファー氏、クロエ・セヴィニー氏、ダニ・ミシェル氏ら、選り抜きのインフルエンサーや流行の仕掛け人にバッグを贈呈している。
「成し得る限り最高品質のハンドバッグを製造しているのだから、そこには価値がある」とレオネ氏は胸を張る。「我々の価格帯は1300ドル(約20万5000円)。依然としてラグジュアリーな金額だが、(老舗ブランドのような)ブランド料の上乗せはない」。
「物語」と「透明性」を求める新たなラグジュアリー
次にリフナーを見ていこう。同ブランドは2012年、リトル・リフナー(Little Liffner)としてポーリナ・リフナー・フォン・シドウ氏が立ち上げたブランドだ。「イット・バッグ」文化の潮流に逆らうバッグ作りに着想を得た点で、同氏は現在の時流を先取りしていた。
「自分の肌感覚やスタイルに十分自信があり、センスがあると証明するためにラベルを見せびらかす必要はない、そんな人のために何かを作りたかった」と同氏は振り返る。ロゴのないバケットバッグやピロー・ポーチバッグが売れ筋だ。
そして創業2001年、バッグ参入2009年のパーカー・サッチでは、共同創業者のアイリーン・チェン氏がラグジュアリーの真の意味について考えを巡らせてきた。「かつては『裕福だからセリーヌ(Celine)を身に着ける』という感覚だったのかもしれない」とチェン氏は言う。
しかし今の消費者は、自分のひいきブランドについてより深く考え、たとえばそのブランドの背景にあるストーリーにも目を向けるというのが、チェン氏の見解だ。同氏自身がそうであるように。パーカー・サッチの製品が少量生産の米国製であるという点は、ブランドの物語の重要な部分だとチェン氏は付け加えた。
チェン氏の夫で共同創業者のマシュー・グレンビー氏は、「ロゴを目当てにブランドを欲しがる層はたしかにいるし、今後もずっと存在し続けるだろう」と語る。「しかし、美しさや品質の高さでバッグを選ぶ人たちは、やや幻滅し始めているように感じる。彼らは(高級ブランドの)品質が低下する一方で価格が上昇していると感じ、足元を見られているような気分になっている」。
2025年には一部の高級ハンドバッグについて、実際の製造拠点が中国にあり、欧州でラベルを付け替えただけと主張する動画が、TikTokで拡散した。これは大きな注目を集め、米国公共ラジオ放送(NPR)でも取り上げられた。
これは世界的なサプライチェーンや高級品の価格設定、「製造地」の意味を巡る議論を巻き起こし、新興ブランドの参入余地を生み出した。
人々は「価値がありデザインの良いもの」を求めているとレオネ氏は言う。「バッグは常にステータスであり続ける。手に持つものであり、何かを語りかけるものだからだ」。そして多くの人にとって、その語りかけてくる内容は変わりつつある。
[原文:The new luxury bag is indie]
Sara Spruch-Feiner(翻訳:竹内杭/ガリレオ、編集:京岡栄作)
