習近平国家主席マジ切れ! 「高市首相許すまじ」と中国が日本に恫喝を繰り返す「苦しい事情」

写真拡大 (全7枚)

「日本に最大限譲歩してやった」

「トップがさらに強烈なメッセージを出せば、中国による日本への圧力はエスカレートするでしょう。しかし経済的なダメージは、それほど大きくない。中国が行っているのは、派手な音を出しながらも痛みは少ないプロレスの平手打ちのようなものです」

こう語るのは、中国情勢に詳しいジャーナリストの高口康太氏だ。

中国が日本に対し、異様ともいえる恫喝(どうかつ)行為を繰り返している。駐大阪総領事が高市早苗首相(64)に対し〈汚い首は斬ってやる〉とSNSへ投稿。協議後に外交官がポケットに手を突っ込んで現れ日本の要人を見下すような態度をとる。日本人アーティストのコンサートを突然中止に。さらに自衛隊機に向け約30分間にわたりレーダー照射……。中国の一連の挑発行動と緊迫する日中関係については、文末の表に時系列でまとめた。

発端となったのが、昨年11月7日に高市首相が衆議院予算委員会で述べた答弁だ。中国が台湾に武力行使すれば日本の「存立危機事態になりうる」と発言。これに対し習近平国家主席(72)がマジ切れしているという。

「一つの中国」を目指す習氏にとって″台湾併合″は悲願だが、高市首相の発言が逆鱗(げきりん)に触れた理由は核心に触れたからだけではない。キヤノングローバル戦略研究所上席研究員で、中国研究センター長の峯村健司氏が話す。

「中国は保守色の強い高市政権誕生に、警戒感を強めていました。しかし政権発足直後の10月31日に韓国で行われたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で、習氏は日中首脳会談に応じたんです。中国としては『日本側の要請に最大限譲歩してやった』という感覚でしょう。

ところが高市首相は、首脳会談当日の夜にSNSへ〈台湾の代表と挨拶を交わした〉という趣旨の投稿。さらに国会で『台湾有事発言』をしたんです。習氏からすれば、顔に泥を塗られた形です。せっかくの厚意が踏みにじられ、神経を逆なでする言動をとられたのですから、習氏は本気で怒っていると思います」

「皇帝の意向を忖度」

メンツを潰(つぶ)されたボスが激怒――。この緊急事態に、大慌てしているのが中国の省庁、地方政府、国有企業だ。習氏の顔色をうかがい「日本憎し、高市首相許すまじ」と、恫喝行為を繰り返しているのだという。前出の高口氏が続ける。

「巨大な権力を手にした習氏は、中国で皇帝のような存在です。部下たちが習氏を慮(おもんぱか)り、皇帝の意向を忖度(そんたく)する雰囲気は日に日に強くなっている。’20年以降、中国では『1+N』という用語を頻繁(ひんぱん)に目にします。トップ(1)の号令に部下たち(N)が全力で従う、習氏への忠誠アピールを意味する言葉です。

高市首相の有事発言に対する一連の日本バッシングは、中国共産党指導部が指示しているわけではありません。指導部が表明するのは反発の意思のみ。表明を受け各省庁や企業が″自主的″に日本へ″制裁″を加えているんです。指導部に呼応し日本を叩かないと、習氏への忠誠心を疑われかねませんから」

例えば外務省の金井正彰・アジア大洋州局長との協議後に、ポケットに手を突っ込んで現れた中国外務省の劉勁松(りゅうけいしょう)・アジア局長の行為も「わざと日本高官へ無礼な態度をとった」パフォーマンスととれる。前出の峯村氏が解説する。

「私は劉氏に会ったことがありますが、とてもマジメで知日派の外交官です。普段は、ポケットに手を突っ込んで報道陣の前に現れるような人物ではありません。習氏へ向けたポイント稼ぎでしょう」

