(※写真はイメージです/PIXTA)

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長寿は喜ばしいことですが、それが経済的なリスクに直結する現代社会。親の寿命が延びるほど、それを支える子世代の負担も長期化しています。特に、独身で親を介護するケースでは、精神的・経済的な支え手が自分しかいないという重圧がのしかかります。

「まさか、ここまで引かれるとは…」初めての年金支給日に見た現実

「本当に容赦ないと思いました」

築40年を超える一軒家で、要介護2の92歳になる母・ミツコさん(仮名)と2人暮らしをしている佐藤健一さん(65歳・仮名)。大手企業の営業職で60歳の定年を迎え、その後は嘱託社員として働いてきましたが、母の介護が必要になったことや自身の体力の限界もあり、65歳で完全リタイアを選択しました。

現在、佐藤さんは独身。若い頃は仕事に打ち込み、結婚のタイミングを逃したといいます。しかし、その分「自分の老後資金と、母の面倒を見るくらいの蓄えはあるつもり」でした。

そんな佐藤さんも、ついに年金世代に突入。初めての年金支給日に思わずこぼれた言葉が冒頭のもの。佐藤さんの年金は、額面の月額が16万円強。ただ税金や社会保険料は、給与と同じく年金から引かれます。

「所得税に介護保険。今後、ここから国民健康保険料と住民税も引かれるようになるというじゃないですか。そうなると、13万円強……年金からもしっかり引かれることは知っていましたが、実際に目の当たりにすると、かなり凹みますね」

一方、母のミツコさんの年金は、国民年金のみで月額5万円ほど。

「母自身の医療費や介護費、さらにおむつ代など払ったら消えてなくなるばかりか、完全に赤字。結局、私の年金から補填しなきゃいけない」

さらに築40年を超える実家はあちこちガタがきており、修繕費もかさみます。住み続けることを考えると、大掛かりなリフォームは必須です。

「自分の老後だけでも結構お金がかかる。そのことを思うと不安になりますが、そこに母の負担まで……本人も『こんなに長生きするなんて』と笑っていますが、正直、私にとっても想定外です。まさか自分も年金を受け取るようになってから、親の介護に直面するなんて思ってもみませんでした」

年金「額面」と「手取り」のギャップが生む、老後破綻のリスク

厚生労働省『令和6年簡易生命表』によると、日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.13歳。女性は40年連続で世界1位だといいます。

平均寿命は「0歳の人が平均して何年生きられるか」を示す指標ですが、一方で「ある年齢の人があと平均何年生きられるか」という期待値である「平均余命」というものもあります。

同じく『令和6年簡易生命表』によると、女性の平均寿命である87歳の人の平均余命は7.15年。ミツコさんと同じ92歳であれば4.65年です。佐藤さんは、この先もしばらくは親の介護負担に頭を悩ませる可能性が高いといえるでしょう。

長寿化とともに、親の介護に携わる子の年齢も上昇。以前は50代で介護負担に直面する人が多かったのが、今では介護される親も介護する子も年金世代というケースも珍しくなくなってきました。

厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)受給権者の平均年金月額は、65歳男性で17万3033円、女性で11万4797円です。そこから税金や社会保険料が引かれて、実際の手取りは85〜90%になるとされています。介護を必要とする親を経済的にも支えるとなると、親子の年金だけでは心許なく、「共倒れ」も現実味を帯びてきます。

最悪の事態を避けるためにも、親が元気なうちから資産状況を把握し、利用できる公的扶助や減免制度(高額介護サービス費など)を漏れなく申請することが、まず、誰もができる防衛策といえるでしょう。