東洋経済新報社 堀越千代氏「AI時代に、メディアの『人格と情熱』を体験価値へ」
東洋経済新報社 堀越千代氏「AI時代に、メディアの『人格と情熱』を体験価値へ」
2025年のマーケティングおよびメディア業界は、急速な技術進化と市場構造の変化が重なり、これまで当たり前とされてきた前提が揺らぎ始めた1年だった。とりわけAIの進化は、ツールの域を越え、マーケティングにおける生産性と創造性の前提を書き換えつつある。加えて、検索、ソーシャル、コマース、生成AIといった接点が絡み合い、顧客体験の「入り口」そのものも分散・再編されはじめた。Digiday Japan恒例の年末年始企画「IN/OUT 2026」では、当メディアとゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブたちにアンケートを実施。2025年をどのように総括し、そして2026年に向けてどのような挑戦とビジョンを描いているのか。その声を紹介する。東洋経済新報社で、執行役員 東洋経済オンライン事業プロデューサーを務める堀越千代氏の回答は以下のとおりだ。◆ ◆ ◆
――2025年のもっとも大きなトピック・成果は何ですか。
ウェブメディアを取り巻く環境が大きく変わった2025年、「東洋経済オンライン」にとっては、荒波の中で羅針盤を再設定し、船を作り替えるための忍耐と準備の年となりました。目先の数字よりも、事業の再定義、技術的な負債の解消やブランド構築といったことに優先的に取り組み、将来に向けた強固な基盤構築に相当な時間を費やしました。年後半にはGoogleによるAIモードやAI Overviewの導入によって、これまでじわじわと忍び寄ってきていた脅威がついに顕在化した感がありましたが、なんとか踏み堪え、事業としては底堅さを維持しています。一方で、自分たちの強みを動画という未開のフォーマットに昇華させることにも果敢に挑戦してきました。YouTubeもまた激戦市場ではありますが、新たなユーザー層と接点を持つことができた点は大きな収穫です。――2026年に向けて見えてきた課題は何ですか。
AIが事実を効率的に処理するからこそ、メディアや記者独自の視点や情熱が宿るコンテキストの価値がより高まっていくのではないでしょうか。不特定多数に向けた拡散を目指すのではなく、「東洋経済オンラインだから読みたい/観たい/参加したい」という「思い」を持ったロイヤルユーザーをどれだけ引き込めるか。そして、その熱量の高さをビジネス価値に変えていくことが、私たちの生存戦略になると思っています。――2026年にチャレンジしたいことを教えてください。
2026年は、これまで水面下で準備してきた戦略を実装・実行する年です。ユーザーにとって「東洋経済オンライン」が、単なる情報を消費する場ではなく、身近な「知のパートナー」として認識してもらえるよう、サイトのUI/UXから社内の業務フローに至るまで転換を図りたいと考えています。私たちが提供できる価値は、単なる情報だけではありません。その事象をどう捉えるかという視点や姿勢、なぜ今それを報じるのかという文脈、そしてメディアとしての人格と情熱こそが大きな価値です。これらのすべてを体験価値として組み込むには、私たち1人ひとりの仕事のやり方もアップデートしていく必要があるでしょう。ユーザーとの間に深い信頼関係を築くこと。その強固なエンゲージメントこそが、結果としてビジネスにおける高付加価値化をもたらし、持続的な成長につながっていくはずです。
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