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自身が壮絶な更年期症状に悩んだ経験から、日本における「女性外来」の発展に尽力し、81歳を過ぎた現在も現役の医師として精力的に診療に取り組んでいる天野惠子さん。今回は、天野先生が健康のために実践している食事法や、中高年が健康を保つためのコツについてお話を伺いました。

※ 記事の初出は2024年12月。年齢を含め内容は執筆時の状況です。

自身の経験からたどり着いた「体を温めること」の大切さ

――天野先生は、40代から50代にかけて壮絶な更年期を経験されたと伺いました。倦怠感、冷え、関節の痛み、重度の疲労感など、同じような症状に悩まれている方も多いかと思いますが、症状を和らげるためにどのような対策を取られたのでしょうか?

天野惠子先生(以下、天野):私は医者ですから、検査や治療はなんでもやりました。血液やCT検査も、もちろん受けて調べましたけれど、全部正常の範囲。そこで私が下した結論は、「脳の“認知”の問題」なんだということ。

それをよくするためにいろいろ試しましたが、ひとつだけ有効だったのが「お風呂」です。お風呂に入ると、すべてのイヤな症状がとれました。体を温めるという治療法は改めてすごいと実感しましたね。

免疫力が活発に働き、心身ともに健康であるための体温は、36.5℃以上とされています。平熱がこの基準を下回ると、さまざまな病気を引き起こすおそれも。だから生活習慣のなかで体を冷やさないように意識することが大切です。

――「温活」が重要になってくるのですね。ポイントや取り入れるコツを教えてください。

天野:温めるということが体を活性化してくれる。ポイントは、中程度の温度でじんわりと体を温めるよう心がけること。とくに高齢者は、食欲がなくなったときに、お風呂に入るのがいいですね。単純と言えば単純なのだけど、人間ってそういうもの。

私は朝晩2回必ず15分湯船につかります。朝のお風呂がとくに大切で、しっかり体を温める。夜はおもに1日の汚れを落とすためのものです。病院では低温の乾式サウナ療法を取り入れています。血流アップ、血管機能改善効果が期待できますよ。

中高年が健康のために取り入れたいこと

――ほかに、中高年が健康を保つうえで、取り入れた方がいいことはありますか?

天野:「筋トレ」はおすすめですね。筋肉は嘘つかないですよ。どうしても年齢と共に筋肉は落ちてきてしまいますから、もう40歳くらいからは「筋トレ」はやった方がいい! 私は75歳からパーソナルトレーナーによる指導を週に2回90分、定期的にお願いして習慣づけています。

ただ、なかなか自主的に行うのは難しいですから、最近街にたくさんできているワンコインのジムや女性専用の運動施設などを利用するのもいいと思います。エレベーターなどはなるべく使わずに階段を上りましょう。ちなみに、散歩は有酸素運動ですから、それだけでは筋トレにはなりません。

6年間毎日続けている、最強の「野菜スープ」

――食事の面で、続けられていることはありますか?

天野:私の女性外来では、更年期女性に多い微小血管狭心症や高血圧の方が多いのですが、これらは、エストロゲンが枯渇することが原因。それを知っていれば、急に血圧が上がっても「エストロゲンがなくなったせいなんだ」とわかります。

では、どうするかというと、「野菜スープ」がおすすめです。私も6年続けていますよ。この野菜スープは、「減塩」になるんですね。味覚が変わります。高血圧学会も、「1に減塩、2に減塩、3に減塩」と言っています。欧米人は1日5gくらいしか塩を取らないのに対して日本人は10gもとっている。数値を見ても、塩分を控える必要がありますよね。

私が続けている「野菜スープ」は、刻んだ野菜をお鍋に入れて、沸騰したら弱火でコトコト30分煮込むだけ。調味料で味つけはせずに、野菜の甘味とうま味だけ。一度にたくさんつくって冷蔵庫で保存し、2〜3日で飲みきるようにしています。

これならとくに手間もかからないので、食事に簡単に取り入れられますよね。この味に慣れると自然に減塩ができるようになる。どこかに不調がある方は、まずは3か月、野菜スープを続けてみてください。

「老い」は仕方がない。大切なのは自分のやりたいことをやりきること

――60代、70代以降になると「老い」の問題も出てくると思いますが、楽しく元気に暮らすコツはありますか?

天野:私は59歳のときにサーっと霧が晴れたように更年期を抜けて、そこからハイスピードで活動しだしました。だって、そうはいっても80年か90年しかない人生でしょ。66歳で一線を引退したときに私が思ったのは、「この地球上で見ていないところがいっぱいある!」ということ。

だからとにかく海外旅行に行こうと思って、お正月、5月の連休、夏のお盆に行き始めました。それは楽しかったです。結局のところ、旅行するためのお金を稼ぐために仕事をしているという面もなきにしもあらず。

ただ、70歳、80歳と体力は絶対に落ちます。それから頭の記憶力も絶対に落ちる。視力も聴力も落ちる。いわゆる体力関係のものはどんどん落ちていく。そうなると、自分自身を楽しいなと思わせるのは、自分のやりたいことをやっているときだけです。

――天野先生は「疲れた」と感じることはあるのでしょうか?

天野:私も75歳くらいから、疲れたな、と思うことは増えました。ところが、仕事などで「そういえばあれを調べとかなきゃ」となると、頭のスイッチがピッと入ります。だから、それがお金になるかならないかは関係なく、ボランティアでニットを手づくりするとかアート教室をやるとか、なんでもいいからやりたいことを見つけることは大切だと思います。

「日本一のお医者さん」になるために走り続ける

――エネルギーにあふれる天野先生ですが、これからの夢はあるのでしょうか?

天野:「女性の健康総合センター」の開所式が24年10月1日にありました。このセンターは、女性の健康や疾患について多面的・包括的な分析を加え、性差医学・医療を推進するために設立されました。センター長の小宮ひろみ氏のスライドを見ながら、「これはスタートだ、これを形にするまでは私の旅は終わらない」と感じましたね。

子どもの頃から私の夢は「日本一のお医者さんになること」。これを達成して、だれもやらなかったことを成し遂げたとき、初めてその夢が叶うのだと思います。