星街すいせい「私たちが今、折れないことが本当に大事」 過渡期のVTuberシーンを背負って活動する覚悟
例年通り、2025年もVTuber/アーティストとして大活躍を見せた星街すいせい。日本武道館公演『Hoshimachi Suisei 日本武道館 Live “SuperNova”』を筆頭に、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のタイアップソングのヒットや「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2025」に選出されるなど、その影響力は止まることを知らない。
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リアルサウンドでは毎年恒例となっている年始インタビューを行った。2025年の様々なトピックを振り返りつつ、“バーチャル”と“リアル”を越境して活動した日々を振り返ってもらった。(編集部/記事内ライブ写真=『Hoshimachi Suisei 日本武道館 Live “SuperNova”』より)
■2025年は、夢を叶えて、未来の準備をした1年
ーー星街さんにとって昨年、2025年はどんな1年になりましたか?
星街すいせい(以下、星街):念願の日本武道館公演を完遂したという意味では私にとって夢を叶えた年になりましたね。同時に、次への第一歩のための準備期間、充電期間にもなった1年だったと思います。
ーー充電期間というには、ずっと動き続けていた感じですけどね。
星街:あははは。確かにそうですね。去年はサンボマスターさんと対バンさせてもらったり、私がVTuberを始めるきっかけであるKizunaAIちゃんとライブで共演したり、いろいろなフェスに出演させていただいたりはあったんですけど、新曲を出す頻度はちょっと落ちてたんですよ。年始にアルバム(『新星目録』)リリースがあって、それ以降はアルバム曲のMVを出したりっていうのが主だったので。そういう意味での充電期間。とは言え、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』とのタイアップというありがたい大きなお仕事もあったんですけどね。今年はもっと新曲を出していきたいなと思っております。
ーー「次への第一歩」という部分に関しては、武道館公演を経て、明確なビジョンを持って動き出した感じもあるんですか?
星街:そうですね。自分の中ではふわっとしてた部分もたくさんあったんですけど、武道館を経たことでそこをしっかり明確にして、「じゃあ次はこんなことをしてみようか」みたいなことを決めた感じで。そこに向けて今、頑張っているところです。その最初の動きが2月に開催する武道館公演の再演ライブ『SuperNova:REBOOT』なんですけど。そこから星街すいせいの新章をはじめていけたらなって。
ーー「REBOOT」に関しては後ほどお話を伺いますが、現在の星街さんの中にある新章のイメージって具体的にどんなものなんですかね?
星街:それはね、まだ内緒です(笑)。しっかりしたイメージが自分の中にはちゃんとあるので、楽しみにしていてください。
ーーわかりました。では昨年の活動をいろいろ振り返っていけたらなと思うのですが、まずは今、お話に出た日本武道館公演。開催から約1年が経った今、あらためて感想を聞かせてください。
星街:デビュー以来、7年間にわたって夢として掲げてきた場所だったので、それが叶うことによってどんな気持ちになるのかが自分ではわからなかったんですよ。「燃え尽きちゃうんじゃないかな」とかっていう不安もあったりして。でも実際、武道館のステージに立ってみたら、ただただ一生懸命ライブをやることに集中できて、やり切った気持ちだけしかなかったというか。ある意味、武道館に立った実感があんまりなかったんです。でも、インタビューで武道館の感想を聞かれたり、周りの人や一緒にバンドで頑張ってくださったメンバーの方々から「武道館、良かったよ!」って言葉をもらえたりすることで、ちょっとずつ実感が湧いてきたんですよ。「私、本当に武道館に立ったんだな」っていう感情が、時が経つにつれて後から後から湧いてきたのは、すごく不思議な感覚でしたね。
ーーあまり実感がなかったのは、これまで積み重ねてきたものをしっかり持った上で、いつも通り気負うことなくライブに臨めたからなのかもしれないですよね。
星街:あー確かにそうかもしれない! 私にとって武道館は夢の場所ではあったけど、そこを終わりにはしたくなかったので、ある意味、気負わずに向き合えたことで一つの通過点としてのライブにできたのかなって今は思いますね。
ーー武道館に立ったことで新たに手に入れたものもありましたか?
