【阪神JF】スターアニスが2歳女王の座を射止める!混戦ムードを変える甘くスパイシーな走り

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喜ぶ松山弘平騎手 阪神JFをスターアニスで勝利(c)SANKEI

「どの馬もよく見える」――パドックを見ていると、そんな感想を抱くことがあるだろう。特に今年の阪神JFのように抜けた存在がいないレースでは。

28年ぶりとなる重賞勝ち馬がゼロというメンバー構成。それどころかオープンクラスで勝った馬も1頭だけという文字通りの混戦模様。それだけにファンも何をよりどころにして予想を組み立てるかで迷ったはず。

1番人気のアランカールはともかく、馬体重発表からパドックに入るところでマイナス16キロと発表されたアルバンヌが突然人気を下げたかと思えば、抽選を突破してきたギャラボーグの単勝人気が上がるなど、単勝オッズも直前まで変動が激しかった。

その中で突如、2番人気に推し上げられたのがスターアニスだった。

スプリント重賞2勝を挙げたエピセアロームを母に持ち、自身もデビュー3戦目の中京2歳Sで2着に。

それ以来のレースとして駒を進めたのがこの阪神JF。ちなみに母も14年前、このレースで2番人気に支持されたが外目の枠からのスタートで位置を取りに行けなかったのが仇になったか、8着に敗れている。

既に重賞で連対しているというのはこのメンバーの中では実績上位。ただ、マイルは今回が初めて。

短距離で活躍した母のようにスピードを生かす馬のため、距離が延びたらどうかと思われたためか前日から単勝オッズ6~8倍の間をウロウロとしていたスターアニスだったが、パドックを終えたところで突如として単勝5倍ちょうどの2番人気に。くしくも母と同じ人気でこの大一番を迎えることとなった。

スタート直後、パドック前までの"元・2番人気馬"アルバンヌが出遅れたことでスタンドがざわつくと、今度は1番人気馬アランカールが最後方に下げるという大胆な戦法を取った。

これまで少頭数のレースしか経験していないため、「できるなら馬込みに入れたくない」と語っていた北村友一の考えがこうした騎乗に現れた。

有力馬たちが後続に付けていく中、スターアニスはというと五分のスタートから馬群のちょうど真ん中、8~9頭目という位置に。

400m、600mの1ハロンごとのラップタイムはそれぞれ10秒台という速い流れでレースが進んでいたことを踏まえて脚を溜めることに注力した。

赤松賞を制してここを迎えたヒズマスターピースが逃げ、それをフロムレイブン、ローズカリスが追いかけるという展開となったため、800mの通過タイムは45秒3。

ここから先行馬たちも息を入れ出してペースが落ちていったが、これに乗じて動いていったのが最後方にいた1番人気のアランカールだった。

それまでは離れた最後方を追走していた彼女が800mを過ぎたころから一気に押し上げてアルバンヌを交わし、馬群の真ん中あたりにいたスターアニスのところまで迫ってきた。

馬群の大外を回り、すでにエンジンに火は灯している状態。野路菊Sのように力でねじ伏せる走りを見せるかとも思われた。

そうして迎えた最後の直線は、近年稀に見る大混戦となった。

逃げていたヒズマスターピースとフロムレイブンがもうひと踏ん張りと粘る中、内にはマーゴットラヴミー、そとからはローズカリスが並びかける。

4頭が横並びにになったそのすぐ後ろをタイセイボーグやギャラボーグが追いかけ、その後ろの大外にはアランカールが猛然とスパートを掛けていた。

残り300m、横並びだった先頭集団を切り裂いたのが外にいたタイセイボーグと内から馬群を縫うように上がってきたギャラボーグ。

抽選を潜り抜けてきた強運の持ち主とメンバー唯一となる重賞での2度の馬券圏内入りを果たした実績馬が競り合うかと思われたが、2頭が並んだその瞬間、飛び込んできた馬がいた。


スターアニスが2歳女王の座に輝く(c)SANKEI

それがスターアニスだった。

残り200mを過ぎた地点でタイセイボーグの外から伸びてきたスターアニスは、鞍上の松山弘平の右鞭に応えるように伸びて先頭に立つと追いすがるギャラボーグとタイセイボーグとの競り合いに。

だが、それまで後方で脚を溜めていた分、勢いに勝るスターアニスが抜け出してその差を広げていく。

内を突いたギャラボーグがもうひと伸びを見せ、タイセイボーグも最後まで踏ん張るが、ゴールまで残り50mのところで勝負あり。

松山の渾身の手綱さばきでスピードを上げたスターアニスがギャラボーグに1馬身1/4ほどの差を付けたところがゴール。母譲りのスピードで鮮やかなまでに駆け抜け、2歳女王の座を射止めてみせた。

「跳びが大きな馬なので、雨が降らなければいいと思っていましたが、運も味方してくれた」と、レース後のインタビューで松山は語った。

確かにこの日の阪神は雨の予報だったが、蓋を開けてみれば快晴の空模様。この馬のスピードを生かすには最高のコンディションとなっていた。

戦前の混戦模様という下馬評に甘くてスパイシーな香りづけをしたかのような軽快な走りで女王の座を射止めたスターアニス。

西日に輝くその栗毛の馬体が来年の春、桜が咲く仁川のターフで躍動する姿を見るのが今から待ち遠しい。


■文/福嶌弘

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