波留

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 辛口コラムニスト・林操氏による年末恒例、今年のドラマ・ベスト&ワースト。いつにもまして、今年は長い! いきなり発表されたベスト3の顔ぶれは?……はたしてどうなる!?【前中後編の前編】

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【写真を見る】2025年ベストドラマ、ワーストドラマは? 辛口コラムニストが選出

アナウンサー:民放の連続ドラマ年間ベスト&ワースト2025年版、今年も発表の時季となりました。非国民生活センターTV主席研究員の林操さんとお送りします。

林操:はい、ではさっそく始めましょうか。2025年に放送された民放プライム帯(19〜23時)の連続ドラマ、ベスト3から一気に発表します!

アナ:ちょと、ちょっと待ってください林さん! 例年の長い前振りを全部抜きにしていきなりランキング発表なんて、まさか……

林:大丈夫、大丈夫。ちゃんと連ドラ・ベスト3、選んできたから。さっそく発表しちゃうよ!

▼第3位――「熱中時代・刑事編」【BS松竹東急(現J:COM BS)/土曜18時(2話ずつ放送)】
▼第2位――「犬神家の一族」【BS松竹東急(現J:COM BS)/月曜19時】
▼第1位――「キイハンター」【J:COM BS/月曜〜金曜22時】

……以上!

アナ:なんですか一体。古い名作ばっかりじゃないですか。どこが2025年の連ドラ・ベスト3……

林:いや、確かに「刑事編」が1979年、「犬神家の一族」が1977年、「キイハンター」が1968〜1973年の作品だけれど、どれもこれも2025年に放送されたよ、BSで。

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アナ:そのとおりではありますが、再放送ですよ。……あ、ということは……

新作がつまらない

林:そうそう、「今年は旧作をよく見ました。それは新作がつまらないからです」って話!

アナ:やっぱり。

林:いやよかったなぁ、水谷豊もミッキー・マッケンジーも、古谷一行も京マチ子も、丹波哲郎も野際陽子も。

アナ:どの方も思い出に残る名演をされていた傑作揃いですし、新作がつまらないという話もわからないわけじゃありませんが、この企画では2025年のテレビドラマの新作に絞っていただかないと……

林:「熱中時代」シリーズや古谷一行の「金田一耕助」シリーズを放送していたBS松竹東急が6月で撤退して、急遽、後釜に座ったJ:COM BSが流しているのが「キイハンター」。テレビが儲からなくなってBSではチャンネルを明け渡す事業者が出てきたし、そのチャンネルの引き受け手もぎりぎりまで決まらなかった。そういうギョーカイの不景気がまたまた表面化したのが2025年のテレビで、それを象徴するイイ選択だと思うんだけどなぁ、「刑事編」とか「キイハンター」のベスト3入り。

アナ:確かに2027年に民放全局がBS4Kから撤退するという話まで浮上したりした年ですけれど、このベスト&ワーストは広くテレビ業界一般ではなく、あくまでもテレビドラマに絞っての企画ですので、これ以上、困らせないでください。

林:とりあえず了解。では、2025年の新作ドラマのランキングを発表します。今回は3位から、まずはワースト、次にベストという流れでいくからね。

アナ:おお、ワースト3位の後にベスト3位、その次がワースト2位とベスト2位……と交互にカウントダウンしていく流れですね。変則的ではありますが、よろしくお願いします。

ワースト3位

林:ではまず、2025年連ドラ・ワースト第3位は……

▼「アイシー〜瞬間記憶捜査・柊班〜」【フジテレビ系/火曜21時/1月期】
▼「スティンガース 警視庁おとり捜査検証室」【フジ系/火曜21時/7月期】
▼「新東京水上警察」【フジ系/火曜21時/10月期】
▼「DOPE 麻薬取締部特捜課」【TBS系/金曜22時/7月期】
▼「秘密〜THE TOP SECRET〜」【フジ系・関西テレビ制作/月曜22時/1月期】
▼「DOCTOR PRICE」【日本テレビ系/日曜22時30分/7月期】
▼「Dr.アシュラ」【フジ系/水曜22時/4月期】
▼「アンサンブル」【日テレ系/土曜22時/1月期】
▼「フォレスト」【テレビ朝日系・朝日放送テレビ制作/日曜22時15分/1月期】
▼「ダメマネ!〜ダメなタレント、マネジメントします〜」【日テレ系/日曜22時30分/4月期】
▼「フェイクマミー」【TBS系/金曜22時/10月期】
▼「愛の、がっこう。」【フジ系/木曜22時/7月期】
▼「人事の人見」【フジ系/火曜21時/4月期】