星街:もちろんあります。先ほども言ったように、次への一歩へのビジョンを明確にすることができましたし、あとは「武道館に立ったぞ!」という勲章、自分にとっての特別なバッジみたいなものをもらえた感覚があります。メディアに出たときに「武道館にも立たれたアーティストですよ」みたいな紹介をしていただけるようになったことで、イロモノ感がちょっと薄まるというか(笑)。受け入れてもらいやすくなったかなって。それがすごくありがたい。
ーーライブにおけるパフォーマンス面でも武道館以降で変化したところもあります?
星街:武道館に立ったからというよりは、武道館までの道のりが大きかったなと思っていて。そこに辿り着くまでには、ノドの不調であったりとか、思い通りにいかないことがいろいろあったんですよね。でも、そこを乗り越えて武道館まで行けたことで、自分の中の殻をひとつ破れたというか。自分の中でくすぶっていたものを取っ払って次に進むための、大きなきっかけになったなとは思います。
ーーその後、4月には「もうどうなってもいいや」「夜に咲く」の配信リリースもありましたね。この2曲はアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』で使用され、大きな話題を集めました。
星街:それもまた、最初はあんまり実感がなかったんですよ(笑)。「ガンダムとのタイアップ、すごいな」「どんな反響があるのかな」みたいな気持ちで、ワクワク半分、不安半分みたいな感じでした。ただ、「もうどうなってもいいや」が挿入歌として使われた劇場先行版では、事前に私の曲が流れるという情報が出ていなかったのが、自分としてはちょっとおもしろかったなと思っていて。先入観なく曲を聴いた人が、後からバーチャルのアーティストが歌っている曲だと知ったときに、「全然馴染んでた」という感想をつぶやいてくれていて。フラットな状態で曲を聴いていただける機会をいただけたことは、自分にとってすごく嬉しくて、ありがたいことでしたね。
ーー2曲とも楽曲自体のパワーがすごく強いし、作品にもマッチしていたからこそ、多くの人に受け入れられたのは間違いないですよね。ご自身としても、楽曲の仕上がりには自信があったんじゃないですか?
星街:曲を提出した時には、「本当に選んでもらえるのかな?」みたいな気持ちも正直ありましたけどね。あまり期待しすぎないようにしよう、みたいな。「決定しました」って聞いたときも、「え、そんなことあるんだ⁉」って思ったし。もちろん、ものすごく嬉しかったんですけど。
ーー星街さんの中には、まだやっぱりVTuberであることに対しての引け目みたいな思いがあるんですかね?
星街:あると思いますね。もしかしたらイロモノとして見られて一線を引かれてしまう部分があるんじゃないかな、とか。わざわざVTuberに頼まなくても、普通のアーティストでいいやってなる部分がまだあるんじゃないかな、とかね。でも、『GQuuuuuuX』の制作陣の方々は、そういう部分がすごくフラットなんだなっていうことを今回のタイアップを通して知ることができました。それがすごく嬉しかったです。私自身、「もうどうなってもいいや」に関してはエンディングとしてピッタリだなって強く思っていたところがあったんですよ。アニメの最後にこれが流れてきたら絶対かっこいいよなっていう自信があったというか。そういう私のイメージと先方のイメージがちゃんと合致してたんだなということがわかったので、すごくありがたかったですね。
ーー「夜に咲く」に関しては、制作の段階でどんな手ごたえを感じていましたか?
星街:スタッフさんとも話していたんですけど、「夜に咲く」は今までの「ガンダム」のイメージを持った楽曲だなっていうイメージはありましたね。実は、最初の段階で「もうどうなってもいいや」と一緒に「夜に咲く」も先方に提出していたんですよ。だから、どっちが劇場先行版の挿入歌になってもいいなっていう気持ちが自分の中にあって。で、結果的に後から「『夜に咲く』はTVアニメの挿入歌として使用することになりました」という連絡を受けたんですよね。
ーーへぇ! そういう流れだったんですか。
星街:はい。だから、その連絡をいただいてから急遽、フルでレコーディングした感じだったんです。ありがたいご縁で「夜に咲く」もTVアニメ版の挿入歌として輝きを放ってくれたのが嬉しかったです。
ーー星街すいせいというアーティストの認知度をさらに押し上げることとなった『GQuuuuuuX』とのタイアップの反響はどう受け止めていますか?