浜崎あゆみ(47)や大槻マキ(52)など、日本人アーティストのコンサート中止・中断も同様に現場の忖度だ。

「コンサートが中止される一方で動画では、中国にとって収入の大きい日本のアニメはあいかわらず配信され続けています。街に出れば『ちいかわ』や『ハローキティ』など、日本のキャラクターが溢(あふ)れている。日本叩きのパフォーマンスが優先され、実害の大きい行動は避けられているんです」(高口氏)

日本バッシングで思い返されるのが’12年9月に起きた騒動だ。当時、日本政府は尖閣(せんかく)諸島を国有化。中国側は猛反発し、大規模な反日デモが起きた。だが当時と現在では、中国経済の状況がまったく違うと高口氏は考える。

「当時、中国は経済の高成長が続いていました。強力な成長をバックに、中国は雇用を犠牲にしても日本に対して強気に出られたんです。暴徒化した反日デモの群衆は日本車をひっくり返し、不買運動を起こし、日系企業の工場を襲撃。日本経済に大ダメージを与えました。

現在の中国はバブルがはじけ、経済は停滞しています。例えば日本車の不買運動などが起きれば、関連する中国企業の業績や雇用にも悪影響が及ぶ。経済が停滞するなか、中国国内で実害が出るのを避けているのでしょう。大規模な反日デモが起きていないのも不況が理由です。中国当局は、集会開催を事実上禁止しています。群衆が集まれば経済状況への不満が爆発し、怒りの矛先が中国当局へ向きかねませんから」

「中国が中国人を苦しめる」

習氏を忖度するばかりで、パフォーマンスが先行する空虚な中国の日本叩き。ネット上では〈毒苗〉という言葉で高市首相を批判し〈日本はいまだに軍国主義〉などのコメントが拡散する一方、現実社会では日本への憧れが根強いという。

「以前、中国人が日本を旅行する目的はブランド品の爆買いや京都などの観光地を訪れることでした。今の流行は日本での日常生活を楽しむこと。例えば、安全かつ清潔で一人で食事ができるカフェなどは大人気です。中国は過剰な競争社会で、人々は日々ストレスにさらされている。一人でのんびりした時間を過ごせる日本の日常は、多くの中国人にとって理想のライフスタイルなんです」(同前)

だが、習氏の怒りに迎合する中国当局は日本への渡航自粛を訴えている。

「中国人が日本へ旅行しなくなり、最も困るのは同胞たちでしょう。多くの中国人旅行者が、日本に住む中国人による空港からの送迎サービスや経営する宿泊施設を利用しています。また旅行を手配するのは中国の代理店で、日本への移動で利用するのは中国の航空会社です。渡航自粛により、彼らが困窮することになる。中国当局が中国人を苦しめる結果になりかねません」(同前)

今後、中国による日本への恫喝がますます激しくなる可能性はあるのだろうか。前出の峯村氏が警鐘(けいしょう)を鳴らす。

「考えられるのが、中国にいる日本人ビジネスマンの身柄拘束です。中国では’23年4月に反スパイ法(反間諜法(はんかんちょうほう))が改正されました。以前は明確な諜報活動が確認されなければ身柄を拘束できませんでしたが、改正によりどんな行為も『国家に危害を与える』とみなされる危険があるんです。通常のビジネスワークを『スパイ行為』と言いがかりをつけられ、日本人が拘束されるかもしれません。習氏を怒らせたみせしめでしょう」

いくら日本への圧力がエスカレートしようとも、中身は″言いがかり″だ。背景にあるのは″空虚な理屈″である。

「省庁や国有企業が一丸となって動くので、中国全体が反日に染まっているようにみえますが、そうではありません。実は、中国人民の怒りは深くない。習氏の独裁体制下にある当局が『ボスが望む空気』を先回りして読み、中国経済への実害が少ない安全な方法でポイント稼ぎをしているだけなんです。彼らが恐れているのは、売国奴(ばいこくど)として皇帝から批判されるリスクなのですから」(高口氏)

中国の恫喝に大きな意味はない。「苦しい事情」で繰り返される圧力に、日本は過剰反応をする必要はないのだ。

『FRIDAY』1月30日・2月6日合併号より