……です。

アナ:おお、ワースト3位に13本ですか。ワーストに多数の作品を選ぶのは例年の林さんパターンですが、今年はまた多い。

林:プライム帯の民放の連ドラは1年あたり50本くらいあるから、2025年は4本に1本を年間ワースト3位に入れちゃったことになるけれど、まあ仕方ないか。

ワーストの決め手とは

アナ:この13本がワーストに選ばれた理由については――もう飽き飽きしたと、ずっと前から林さんが公言している捜査モノ、医療モノが多かったりするので――想像がつかないと言うと嘘になりますが、念のため教えていただけますか。

林:全体について言えば、今年もこのレベルのワースト作は、ホン(脚本)・ヒト(配役)・シゴト(演出・撮影・美術その他いろいろ)というドラマの出来を左右する3要素がどれも弱い物件です。

アナ:やっぱり。林さんの言う「オンエアが始まる前からそれとわかる失敗作」ですね。タイトル、キャストやスタッフの顔ぶれ、設定などの事前情報に触れただけで、これはコケるという“絶対駄目感”が働くと……。

林:そのとおり。以上。……と、それだけじゃ身も蓋もないので、一点、特に語るとするなら、「アイシー」「スティンガース」「新東京水上警察」「秘密」についてかな。

アナ:ええと……どれも捜査モノ、警察モノですね。

林:そう。あのジャンルは、とうの昔に飽和・食傷が臨界に達していて、それは制作側だって百も承知。それで新味を出すために、一度見たものは忘れない特殊能力とか、おとり捜査とか、水上警察とか、新手の薬物とか、あれこれ何かを足してみる。でも、ベースとなる捜査モノとしての作りからしてマズいから、プラスアルファがプラスアルファにならないんだよね。レトルトの低級業務用カレーに何をトッピングしたところで、ご馳走にはならない。

アナ:なるほど。

刑事モノ・プラスアルファ

林:ああいうドラマ――未満の何か――を作っている皆様ってのは、2022年の「DCU〜手錠を持ったダイバー〜」(TBS系)の成功が忘れられないのかね。枠が日曜劇場で主演が阿部寛というホテルのカレーに、ダイバーチームによる水中捜査というシーフードを乗せた作品で、関東地区の平均世帯視聴率が15%近く(ビデオリサーチ調べ)というヒットになったから。

アナ:林さんは当時、ファンである阿部さんが主演なのに脚本が不出来すぎて、泣き笑いしながら見ていると評していました。

林:そんなのがなぜか当たっちゃったばっかりに、今なお「刑事モノ・プラスアルファ」ドラマの縮小劣化コピーが続々……

アナ:そういう流れですか。

林:フジの火曜9時枠なんて、もうプラスアルファ中毒。1月期に「アイシー」、7月期に「スティンガース」、10月期に「新東京水上警察」と連打して、全部コケたにもかかわらず――2025年で唯一、警察モノではなかった4月期の「人事の人見」もコケたからなのか――年明け2026年の1月期がまた「東京P.D. 警視庁広報2係」で、今度は広報をトッピングだって。

アナ:あ、ホントだ。

林:昔まぐれ当たりしたのと同じパターンで馬券を買い続ける、ギャンブル依存症の患者みたいだよ。フジの火曜夜9時といやぁ、かつては「古畑任三郎」や「踊る大捜査線」を輩出した“名門枠”だったのにねぇ。

アナ:考えてみると、林さんが指摘するフジのプラスアルファ中毒のおおもとは「古畑〜」や「踊る〜」なのかもしれませんよ……。

林:あ! そうだね、どっちも警察モノ+コメディというプラスアルファ型だ。これは発見だけれど、同類だと気づいたうえで「古畑〜」「踊る〜」と「アイシー」「スティンガース」あたりとを比べると、もっと泣けてくる。

――中編【「辛口コラムニスト」による2025年「連ドラ」批評 主演男優賞は「松坂桃李」 栄えある主演女優賞は?】では、例年とは異なりワーストではなくベストの3位を林操氏が早くも発表!?

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999〜2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

デイリー新潮編集部