星街:反響は本当に大きかったと私自身も感じています。『ガンダム』が好きな方たちはフラットな目線で楽曲を聴いてくれましたし、純粋に『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』という作品とのマッチングという部分で評価してくださっていたんですよ。しかも「もうどうなってもいいや」という言葉がパワーワードすぎたみたいで、けっこうネタにしてくれていたんですよね。作中でものすごい展開が繰り広げられたときとかに、「いや“もうどうなってもいいや”じゃねえよ!」みたいな感じで、曲のフレーズで遊んでくれていて(笑)。そういう部分はアニメのタイアップでしか感じられない楽しさだなってすごく感じました。
■KizunaAIや剣持刀也とのコラボーー「事務所間の壁みたいなものは壊していきたい」
ーーその後、8月には「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2025」の選出もありましたね。日本における「30歳未満の特筆すべき30人」に選ばれ、「Forbes JAPAN」の表紙も飾られました。
星街:ビックリしましたよねえ。
ーーそこもあまり実感がなかったですか(笑)。
星街:そうなんですよ(笑)! そもそも私は雑誌系に明るくないので、選出のご連絡をいただいたときも、「え、はあ……すごーい!」みたいな。で、その情報が世に出ると、いろんな方から大反響をいただいて、そこでようやく実感できた感じなんですよね。とんでもなくありがたい機会をいただけたんだなって。頑張ってきてよかったなと、すごく思いました。これもまた一つの大きな勲章ですね。
ーー星街さんの2025年は、武道館アーティストやForbes JAPAN 30 UNDER 30選出アーティストといった新たな勲章という武器を手に入れた1年でもあったわけですね。
星街:そうですね。今後もそういう武器は増やしていきたいと思います。ただ、今後はその武器を持って戦うというよりは、もっと穏やかにアプローチできたらいいなっていう思いがあるんですよね。
ーー穏やかに?
星街:振り返れば2ndアルバム(『Specter』)、3rdアルバム(『新星目録』)と、自分としてはけっこう戦ってきた印象があるんですよ。特に3rdはコンセプトが“革命”でしたし。でも、ここからは戦わない戦い方というか。そういう表現を探ってみたいんです。もちろん攻撃的な楽曲を作ることは今後もあるとは思うんですけど、同時に聴き手の方に寄り添うような楽曲も作っていけたらいいなって、今はすごく思っているんですよね。
ーーその裏には、未踏の地を切り拓くように攻撃し続けてきたフェーズを超えた感覚があるんですかね?
星街:うん、そういう部分もありますね。がむしゃらに、どうにかしていろんな人に知ってもらわないといけないっていう部分をある種、超えたというか。それを踏まえ、ここからはどう受け入れてもらえるかが重要な気がしているんです。いろんな武器を振りかざして「どうだ! どうだ!」というよりは、もっと共存していきたい気持ちが強い。みんなと一緒に、どう手を取り合っていくのか。そういったアプローチをかけていきたいなって思ってますね。
ーー安定を求めることなく、常に新しいストーリーを紡ごうとしていくのが実に星街さんらしいところですよね。
星街:確かに。私の人生って、一本の映画が作れそうな面白いストーリーになってるなっていつも思います。やっぱりストーリーは劇的な方が楽しいですもんね。常に刺激が欲しいです(笑)。いつでも新しくありたい、新しくなりたい気持ちは強い方だと思います。
ーープライベートでもそういうタイプですか?
星街:えー、プライベートは安定してたいですけどね、逆に(笑)。でも、普段の生活の中で知らない道を通ってみたりとか、そういう刺激を求めるタイプではあるかも。同じ道ばかり通ってると飽きちゃいますもんね。絶叫系に乗りまくったり、激辛食べたりするのも刺激が欲しいからなのかも(笑)。
ーー楽曲のリリースペースが緩やかだった昨年ですが、その中で2024年リリースの「ビビデバ」が1億5000万回再生を突破しましたね。VTuberのオリジナル楽曲では1位の記録だということです。
星街:嬉しいですよね。でも、だからこそ「ビビデバ」を超える、「ビビデバ」とはまた違った立ち位置の楽曲を作り出せたらいいなってすごく思いますね。
ーー星街さんはキャリアの中でご自身の楽曲をライバルとしながら、次への一歩を刻んできた印象がありますよね。以前は「Stellar Stellar」を超える楽曲を作りたいとおっしゃってましたし。
星街:そうなんですよ。以前のインタビューで「“『Stellar Stellar』芸人”から抜け出したい」って言ってたのを思い出したんですけど、そこを抜け出せた実感はすごくあるんです。でも今度は“「ビビデバ」芸人”になったなっていう(笑)。もちろん、そういう状況はありがたいことではあるんですけど、今後も過去の自分をどんどん超えていきたい気持ちが強いんですよね。
ーー「もうどうなってもいいや」が新たな代表曲になった感じもしますけどね。
星街:うん、私もそう思います。今は“「もうどうなってもいいや」芸人”かもしれない(笑)。
ーー冒頭でお話が出ましたが、9月にはKizunaAIさんのライブ『KizunaAI Comeback Concert“Homecoming”』にゲストとして出演されましたね。いかがでしたか?
星街:AIちゃんはもう私自身はもちろん、すべてのVTuberにとっての親みたいな存在、始祖ですからね。やっぱりカリスマオーラがとんでもなかったですし、あらためてリスペクトの気持ちが強くなりました。ただ、同時にすごく身近な存在でもあるんだなっていうのを感じたライブでもあったんですよね。AIちゃん自身も、いわゆる神みたいな立ち位置ではなく、みんなと一緒に楽しく過ごしたい人なんだなってすごく感じたというか。だからこそ私と肩を並べて歌うことに、きっと大きな意味があったんだと思うんです。あのライブを経て、私自身もAIちゃんをより身近な存在として自分の中に落とし込むことができたので、本当にいいきっかけだったと思います。
ーーあの日のライブはKizunaさんのやってきたことが連綿と受け継がれ、今のVTuberシーンがあるという系譜みたいなものを感じるものだったとも思います。Kizunaさんがいたから今の星街さんがいるように、星街さんも次世代に何かを受け継いでいきたいという気持ちは強いですか?
星街:その思いはめっちゃありますね。私はVTuberをカルチャーにしたいって思ってるんですけど、その在り方には今後、いろんなルートがあるはずなんですよ。アニメカルチャーの一種みたいになるルートもあるだろうし、アーティストの新しい形として根付いていく可能性もある。本当にいろんなルートがある中、私としては、誰かが自分の表現したいものを持っているときに、その選択肢の一つとしてVがあるといいなってすごく思うんです。そういう立ち位置、そういう界隈にしていくための活動を今後も続けていきたいんですよね。
ーーそういった思いを、例えばホロライブの後輩たちにもしっかり届けようともしている?
星街:はい。私の意志はちゃんと繋いでいきたいと思ってて。今、世の中にはたくさんのバーチャルアーティストがいますけど、私がその代表的な存在として扱われることも多くなってきたからこそ、私がどう動いていくかがすごく大事だと思うんです。私の活動次第によって、次の世代に繋げられるものが増えることもあれば、減ることもあるわけなので。私はVTuberという存在をここで途絶えさせたくはないので、長く愛されるための土台はしっかり作りたいんですよね。
ーーそれってホロライブ、引いてはVTuberシーンを背負っている感覚があるということですよね。
星街:勝手にですけどね。勝手に背負っちゃってるだけなんですけど(笑)。
ーーその重さってどうですか?
星街:いや、そこも勝手に背負ってるだけなので、別に私の好き勝手やればいいと思っている感じなんですよ(笑)。だからそこまで重さを感じることなく、楽しみながらできてはいますけどね。
ーーその流れで言うと、昨年はにじさんじの剣持刀也さんと対談をされたりとか、ホロライブ以外のVTuberとのかかわりも積極的にされていましたよね。それもシーンを途絶えさせないための思いによるところなんでしょうか?
星街:そうですね。シーンとして盛り上げたいですし、事務所間の壁みたいなものは壊していきたい。同業という意味ではみんなライバルではあるけど、でも今はこのシーンを盛り上げていく大切な仲間でもあるから、一緒におもしろいことをやっていけたらいいなっていう気持ちはずっとあります。そういう思いを持っている人は、めっちゃ多いと思いますよ。ほぼ全員がそうだと思う。
ーーその中で星街さんくらいの人が率先して動くことに意味があるんでしょうね。
星街:そうそう。他の事務所さんとのコラボに対してハードルが高いと感じる子もいるし、なかなか一歩を踏み出しづらかったりもすると思うんですよ。だから、「そういう道もあるんだよ」っていうところを私が率先して切り開いていければなって。選択肢として目の前にある状況にしてあげたいなとは思っています。まあ、それも勝手にね(笑)。
ーーでも下の世代の子たちからしたら、そうとう頼もしいと思いますけどね。
星街:そうだといいんだけどな。最近、後輩とかが心配すぎて。いつも「大丈夫?」「悩んでることない?」って聞いちゃうんですよね。「私、お局みたいになってないか⁉」って思っちゃったりもするんですけど(笑)、ほんとに心配だからつい聞いちゃう。
ーーその心配っていうのはどういう面でなんですか?
星街:例えば、デビューしたての新人の子たちで言えば、ある意味、ホロライブとしての土台がすでにある状態のところに飛び込んでいくわけなので、そこの大変さがあると思うんですよね。すでに出来上がってるものを壊さないように、慎重に動かなきゃっていう思いから、けっこう縮こまっちゃいがちかなって。そこで本当にやりたいことを押し込めちゃったらもったいないじゃないですか。もちろん実際にそう言われたわけではないんですけど、みんなには自分の思うように、好きなことを表現してほしいと思うので、つい心配してしまうんです。やりたいことがあるのだったら、思う存分、挑戦して欲しいですからね。そういうことは常に伝えてます。
ーーシーンが大きくなってきたからこそ、心無い声が飛び交うことも少なくない状況ですしね。
星街:そうなんですよね。そういう声を聞いたときに委縮しちゃうのはすごくもったいないですからね。だから、何かあれば何でも話は聞くので、みんなには好きなことを続けて欲しいなってすごく思います。物事には時間が解決する部分もたくさんあると思うんですよ。だから、このシーンに身を置いている私たちが折れずに継続していくことが何より大事なことかなって今はすごく思います。「とにかく長く続けることが大事だよ」って、後輩にも言ってますね。きっと今が一番ネガティブな意見が多い時期だと思うんです。でも、ここから絶対に時代は変わっていくはず。かつてアニメオタクが虐げられてた時代もあったわけじゃないですか。
ーー確かに。今やアニメはメインストリームのカルチャーと言える時代ですからね。
星街:そうやって、いろんな問題もちょっとずつ時間が解決していくんだろうなって思ってるので、私たちが今、折れないことが本当に大事だなと思ってます。
■2026年は「自分の殻をもっともっと破っていける1年に」
ーーでは、ちょっと話を変えて。星街さんが昨年を通して刺激を受けた人物、楽曲、ライブなどがあればお聞きしたいんですけど。
星街:けっこうありますよ。それこそHANAさんとか。「No No Girls」のオーディションは今の時代にすごく合っているなと思って、すごくおもしろかったし、たくさんの刺激も受けましたね。HANAさんの楽曲は全部メッセージ性が強くて、本当に素晴らしい。最近はほんとによく聴いています。あとは対バンさせていただいたときに、サンボマスターさんのライブを生で拝見させてもらえたのも大きかったです。本当に勉強になりました。
ーーどんな部分で学びを得ましたか?
星街:私自身、ライブというものは一個の作品として捉えてる部分が大きいんですよ。1本の映画を観終わったような気持ちで帰れるライブを作りたいとずっと思ってきた。その気持ちは今もあまり変わらないんですけど、その一方でその場、その時に音楽を思いきり楽しむというライブの良さをサンボマスターさんに教えていただけた気がしていて。いつもの私のライブとは違った楽しみ方を、サンボさんと一緒にできた気持ちになったんですよね。例えば歌詞を間違えちゃったり、音が外れちゃったりしても、音楽として楽しければいいじゃんっていう。そんな感覚を味わわせてもらえたことが、自分にとっては本当に勉強になったんです。
ーー今後、星街さんもそういったライブを実現してもいいわけですもんね。
星街:うん。私もすごく思いました。ライブハウスでやるのも楽しいなって思いましたし、対バンもすごくいいものだなって。私のファンとサンボさんのファンが同じ会場でごった混ぜになってるのも感動的でしたしね。お互いのファンが自分たちの好きなものを布教し合って、一緒に盛り上がってる空間が本当に素敵だったので、そういう場所を自分も作れたらいいなってすごく思いました。
ーー本当に大充実な2025年を振り返ってもらいましたが、星街さんの次の動きはすでに発表されています。まずはTVアニメ『真夜中ハートチューン』のオープニングテーマ「月に向かって撃て」が1月28日にリリースされます。
星街:はい。今回のお話をいただいたとき、恋愛系の作品だということを伺ってちょっと悩んだんですよ。なにせ私は恋愛系の歌を歌ったことがほぼないので(笑)。ただ、せっかくのアニメタイアップだし、キャッチーでみんなが聴きやすい曲がいいんじゃないかなっていう指針はあったので、じゃあそういう曲だったらやっぱりナナホシ(管弦楽団)さんだよねっていうことになったんですよね。
ーーナナホシさんにオーダーする際、星街さんのイメージを伝えたりもしたんですか?
星街:ナナホシ節を全て出して欲しいというお願いはしました。ナナホシさんって(宝鐘)マリンの「美少女無罪♡パイレーツ」みたいなカワイイ系もすごくお上手なんですけど、私としてはギターがジャンジャカ鳴ってるロックっぽい曲もすごく好きで。以前、カバーさせてもらった「シャンパーニュ・デイ」や「クリサリス」のようなテイストを今回は存分に出しまくって欲しいというお願いをしたんですよね。その結果、私が求めたナナホシ節をしっかり感じさせつつ、ラブコメ作品にも似合い、さらにいろんなシーンで頑張っている人の背中を押すような楽曲を作ってくださって。ほんとに天才なんだなって、あらためて思いましたね。私自身、歌っていてすごく楽しい曲になったので、みんなにもどんどんリピートして聴いて欲しいなって思います。
ーーこれをきっかけに星街さんの歌うラブソングがどんどん出てくるのにも期待したいところですね。
星街:実績ができたので、そこの制限を解除したいですよね。今までもラブソングがまったくなかったわけじゃないんだけど、なにせ自分がラブに関して疎いもので(笑)。ただ、HANAさんの「Blue Jeans」とか聴いてると、「こういう曲、歌えたらいいなあ」ってすごく思うので、今後は挑戦していけたらいいなとは思ってます。
ーーそして、2月21日には日本武道館公演の再演ライブ『SuperNova:REBOOT』がKアリーナ横浜で開催されます。そこにはどんな意図が込められているんでしょう?
星街:日本武道館は歴史的な建造物でもあるので、演出的に限られる部分が実はあったんですよ。だからこそ意味のある会場だったと思うんですけど、そこから約1年経った今、その制限を取っ払うことでできることを増やし、あのときの情景をパワーアップしてみんなと共有したいなと思ったんです。
ーーなるほど。星街さん自身のパフォーマンス力も、この1年で大きく成長しているはずですしね。
星街:はい。サンボさんとの対バンやAIちゃんとの共演、『Coca-Cola X Fes 2025』への出演などを通して本当にいろんな学びがあったので、自分のパフォーマンス力を上げられた実感がすごくあるんですよ。なので、この1年で得たものを全部乗っけて、よりレベルアップしたライブをお見せできればなと思っています。私が感じている成長がみんなにも伝わるかどうかは当日の私次第なので、とにかく頑張ります。当日の私、頑張れ(笑)!
ーー年始から勢いよく動き始める星街さんですが、2026年はどんな1年にしたいですか?
星街:2025年を通して明確になった次の一歩を、しっかりと形としてみなさんに提示できたらいいなってすごく思います。10周年まであと2年とちょっとなので、そこに向けてブーストをかけていけるように。いろんなことに挑戦しながら、自分の殻をもっともっと破っていける1年にできたらいいなと思っております。いろいろ企んでいることがあるので、それらが全部上手くいったらいいな。
ーーでは最後に毎年恒例となっている“星街すいせいによる日本の攻略度”をお聞きします。2023年が20%、2024年は39%まで上がってきてます。2025年はどうでしたか?
星街:はい、いきます。ドゥルルルルルルルルルル、ジャン! 42%! ついに40の壁を超えましたねー。
ーー2023年から2024年に比べると、上がり幅は小さくなっているようですが。
星街:うん。思うんですけど、VTuberのカルチャーって、ここまですごく急成長してきたじゃないですか。その上で、今はさらなる成長を探している状況というか。ここからガッと60%、70%になるためのきっかけを業界全体で探ってる時期なのかなって。だから上がり幅は小さくなった。でも、みんなの頑張りがあったから3%でもちゃんと上がったことに意味があるなって。個人的にはそんな風に思っていますね。今年は50%超えたいですけどねー(笑)。
(文=もりひでゆき)

